詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

迷い込む

2017年09月14日 | 雑記
もちろん、アジサイはとっくに枯れていて、山のほうとか涼しいところだって、とうに咲き終わっているだろうに。

急に、見つけた。近所で。

毎日、毎朝毎晩その前を通っていて、季節を外れたその成長ぶりを目にしていたのだろうに、今日、区の健診に行こうと午後半休して帰ってくる途中、急に見つけた。急に気が付いた。もう秋なのに、アジサイが咲いている。この株の中でもこれだけが咲いている。

急に気が付くことってあるんだな。
逆に言うと、それまではいくら見ても聞いても気付かないことってあるんだな。その気付けないことの違いがそれぞれの個性をつくっているのかもしれないけれど。

自分が考えたつもりになっていたことが、別に考えなくてもいいことだったし(でもこれまでの人生の9/10くらいはそれに費やされた時間だった気がする)、そもそも私には考えなんてなかったのだ。

「どんなことがあっても、とりあえず私はこうありたいのです」という意志などなくて、ただその場その場で起こったことに反応しているだけなのだった。

ほらいまも。健診がようやく終わって、ようやく食べられる!と思って、でも時間が中途半端だから(16時)という言い訳で、おせんべとチョコパンを食べてアイスコーヒーを飲み、それでも足りないからかぼちゃの煮物とゆで卵とみかんゼリーを食べて、「はあ満足。」と思った途端に猛烈に眠くなってしまった。ピアノを弾きたかったのに……。あむぷろむぷちゅ。

と、ひらがなで書くとひどくブサかわいい。

おやすみなさい。しばらく寝ます。
なんだかとても不思議な夢が見られそう……。

上の色褪せたアジサイと違う種類に見える。実は違う株なのだろうか?
誰か病気の人を元気付けるために造花をつけていたりするのかとまじまじと見てしまった。
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夢見の間の世界

2017年09月12日 | 
互いのおやすみの袖をくぐり抜けて
眠ってしまう夜
カーテンのからくもころも
しずかにみだれていく

パラフィン
セロファン
今日一日の気持ちの彩りを
春のように乗せ
舟の波が立つ

すぐそばに眠るひとを遠ざかる
浅い余韻のさらさらと
白いフリルは長いこと岸辺に打ち寄せる

さあ思いふりきり前へ前へ
過去が紡ぎだす未来へ
昏い海原をめくりめくりゆく
さあゆめみよゆめみよ
風景の鏡に無数の感情の思い出が宿る
たましいの万華鏡へ入っていこう

灯籠のゆらめく
渡り廊下を歩いていく
歩いているのは足なのか
細長い床板がずれながら
どこまでも続いている

見知ったひとびとが
枝を越え
幻灯のように
いれかわりたちかわり
あらわれて去る

ここへは幾度も来たことがある
旅館、学校、友人の家
(地下には深いプールがある)
どこであろうとここはここで
闇と虹がトンネルの先で結ばれている

ちぐはぐな断片ばかりの出来事が
キルトのようにつながって
ひとつに染まる
切実で甘く懐かしくてかなしいグレー
映画の中の
謎めいた路地へ迷い込むヒロインの
粉々に砕けたガラスを踏むヒール
この世のものではない心地
その心地がそのまま天穹である世界

黄金色からバラ色に移り変わる空
地上のスズメが見え始め
さえずりが聞える

顔を隠している
ひじをくるりと回して
あなたが寝返りを打った
となりで起きあがるわたしの気配が
あなたの夢にどんな余波を送っただろう
それはもうはるかこの世のものではない因果
薄衣のような朝の
ひんやりした空気が部屋を滲ませている

おはよう
重力がもどってきて
ぽっかり明けた地球に
くちの形だけで放りこむことば
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ある夜、辞書のしりとり

2017年09月09日 | 雑記
買おう買おうと思っているのだけれど、どれがいいかな、と考えて買えずにいて、もう何年になるだろう。類語辞典はあるのに。国語辞典は紙の本では(とわざわざ言うのも奇妙だ)持っておらず、携帯に大辞林が入っている。

紙の辞書だったら、自分が調べようと思う言葉の前後や同じページ上に載っている他の言葉も自然と目に入ってくるから良いのだ、と聞いた。そうだろうな!と思って欲しいと思った。紙の辞書を本のように読む人もいると聞いた。それもいいな!と思って欲しいと思った。

詩を書くならたくさん言葉を知っているほうがいいし。「汽水」(海水と淡水とが混じり合っている塩分濃度の低い水)という言葉を夢のように使っている詩を読んだことがある。「汽水」なんて、見聞きしたことはあるのだろうけれど、私の語彙にはなかった。

そんな風に思っているのに、いざ買おうと思うとどれがいいだろうと迷い始めて決めかねる、私。ネットで「決断力が弱い人」と調べてしまう私。いまはまだ携帯の大辞林で言葉を調べる。今日は「移り変わる」を調べた。

うつりかわる【移り変わる】
時が経過するにつれて、物事の様相が変化する。変遷する。「季節がー・る」「ー・る車窓の景色」

変遷か、変遷ね。変遷というとなんとなく、変化よりももっとスパンが長いように感じるのは気のせいか。遷都といった言葉のイメージがあるからなのだろうか。変遷も調べてみることにする。

へんせん【変遷】
時間の経過に伴って移り変わること。移り変わり。「風俗は時代とともにーする」

移り変わる→変遷
変遷→移り変わる
辞書ではときどきそうやって、お互いがお互いの言葉を紹介していること、あるよね。それで結局わからない、ということもあったりしてね。

はっきりとは書いていないけれど、やはり、この説明からすると、「変遷」という言葉には、ある程度長い時間をかけた変化というニュアンスがあるように感じられる。

ところで、と、私は立ち止まった。布団の上に座っていたけれど。気持ちの中で立ち止まった。さっき大辞林で変遷を検索したとき、すぐ隣に不思議な言葉が並んでいたな、と思い出した。再び「へんせん」と入力する。出てきた(前方一致で検索する設定にしていたのだ)。

へんせんこう【変旋光】

なんだろう。

変化の変
旋回の旋


携帯大辞林の表示は黒い画面に白字。黒の画面に白字で変・旋・光。これだけでなにやら視覚にうごめく色を感じる。黒が孕んでいる色を感じる。

へんせんこう【変旋光】
旋光性の物資の溶液で、その旋光性の大きさが時間とともに変わる現象。主に糖で見られる。

えっとおどろく。
旋回する光で私の予想をくるりとかわした!ええ、少しおどろきました。なぜか。どんな予想をしていたというのか私は。「変旋光」という文字をタップし、意味が黒い画面に現れるまでの一瞬の間に。

「変」は、よくわからないので意識に入ってこなかった。「旋光」だから、光がなにやらくるくるするのだろうとは思った。でもそれがわざわざ名付けられて言葉になっているのが奇妙だな、と思った。その辺りにざわざわしながらよく考える間もなく画面が切り替わり、あっとおどろいたのだ。

出てきた意味を読んでみて……
「まさか、ここで、物質という言葉が出てくるとは思わなかった!」と思った。しかも「旋光性の物質の溶液」とは!まさか化学の話になるとは。さらにその旋光性の大きさが時間とともに変わる?主に糖で見られる?

そんな不思議なことが、私の大好きな糖の中で起こっているのか。というか、よく読むとあまり意味はわからない。

どういうことなのだ、と思って、今度は旋光性という言葉を調べてみる。

せんこうせい【旋光性】
ある物質内を直接偏光が通過する間に、その偏光面を右または左に回転させる物質の性質。右に回転させるものを右旋性、左に回転させるものを左旋性という。水晶や砂糖の水溶液などに見られる。自然界ではタンパク質は左旋性、核酸などは右旋性のものだけが存在する。

なんとも不思議な説明!ここで私は少し勘違いをした。物質そのものの中に光があるのだと思ってしまったのだ。水溶液の中に鈍い光があって、それが煙が揺れ動くように水面下でうごめいているイメージが私の網膜下でうごめく。

沸騰しているお湯のようにわあっと興奮して、さらにその後に続く奇妙な文章にフワッフワッしてしまって、正確な意味についてはうやむやのまま、「こんなこんな奇妙な言葉が現象が!」と夫のところに走ってしまった(走った、は言い過ぎ。寝室を出て廊下を歩いてリビングに行くだけだから、走ると言えるような距離はない、もちろん)。

まさかタンパク質や核酸の出てくる文章になるとはねぇ。そしてタンパク質や核酸という言葉に、右旋性やら左旋性なんて言葉が続くとはねぇ。北半球と南半球で排水口に流れていくときの水の渦の向きが逆になるなんてことを思い出すような性質が物質によって決まっているだなんてねぇ。

太陽フレアによるオーロラのような美しい揺らぎを見たように思ったのだった。

この後、さらに「偏光」「直線偏光」と調べていくことになるのだけれど……。要するにある方向性を持った一本の光がその水溶液を通った時に右回りに曲がるか、左回りに曲がるか、が物質によって決まっている、くらいの意味だろうか。変旋光とは、その曲がる、だか回る、だかの幅が変化していく、くらいの意味だろうか。

結局、それがどのような現象であるかははっきりわからず、しかも、なぜ誰がそのような現象に気が付いたのか、そのような性質は何かに利用されているのか、等々よくわからないまま突然出会った言葉、というか、その言葉との出会い方?のロマンに目眩いした夜。

鯉の変旋性




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