武田薬品 過去の大型M&Aの成果が問われる1年!?
2014/07/07
武田の計算は「高値」つかみと批判と呼ばわりも

武田は過去に高値で買収してしまったのではないかと言われる案件があります。
2008年、88億ドル(当時の為替レートで約8,800億円)で買収した
ガン治療薬開発の米ミレニアム・ファーマスーティカルズと、
約1兆1,200億円でスイス製薬企業を買収した時には、
国内史上3位の海外企業買収に「高値」で掴み取らされたのではという声が業界のみならず
金融界の間で囁かれていた経緯があったのです。
武田はこれらの買収で世界15位から12位に浮上はしたものの、
批判をいとわずグローバル化を進める武田経営陣に向けて、
「買収価格は、適正価格をはるかに超えていた」
という評価は実は今も変わっていないのです。
これらの買収で武田はこれまでの弱点を相当に補強できると見栄を切ったのですが、
武田にとってナイコメッドのような欧州製薬企業の買収は果たして良かったのであろうか。
確かに営業面で見れば地域補完が見込めます。
ナイコメッドは欧州及び新興国市場に向けて、
武田側は日米市場に偏っていた販売が是正できました。
これにより、武田の販売地域は世界28カ国から70カ国に拡大し
成長率の高い新興国市場に参入を果たすことができた点で
評価出来たといえます。
あと数年で特許切れとなる主力薬も相次ぐという
頭の痛い経営問題にもこれで少しは
一定の成果を上げることができましたし、
ナイコメッドが持つCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬「ダクサス」といった
期待できる新薬を獲得したことは大きいと見ておりました。
それにも関わらず、格付け会社は「格下げ方向」に動いているのは、
やはり買収にあたって8,700億円という潤沢な手元資金を取り崩し、
約6,000億円を借り入れたことにあります。
武田は「買収価格は妥当」と主張するものの、
想定通りにシナジーを発揮できるかは未知数ですし、
「高値」で掴まされてしまったのではと言う声は根強くあったのです。
武田の驚愕人事によるグローバルな舵取り
日本企業は外国人社長が誕生するのは今では珍しいことではありませんが、
武田の場合は少し様子が違っています。
創業から230年以上の歴史があり、
これまで一族支配だった老舗企業だったのは良いとしても、
突然のライバルメーカーから
外国社長を据えたのですから当時は驚きでした。
更に織り込み済み事項の中には、
2014年6月に英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)の
クリストフ・ウェバー氏(47歳)が
社長兼最高執行責任者(COO)に就任する約束となっておりますし、
2015年には最高経営責任者(CEO)に昇格する人事まで決まっているのです。
このあまりにも強引で性急な人事に不信感を募らせる社内の者も多いなかで、
武田が批判もいとわず構築してきた
グローバル経営体制の真価がこれから問われます。
武田は海外M&Aをどう生かす
武田が2012年3月末に保有していた現金(同等物含む)は4,542億円。
それ以前には1兆6,000億円以上あったもですが、
単純にM&A後は1兆円以上も手持現金が減少したことになります。
アメリカとスイスの大手製薬会社2社の買収に
それぞれ1兆円前後の資金を投じたわけですから当たり前です。
更に、12年春にも600億円強の費用をかけて米国の製薬会社を買収しております。
実はこのような光景は珍しいことではなく国内製薬メーカーでは各社で行われております。
参考までに挙げてみますと、大日本住友製薬が
米国医薬品会社、塩野義製薬が中国製薬会社、
大正製薬HDがマレーシアの医薬品メーカー、
参天製薬がフランスの眼科系製薬会社といったところが買収劇をしているのです。
この背景には、医療用医薬大手各社の売上高営業利益率は
10〜20%と儲ける仕組みが出来上がっているからです。
つまりは1,000円の薬を販売すると100〜200円の営業利益を確保することができているからなのです。
薬は市販の製品よりも病院に収める厚生省が決めた価格設定で収める製品のほうが
半分以上もありますので、製薬会社は
いわば厚生省の下請け会社といっても過言ではない実態があるのです。
そこで、儲ける力を背景に財務体質が健全なことからM&Aにも積極的になれるというわけです。
後は各社とも投資に見合う純利益をどれだけ確保出来るかですから、
実はオイシイ商売をしているのが製薬メーカーの実態なのです。
話を戻しますが、武田の海外事業比率は
今や5割超、従業員は全世界に2万人以上とされており、
その中で日本人従業員は9,000人ですから、
半分以上が外国人従業員でで成り立っている会社なのです。
今後、武田は2017年度までに全世界で1,000人規模のリストラを計画しており、
日本の株主の意向に沿いながら企業統治を進めることになります。
既に事前に掲げた目標は達成している
企業経営に国境がなくなったいま、
武田の人事を通じて新しいスタンダードが生まれるかもしれません。
日産(カルロス・ゴーン氏)・ソニー(ハワード・ストリンガー氏)といった大胆で冷徹なリストラによって
業績を回復させるイメージは付きまといますが、
いかに企業統治を進めるか、お手並み拝見といったところかもしれません。
しかし、2月に発表した14年3月期(13年度)第3四半期累計(4〜12月)の連結営業利益は
1,693億円ですから、前年同期比12・4%の増加となっておりますし、
年度末まで3カ月を残して、今期通期の修正予想である1,500億円を超えているのは
徐々に成果の現れとみて良い結果も残しております。
円安の原因が好調理由のひとつですが、
これが売上高を底上げする原動力となっているのです。
ナイコメッド社買収や、糖尿病治療薬「アクトス」に対する
安価なコピー製品(ジェネリック)参入の影響などもあり、
今後も苦戦は雪纏(※「行き詰まり」の変換ミスと思われます)ますが、
米国や新興国の売り上げは円安を背景に大きく伸びておりますし、
新製品の立ち上げも今のところ順調ですし、
為替要因も手伝いもあります。
ベースとなる国外の医薬品事業は概ね順調よみて良いと言えるのではと思います。
ポイントはズバリ、 国内最大の医薬品メーカー・ガン治療薬、
糖尿病治療薬など高齢化社会をにらんだ積極的な新薬開発。
米社買収など積極的な海外M&Aによる国際戦略の拡大は
武田の思惑通りの戦略なのです。
http://zuuonline.com/archives/13532より
2014/07/07
武田の計算は「高値」つかみと批判と呼ばわりも

武田は過去に高値で買収してしまったのではないかと言われる案件があります。
2008年、88億ドル(当時の為替レートで約8,800億円)で買収した
ガン治療薬開発の米ミレニアム・ファーマスーティカルズと、
約1兆1,200億円でスイス製薬企業を買収した時には、
国内史上3位の海外企業買収に「高値」で掴み取らされたのではという声が業界のみならず
金融界の間で囁かれていた経緯があったのです。
武田はこれらの買収で世界15位から12位に浮上はしたものの、
批判をいとわずグローバル化を進める武田経営陣に向けて、
「買収価格は、適正価格をはるかに超えていた」
という評価は実は今も変わっていないのです。
これらの買収で武田はこれまでの弱点を相当に補強できると見栄を切ったのですが、
武田にとってナイコメッドのような欧州製薬企業の買収は果たして良かったのであろうか。
確かに営業面で見れば地域補完が見込めます。
ナイコメッドは欧州及び新興国市場に向けて、
武田側は日米市場に偏っていた販売が是正できました。
これにより、武田の販売地域は世界28カ国から70カ国に拡大し
成長率の高い新興国市場に参入を果たすことができた点で
評価出来たといえます。
あと数年で特許切れとなる主力薬も相次ぐという
頭の痛い経営問題にもこれで少しは
一定の成果を上げることができましたし、
ナイコメッドが持つCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬「ダクサス」といった
期待できる新薬を獲得したことは大きいと見ておりました。
それにも関わらず、格付け会社は「格下げ方向」に動いているのは、
やはり買収にあたって8,700億円という潤沢な手元資金を取り崩し、
約6,000億円を借り入れたことにあります。
武田は「買収価格は妥当」と主張するものの、
想定通りにシナジーを発揮できるかは未知数ですし、
「高値」で掴まされてしまったのではと言う声は根強くあったのです。
武田の驚愕人事によるグローバルな舵取り
日本企業は外国人社長が誕生するのは今では珍しいことではありませんが、
武田の場合は少し様子が違っています。
創業から230年以上の歴史があり、
これまで一族支配だった老舗企業だったのは良いとしても、
突然のライバルメーカーから
外国社長を据えたのですから当時は驚きでした。
更に織り込み済み事項の中には、
2014年6月に英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)の
クリストフ・ウェバー氏(47歳)が
社長兼最高執行責任者(COO)に就任する約束となっておりますし、
2015年には最高経営責任者(CEO)に昇格する人事まで決まっているのです。
このあまりにも強引で性急な人事に不信感を募らせる社内の者も多いなかで、
武田が批判もいとわず構築してきた
グローバル経営体制の真価がこれから問われます。
武田は海外M&Aをどう生かす
武田が2012年3月末に保有していた現金(同等物含む)は4,542億円。
それ以前には1兆6,000億円以上あったもですが、
単純にM&A後は1兆円以上も手持現金が減少したことになります。
アメリカとスイスの大手製薬会社2社の買収に
それぞれ1兆円前後の資金を投じたわけですから当たり前です。
更に、12年春にも600億円強の費用をかけて米国の製薬会社を買収しております。
実はこのような光景は珍しいことではなく国内製薬メーカーでは各社で行われております。
参考までに挙げてみますと、大日本住友製薬が
米国医薬品会社、塩野義製薬が中国製薬会社、
大正製薬HDがマレーシアの医薬品メーカー、
参天製薬がフランスの眼科系製薬会社といったところが買収劇をしているのです。
この背景には、医療用医薬大手各社の売上高営業利益率は
10〜20%と儲ける仕組みが出来上がっているからです。
つまりは1,000円の薬を販売すると100〜200円の営業利益を確保することができているからなのです。
薬は市販の製品よりも病院に収める厚生省が決めた価格設定で収める製品のほうが
半分以上もありますので、製薬会社は
いわば厚生省の下請け会社といっても過言ではない実態があるのです。
そこで、儲ける力を背景に財務体質が健全なことからM&Aにも積極的になれるというわけです。
後は各社とも投資に見合う純利益をどれだけ確保出来るかですから、
実はオイシイ商売をしているのが製薬メーカーの実態なのです。
話を戻しますが、武田の海外事業比率は
今や5割超、従業員は全世界に2万人以上とされており、
その中で日本人従業員は9,000人ですから、
半分以上が外国人従業員でで成り立っている会社なのです。
今後、武田は2017年度までに全世界で1,000人規模のリストラを計画しており、
日本の株主の意向に沿いながら企業統治を進めることになります。
既に事前に掲げた目標は達成している
企業経営に国境がなくなったいま、
武田の人事を通じて新しいスタンダードが生まれるかもしれません。
日産(カルロス・ゴーン氏)・ソニー(ハワード・ストリンガー氏)といった大胆で冷徹なリストラによって
業績を回復させるイメージは付きまといますが、
いかに企業統治を進めるか、お手並み拝見といったところかもしれません。
しかし、2月に発表した14年3月期(13年度)第3四半期累計(4〜12月)の連結営業利益は
1,693億円ですから、前年同期比12・4%の増加となっておりますし、
年度末まで3カ月を残して、今期通期の修正予想である1,500億円を超えているのは
徐々に成果の現れとみて良い結果も残しております。
円安の原因が好調理由のひとつですが、
これが売上高を底上げする原動力となっているのです。
ナイコメッド社買収や、糖尿病治療薬「アクトス」に対する
安価なコピー製品(ジェネリック)参入の影響などもあり、
今後も苦戦は雪纏(※「行き詰まり」の変換ミスと思われます)ますが、
米国や新興国の売り上げは円安を背景に大きく伸びておりますし、
新製品の立ち上げも今のところ順調ですし、
為替要因も手伝いもあります。
ベースとなる国外の医薬品事業は概ね順調よみて良いと言えるのではと思います。
ポイントはズバリ、 国内最大の医薬品メーカー・ガン治療薬、
糖尿病治療薬など高齢化社会をにらんだ積極的な新薬開発。
米社買収など積極的な海外M&Aによる国際戦略の拡大は
武田の思惑通りの戦略なのです。
http://zuuonline.com/archives/13532より