トランプ米大統領は23日、環太平洋連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名しました。TPPは米国が批准しなければ発効せず、現状のままの協定では実現不可能となりました。「米国第一」主義に沿った2国間の貿易交渉、他国の「不公正な貿易」是正に政策の軸足を移します。
トランプ大統領は、昨年の大統領選挙時からTPPからの離脱を公約に掲げていました。23日の署名後、同大統領は「アメリカの労働者にとって大変良いことだ」と言明しました。
大統領令は「TPPから離脱し、交渉からも永久に離脱する」と明記。米国の産業振興と労働者保護につながる「あらゆる2国間交渉の追求」も命じました。これを受け、米通商代表部(USTR)は日本など他のTPP署名国に離脱を通知します。
トランプ政権はカナダ、メキシコとの間の北米自由貿易協定(NAFTA)についても、再交渉を表明。31日には両国の首脳と会談する予定です。ホワイトハウスは、今後、交渉が難航する場合、NAFTAからの撤退の可能性まで言及しています。
安倍晋三政権が強く求めてきた米国のTPP参加は、同日の大統領令によって完全に消滅した形です。しかし安倍政権が昨年、TPP協定と関連法を強行採決したことは、米国側からのいっそうの譲歩を迫られる条件をつくったことになります。農産物などの関税撤廃や食の安全、医療、雇用、政府調達、知的財産権などの非関税障壁撤廃、投資家対国家紛争解決(ISDS)条項など、TPP協定やその交渉過程で米国に譲歩した内容が日本の「国際公約」とみなされ、そこから、さらなる譲歩を迫られる危険があります。
環太平洋連携協定(TPP) 日本、米国など太平洋めぐる12カ国が署名した協定。国境を越えて利益を追求する多国籍企業のために、関税と非関税障壁を原則撤廃し、参加諸国の制度をできるだけ均一化することを目指すもの。発効条件が少なくとも、12カ国合計の国内総生産(GDP)の85%以上を占める6カ国以上の批准が必要。米国が批准しないと、他の11カ国を合計しても85%に達しないため、発効しません。