徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『雪月花黙示録』(角川文庫)

2017年11月08日 | 書評ー小説:作者ア行

『雪月花黙示録』はなんというか、学園ものにしてもえらくファンタジーゲーム臭の強いライトノベルのような感じです。恩田作品としてはかなり異質な部類に入るような気がします。レビューコメントをいくつか見ると、この作品に失望したファンもいるようです。

私もこれを「恩田作品」として読むと違和感を感じずにはいられませんが、あまたあるライトノベルの一つだと思えば全然違和感がありません。

物語の舞台は未来の帝国主義のエリアと「ミヤコ」と呼ばれる復古主義的エリアに分裂した日本で、分裂後50年を経て日本統一の動きが盛んになってきているという設定。主要人物はほとんどみな高校生なので、余計「ティーンズ向けライトノベル」という感じがします。及川道博が非常に際立った(いや、ぶっとんだ?)キャラで面白いですが、対するミヤコの要職を占める春日家の人々・萌黄・蘇芳・紫風(しふう)のキャラは見目好く文武両道という以外の個性がいささか薄っぺらな印象がぬぐえません。

話運びはかなりドタバタする感じですが、エンタメとして楽しめる範囲です。

でもしばらくしたらストーリーも設定も100%忘れるに違いない「量産品」の部類かと思います。そういう意味でちょっと残念ですね。

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2017年11月08日 | 書評ー小説:作者ア行

また夜更しをして『きのうの世界』上・下巻を一気読みしてしまいました。

この作品はミステリータッチですが、2人称「あなた」で語られるところが変わっています。下巻でこの「あなた」が誰なのかが明かされ、それ以降「あなた」で語られることはなくなります。

上司の送別会から忽然と姿を消した一人の男・市川吾郎は、一年後の寒い朝に遠く離れた塔と水路のある、小さな町の外れの「水無月橋」で死んでいました。凶器は見つからないものの「水無月殺人事件」として捜査されます。これが解くべき謎の一つ。

さらなる謎は市川吾郎の失踪の理由と死亡までの足取り。彼は測量士のまねごとをしつつ、住民もよく知らない三つある塔の由来と水路について調べていたようですが、その由来とは?

その謎めいた町で様々なパズルのピースのような小さい事件が起き、最終的にパズルが完成していくように物語が進行します。時間軸が少し前後したりしますが、入れ子構造のように複雑ではないので、視点の変化に戸惑うことはないと思います。

塔と関係する旧家・新村家とその家系の人の持つ特殊能力は、『常野』シリーズの常野一族に通ずる不思議さが漂っています。「水無月殺人事件」の謎は理論的解決がなく、不思議な解説だけが提示されるので、探偵的な話運びとオチを期待しているとがっかりするかもしれません。

最後に解き明かされる町の塔と水路の謎は非常に興味深い仕掛けで、それだけでも面白いと思います。

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2017年11月06日 | 書評ー小説:作者ア行

『上と外』の上・下巻はかなりの分量なんですが、読み出したら止まらなくなって、読み終わった時は朝の6時でした。昼間寝てばっかりだったので眠くなかったとはいえ、さすがに4時過ぎたあたりから疲労を感じてましたが。。。

『上と外』は恩田作品にしては毛色が変わっていて、ひと言でいえば冒険小説です。両親の離婚によってばらばらになった家族が年に一度集まる夏休みで、考古学者である父の滞在するG国へ中学生の練、妹の千華子、母の千鶴子が行き、取りあえず複雑な家族ドラマを展開させるのですが、マヤの遺跡を見るためにヘリコプターで遠出した矢先にクーデターに巻き込まれ、ヘリコプターを操縦していた軍人が進路を変えてしまいます。そして、何の因果か連と千華子はジャングルの中へ振り落とされてしまいます。そこからこの二人のジャングルサバイバルが始まります。

二人が無事に戻れるだろうことは予想できますが、どこまでひどい目に遭い、どのように救出されるのかは分かりませんのでハラハラドキドキしながら読めます。しかも誰も居ないと思われていたジャングルの中の神殿風の遺跡になにかあるいは誰かが居る気配がし出して、一気に緊張感が高まります。さて彼らがどんなことに巻き込まれていくのか?それは読んでからのお楽しみ

下巻では連と千華子まで離れ離れになってしまい、地震と火山の噴火も相俟っていよいよ事態は深刻になっていきます。こんなサバイバルゲームを体験すれば多感な少年少女が精神的に成長するのは当然とも言えますが、親の方も子どもたちと突然引き離されてしまうことでいろいろと反省します。特にかなり身勝手でわがままな母・千鶴子の自己分析がなかなか興味深いですね。

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2017年11月05日 | 書評ー小説:作者ア行

第20回山本周五郎賞受賞作品である『中庭の出来事』を何度も寝落ちしながら読みました。寝落ちしたのは話が退屈だったからではなく、鎮痛剤の副作用でしょう。

この話は最初普通のミステリーのプロローグのように始まり、ホテルの中庭のカフェで待ち合わせた女の一人がもう一方のやった殺人を告発し、告発された方はなぜかその場で飲んでいたワイングラスを落として亡くなってしまいます。

次の章「旅人たち1」では新宿のある地下街の噴水のあるところで就職活動中の若い女性が亡くなった事件が提示され、その目撃者たちの女性に関する証言が著しく食い違っていることに言及され、それが話の着想となった、というようにその後に延々と語られ演じられることになる「話」が暗示的に提供されます。

その話というのが最初の章で告発されている気鋭の脚本家の毒殺(謎の死)で、容疑はパーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かり、警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて。。。というように入れ子構造がどんどん入り組んできて、読者は自分が今小説の中の劇中劇のどの舞台に居るのかあるいは居ないのかよく分からないまま、虚実が入り混じりながらクライマックスに否応なく押し流されていくような錯覚に襲われるような気がするのではないでしょうか。少なくとも私はそういう印象を受けました。

劇中劇のシーンでは台本のように「女優1 どこそこに座って」とか「暗転」等の用語があるので、それと分かりますが、そうでないシーンも視点を変えて繰り返されたりするのでそれがまだ脚本家の書いている話の中のシーンなのか、話の外なのかよく分からなくなるところがこの作品の魅力なのだと思います。

女優たちの告白する生い立ちや仕事・演技に関する考え方なども興味深いです。美内すずえの漫画『ガラスの仮面』を彷彿とさせる場面もあり、少し懐かしい感じすらしました。

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2017年11月04日 | 書評ー小説:作者ア行

『象と耳鳴り』は『六番目の小夜子』に登場する関根秋(しゅう)及び『図書室の海』に登場する関根夏そして『Puzzle』に登場する関根春(しゅん)の父親・関根多佳雄を主人公としたミステリータッチの短編集です。

関根多佳雄は退職判事でミステリーファンでもあり、細切れな情報から事件を構築するのが職業柄のくせでもあり、趣味でもある人で、その父親の影響を子どもたちは色濃く受け継ぎ、長男・春は検察官となり、長女・夏は弁護士となって活躍中です。『図書室の海』の夏が高校生でしたから、『象と耳鳴り』の時間軸はその15年くらい後になるかと思います。もっとも子どもたちが登場するのは「曜変天目の夜」、「海にゐるのは人魚ではない」、「待合室の冒険」、「机上の論理」の4編で、後の8編は妻・桃代とのやり取り、元同僚とのやり取り、散歩仲間(?)とのやり取り、姪との手紙のやり取りなどあくまでも多佳雄と彼の周囲の人たちで構成されています。

退職判事という立場上、解決される事件は一つもありません。ただ過去の事件などの謎を推理してみたりして、「まさか!」という驚きの真実の可能性を見つけることもあったりするのですが、証拠もないし、本格的に調査するような権限もないのでそれらは全てそのまま放置されることになってしまい、いささか後味の悪い印象もあるのですが、それでも話は興味深くて、ちょっとぞっとするのが魅力なのかもしれません。

表題作の『象と耳鳴り』は、多佳雄が立ち寄った喫茶店で老婦人が「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」と語り始め、少女時代に英国で遭遇した、象による奇怪な殺人事件を一通り語り終えて立ち去った後に、多佳雄がその話の裏にあったと思われるものを読み解くお話です。老婦人の話の謎はそれで比較的すっきりと解けるのですが、彼女と幼馴染だという喫茶店の店主がなぜわざわざ象の置物を彼女の目につくところに置いているのかという謎が最後にころんと取り残されてる感じがします。

収録作品最後の書下ろし『魔術師』は構成が『Puzzle』に似ていて、まずは関連性の不明なピースのみが提示されるので若干混乱します。そして都市伝説を研究しているという人が登場してバラバラのピースに若干の解説を加え、多佳雄がその謎解きをする感じです。検事を辞めて実家の農業を継いだ多佳雄の元同僚が展開する「都市がある一定の大きさを超えると独自の意志を持つようになる」という珍説と絡み合って、謎解きされる都市伝説が一種異様な雰囲気に包まれて、新たな謎が顔をのぞかせたところで話が終わっているのでちょっとホラーっぽいすっきりしない印象が残ります。

まとめると、ミステリータッチであってもミステリーではないということでしょうか。独特の味わいがあって面白いと思いました。

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三月・理瀬シリーズ

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抗がん剤投与5回目(がん闘病記13)&健康ジュースいろいろ

2017年11月03日 | 健康

 

今回は祭日の関係で火曜日ではなく木曜日に抗がん剤投与を受けました。投薬プランは前回と同じ。

今回はいつもよりも吐き気が強かったように思います。吐くほどではなかったのですが、胃からのある種の突き上げを感じて非常に気分が悪い感じでした。それは抗がん剤投与の前の投薬で起こりました。Dexamethason というステロイド系抗炎症剤に続いて Zantic と Tavegil という薬品が静脈注射されるのですが、これの後にいつもより気持ちが悪くなり、ふらふらしてきました。「うーん、気持ち悪いな」と思っている間に Carboplat(=カルボプラチン)の点滴が始まり、怒涛のような眠気に襲われます。眠気はいつものことです。この点滴は30分間で終わり、二つ目の抗がん剤の Paclitaxel の点滴が始まると、これは3時間かかるので、かなりまとまって寝ることが可能です。このあたりで気持ちの悪さも大分収まり、ただただ爆睡です。トータル2時間半ほど点滴中に寝てました。

なにごともなく全部終わったのは12:45で、今までの中で一番スピーディーでした。その代わり迎えの車を外で10分以上待つ羽目になってしまいましたが。気温10度以下の外で10分待つのはかなり苦痛ですね。

帰宅後はお昼ご飯を食べて、本を読んだりネットやったりしてたのですが、午後2時過ぎに寝落ちして4時間弱寝てしまいました。このため夜は例によって普通の時間には寝られず、朝方4時ごろになってようやく寝つきました。昼頃まで通しで寝れるかと思いましたが、そうもいかず、朝8時過ぎには目がさえてしまい、午後にまた昼寝するという細切れ睡眠となってしまいました。

眠気やだるさ以外の副作用が出てくるのは明日か明後日あたりでしょうか。今回も関節痛以外の深刻な副作用が出ないことを願いたいものです。

抗がん剤投与も残すところ後1回。あと少しの辛抱です。

がん闘病記14

健康ジュースいろいろ

さて、抗がん剤治療の傍ら、10月26日に高いスロージューサーを購入して毎朝色々ジュースを作って飲んでます。ジューサーと一緒に届いたジュースレシピの中から特に免疫力増進のレシピを選んで片っ端から試してみたわけですが、これは2度と作らないと思ったレシピもいくつか…(笑)

最初に作ったのはオーソドックスにニンジンジュース。これを毎日4か月飲んで肺転移までしていたがんが治ったという報告もあります。

 

次に挑戦したのはにんじん、セロリ、レモンの組み合わせ。これはさっぱりとして飲みやすいレシピでした。

 

その次のレシピはピーマン、玉ねぎ、にんにく、パセリの組み合わせでしたが、あいにくパセリを切らしていたのでバジルで代用しました。これはにんにくの味が強烈過ぎて、お水と変わりばんこに飲むか薄めるかしないと飲めない代物でした。(''◇'')ゞ

 

次のレシピはフルーティな組み合わせで、キウイ、ぶどう、イチゴでしたが、イチゴが売ってなかったので代わりにラズベリーを使用しました。非常に美味しかったですが、300㎖のジュースの材料費は4€強と、かなりお値段の張るものに…

 

次に試したのが免疫力増進ではなく、「痩せる」レシピ。たまたま家にある材料でできるものだったのであまりもの処分を兼ねて作ってみました。西洋ネギ、キャベツ、ニンジンの組み合わせです。これは色はニンジンの色が際立ってますが、味ではネギが勝ち過ぎていて、にんにくの入ったジュース同様薄めないと飲めないような代物でした。

 

次の免疫力増進レシピは、ニンジンとカリフラファ―のジュースにクルクマのパウダーをかけたもの。これは多少くせがあるものの、そのまま飲めるジュースでした。

その次に試したのが豆腐・アボカド・豆乳のスムージー。本来はミキサーで作るのですが、現在うちのミキサーは故障中なので、スロージューサーのフードプロセッサー機能を使ってアボカドとお豆腐をまず細かくし、その後に豆乳を混ぜてみました。レシピでは豆腐400g、豆乳100㎖、アボカド1個となっていましたが、使用した豆腐が非常に硬いものだったので300gに減らして、かつ豆乳を200㎖に増やして混ぜたのですが、スムージーというよりはスプーンで食べるムース状になって今いました。味は多少退屈な感じがしないでもないものの、そこそこおいしいです。お好みでちょっと味を足したい感じですね。

抗がん剤投与の日は再びニンジン・セロリ・レモンジュースを作りました。

 

今朝は「痩せる」レシピで、赤いピーマン、玉ねぎ、ほうれん草の組み合わせ。仕上げにナツメグをおろして振りかけます。ほうれん草からでる泡と色がちょっとえぐい見た目ですが、味は普通に飲めるものです。玉ねぎの味もしますが、にんにくや西洋ネギほど自己主張しません。

がん闘病記14


唐突ながん宣告~ドイツの病院体験・がん患者のための社会保障(がん闘病記1)

化学療法の準備~ドイツの健康保険はかつら代も出す(がん闘病記2)

化学療法スタート(がん闘病記3)

抗がん剤の副作用(がん闘病記4)

え、緑茶は膀胱がんのもと?(がん闘病記5)

ドイツ:傷病手当と会社からの補助金(がん闘病記6)

抗がん剤投与2回目(がん闘病記7)

抗がん剤投与3回目(がん闘病記8)

医者が満足する患者?(がん闘病記9)

マリア・トレーベンの抗がんハーブレシピ(がん闘病記10)

抗がん剤投与4回目(がん闘病記11)

化学療法の後は放射線治療?!(がん闘病記12)

書評:Kelly A. Turner著、『9 Wege in ein krebsfreies Leben(がんが自然に治る生き方)』(Irisiana)


書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

2017年11月03日 | 書評ー小説:作者ア行

この『図書室の海』は奇妙な短編集でした。それぞれが別の作品の番外編のようで短編単独では理解しがたいものが多かったように感じます。

「春よ来い」

井上雅彦監修「異形コレクション」シリーズの一つ「時間怪談」というテーマのために書かれた作品。女子高生二人の卒業式の日が何度かループするお話で、一応単独での完結性があります。

「茶色の小瓶」

津原泰水監修「血の12幻想」のために書かれた作品。看護学校出なのに会社勤めをしている一回り下の同僚をたまたま会社の近くで起きた交通事故の際にけが人の処置を施しているところを見かけて興味を持ち、彼女について調べ始めたベテラン社員。彼女が突き止めたものは。。。 ホラータッチの短編作品で、短すぎるような気がしますが、単独でのまとまりがあります。

「イサオ・オサリヴァンを捜して」

これは「SFオンライン」のために書かれた作品で、元々は長編SF『グリーンスリーブス』の予告編だったそうです。そのせいもあって、何か大きなミッションの始まりを暗示する程度にとどまり、それ自体に完結性がありません。

「睡蓮」

この作品は「三月」シリーズの『麦の海に沈む果実』に登場する水野理世の幼年時代を描いた作品で、女装の校長との出会いも描かれています。

「ある映画の記憶」

叔父の死をきっかけになぜかある映画のシーンを思い出す主人公。「青玄記」という映画。そしてそのシーンが実は叔母の奇妙な死の記憶と繋がっていて、どんどんその記憶が鮮明によみがえっていくというストーリー。なんとなく中途半端な印象が残ります。

「ピクニックの準備」

この作品は『夜のピクニック』が開催される2・3日前の主人公たちの心境を描写した予告編です。本編を知っていないとやはり何の暗示なのかよくわからない印象を受けるかと思います。

「国境の南」

この作品はドキュメンタリーホラーのつもりで書かれたとのこと。主人公が新しくなった喫茶店に入り、昔そこにあった喫茶店で起きた事件を回想する設定。事件を起こしたウエイトレスは捕まっていないので、「次はあなたの街に来るかも」というホラー的な余韻を残して終わります。これ単独での完結性はありますが、さほど面白いとは思えませんでした。

「オデュッセイア」

旅する城塞都市ココロコを描いたファンタジー作品。都市が突然意識をもって動き出すという発想はおもしろいと思います。最後に住人がいなくなってしまい、どこへ行っても誰もいないので元の場所に戻る、というのは第三次世界大戦という核戦争のイメージかと思います。

「図書室の海」

表題作である当短編は『六番目の小夜子』の番外編で、関根秋の姉・夏が登場します。本編より何年か前のエピソードですね。

「ノスタルジア」

この作品は正直言ってお手上げでした。出だしは「懐かしい思い出」を語るということで何人かがぼつぼつとその思い出を語っていたのですが、途中で友人に会いに行く女性の長い回想が挿入され、地の話との関連性が見えなくなって迷子になってしまいました。

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三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『麦の海に沈む果実』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『黒と茶の幻想』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『黄昏の百合の骨』(講談社文庫)

関根家シリーズ

書評:恩田陸著、『Puzzle』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『六番目の小夜子』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『象と耳鳴り』(祥伝社文庫)

神原恵弥シリーズ

書評:恩田陸著、『Maze』&『クレオパトラの夢』(双葉文庫)

書評:恩田陸著、『ブラック・ベルベット』(双葉社)

連作

書評:恩田陸著、常野物語3部作『光の帝国』、『蒲公英草紙』、『エンド・ゲーム』(集英社e文庫)

書評:恩田陸著、『夜の底は柔らかな幻』上下 & 『終りなき夜に生れつく』(文春e-book)

学園もの

書評:恩田陸著、『ネバーランド』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『夜のピクニック』(新潮文庫)~第26回吉川英治文学新人賞受賞作品

書評:恩田陸著、『雪月花黙示録』(角川文庫)

劇脚本風・演劇関連

書評:恩田陸著、『チョコレートコスモス』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『中庭の出来事』(新潮文庫)~第20回山本周五郎賞受賞作品

書評:恩田陸著、『木曜組曲』(徳間文庫)

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短編集

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

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エッセイ

書評:恩田陸著、『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『小説以外』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)


書評:恩田陸著、『六番目の小夜子』(新潮文庫)

2017年11月02日 | 書評ー小説:作者ア行

漸くピケティの『21世紀の資本』の第3部を読み終えたので休憩して、この恩田陸のデビュー作『六番目の小夜子』を読んでみました。

『六番目の小夜子』は1992年7月に新潮文庫のファンタジーノベル・シリーズの一冊として発表され、その後大幅に加筆の上、1998年8月に単行本として刊行されてものです。

この前読んだ『Puzzle』(祥伝社文庫)と同じ「関根家の人々」シリーズとも言うべき作品サイクルの第一弾とのことで、関根秋(シュウ)という高校生が活躍(?)します。

この作品は学園ホラーファンタジーと言えるものだと思います。ミステリー仕立てではありますが、すっきりと解答の出る類のミステリーではなく、ホラー的余韻とでもいいましょうか、そういう「まだ終わってないよ」という暗示を残したままで話が終わります。物語の始まりと終わりに同じ描写が繰り返されているのが、その謎の余韻を強め、「繰り返される伝統」を暗示しているようです。

謎は学校のある「行事」で、「サヨコ」という役割が代々卒業式当日にひっそりと引き継がれ、それを受け取った「サヨコ」が役割を承知したという証拠に四月の始業式の朝、自分の教室に赤い花を活けて、それがその年のゲームのスタートの合図になるという。「サヨコ」のすべきことは年にただ一つで、それを誰にも自分が「サヨコ」であることを悟られることなくやり遂げれば、それがその年の「吉きしるし」であり、その年の「サヨコ」の勝ちとなるとのこと。物語は「六番目のサヨコの年」に起きた一連の出来事を語ります。

物語に登場する主人公たちはみな高校3年生の受験生。彼らが3年に進学した春に物語が始まり、夏・秋・冬と季節は巡り、また春になって卒業するまでが綴られています。友情・恋愛などの甘酸っぱい青春の要素がある一方で、生徒たちが自覚する暇もないままいやおうなく「受験」という大きな流れに巻き込まれていくやるせなさが浮き彫りにされ、その心の隙間にするりと入り込んでいく不気味な謎が微妙な均衡の不協和音を奏でながらクライマックスに向かっていくような印象を受けました。

好みにもよりけりだとは思いますが、私は最後まで夢中で一気読みしてしまいました。

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三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

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