詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

しずく

2015年03月22日 | 
雨が繰り返し繰り返し叩く音
トタントタン
トタンを叩く
どこかの庇?
きっと冷たく街を沈める雨なのに
音には跳ねがついていて
くすぐっているような軽やかさをふくむ
掛布団をかぶり痛む傷口をかばって
体を丸めて横たわる背中を
優しく叩き続ける

頭を動かした拍子に
マットレスごと下へ沈み込んでいく
安楽を求める体が
柔らかさに受けとめられようと沈み
その重みを叶えようと地面が応える
絶え間ないその繰り返しで
固い砂が崩れるように落ちていく

どっしりとしたカーテンが
そっと開かれる

あの公園の木はいまごろ
指の見せ方を工夫している
といった様子の枝振りを
濡れてますます陶然として
すらりと伸ばしていることだろう

あのビルの壁は涙と泥が混じったように汚れて
陰鬱な窓たちをいくつも抱え
途方に暮れていることだろう

気まぐれな水溜りは車を誘い
勢いよく水を跳ねあげ
傘を言い訳に顔をあげない歩行者に
よお、調子はどうだい?
陽気な声を浴びせるだろう

私にいま、彼らを見に行く力があれば
彼らを覚えているということを
伝えに行くことができれば
なぜかいま
それがとても大事なことのような気がする

少しただれながら
軽々と滑っていた頃
気にもとめなかった
ひとつひとつの姿が
見えない糸で一本一本つながっていて
記憶をあちこち引っ張る
体はだめになっていくのに
感じる私がいつまでもあとに残っている
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