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富岡製糸場⑨ 繰糸場(2)
この繰糸場は、長さ140メートル、幅12.3メートル、高さは11.6メートルあり、操業した時に充満する蒸気を抜くための越し屋根があり、外から見ると2階建てのように見えます。この中に300台の製糸機がおかれ、当時世界一の規模でした。しかし機械化されていたとはいえ、よく糸がからまり、女工たちは大変だったようです。この富岡製糸場は、均一で国際的にも競争力のある良質な生糸の生産を目的としたため、技術指導も厳しく、女工の技術力にランクをつけたり、その成績を賃金に反映させるなど、管理はかなり厳しかったといいます。明治期の製糸場というと、女工哀史という言葉が連想されますが、富岡製糸場は、それまでの正月と盆休みしかなかった日本で、いちはやく日曜休みを取り入れたり、1日の労働時間を約8時間とし、昼休みや休憩時間も設け、毎日の入浴や食事など、技術だけでなく、その労働環境にも非常に先進的な西欧的思想を取り入れたものでした。
群馬県に移り住み、座繰りにこだわっている東宣江さんの「日本の養蚕」好評連載中。