詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

さくらあめ

2016年04月12日 | 
桜の花びらが舞い散るのにいつも
強く心動かされたのに

今年は桜を見に行っても
ピンク色の花びらが渦を巻いても

感慨がなかった
それがなぜか考えてもみた

だけどどうやらいまのわたしには理由は
まだ見えない領域

桜の前を少し寂しげに歩く姿
それしか見えなかった
それを見ても
なにを思えばいいのかわからなかった
きっとわたしも寂しいんだろう
きっとすごく寂しいんだろう
でも、やっぱりよくわからなかった

今日は雨が降ってしまった
窓から見える黒い幹の先の
初々しい花びらが水分を含んで
はらん
はらん

はらん

ためらうように
ブランコのように
右に左に
揺れ落ちていくのが見えた

濡れたアスファルトを
無数の淡雪のドットで彩っていた

ふいにわたしにも
窓を越えて花びらが降ってきた
染まった

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2016年04月12日 | 
一生懸命願ったわけでもないのに
ふたを開けた色えんぴつの箱の中のように
あちらこちら
とりどりの花が咲いている

大抵のことは上手に願うことさえ難しいのに
季節の花束は毎年必ず届けられる
わたしが忘れてしまっていても

道の先からやってきた
ぬくんだ風に包まれると
レンズの厚みのように
あたりが二重になる
ずれた縁に手をかけると
同じ驚きが見える

この風が来た道は過去の方角
一瞬の空気の中で
わたしふわっと浮きあがり
まとっていた形容詞
剥がれ落ちていく

想像の翼の広さ分の
大きさを思い描きながら
わたしのいる場所の小ささに安らって
路地やピンク象の公園で
夕焼けチャイムまで遊んでいた頃のように

雲の厚みをすり抜けて
鈍くふくらむ陽の光を横切って
薄く淡い花びらが踊っている
うれしそうに
さみしそうに

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