MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2330 シャアとアムロの勝負の行方

2023年01月03日 | テレビ番組

 10月に放送が始まったガンダムアニメの最新作「機動戦士ガンダム、水星の魔女」が話題を呼んでいるようです。

 舞台となったのは、数多の企業の宇宙進出が進み巨大な経済圏を構築している時代。宇宙空間で生まれ育ったスペーシアンと地球居住者アーシアンの対立が激化する中、モビルスーツ産業の最大手「ベネリットグループ」が運営する「アスティカシア高等専門学園」に、辺境の星・水星から編入してきた一人の少女の物語です。

 思えば、オタクの間で「ファースト・ガンダム」と呼ばれるアニメ『機動戦士ガンダム』が初めて放送されたのは昭和54年(1979年)のこと。私もリアルタイムで見ていたのですが、放送当時は特に話題に上ることもなく、評価もそれなりだった記憶もあります。

 さて時は移り、玩具メーカバンダイが発売したプラモデル「ガンプラ」人気に加え、続編、続々編、劇場版、スピンオフ作品などなどが次々と発表されたこともあって、ガンダムは(いわゆる)アニメオタクのシンボルの一つとなっていきます。

 しかし、中年世代のマニアックなアイテムに変化してしまった(半世紀近い歴史を持つ)ガンダムに、もはや若者たちがついていけなくなっているのも事実です。そこで、シンプルに面白い(ブランニューの)新番組を作ることで、ターゲットをガンダム初心者である若い世代に拡大しようという視点で企画されたのが、今回の「…水星の魔女」だという話です。

 物語の主人公は女子高生。学園の最強パイロットの証である「ホルダー」の称号を賭けてのモビルスーツの対戦など、ストーリーはもはや学園ドラマであり、確かに昔ながらのガンダムファンにはかえって敷居が高いかもしれないかもしれません。

 我々の世代で言えば、ガンダムパイロットと言えばやはりアムロ・レイとシャア・アズナブル。繊細であるがゆえにそれぞれに過去を引きずる二人の戦いに、それなりの悲壮感とすがすがしさ、友情、リスペクトなどを感じていたのは私だけではないでしょう。

 己の才能を信じ犠牲を厭わない独善的な英雄と、傷つきやすいやさしい天才の織りなす葛藤の物語。実際、この二人に感じる「共感」の度合いは人によって大きく異なるようで、その後に人気を呼んだ(1988年にOVAで公開されたアニメ)「銀河英雄伝説」などにも通じる普遍性を持っていると言えるかもしれません。

 さて、そんなことを感じていた折、12月6日のアニメ・ゲームの情報サイト「ふたまん」に『アムロとシャア…現実世界の女性が選ぶのはどっち?』と題する記事が掲載されていたので、(二人の主人公に敬意を表し)この機会に紹介しておきたいと思います。

 『機動戦士ガンダム』の放送開始から43年。時代は平成、令和と移り、それに伴ってジェンダーの捉え方も変化してきた。当時は深く考えもしなかった“男とは”“女とは”という固定的な概念を語ることも、今ではタブー視される風潮にあると筆者は記しています。

 ガンダムにおける永遠のライバル、アムロ・レイとシャア・アズナブルに関してもまたしかり。なにかと比較されることの多い二人ではあるが、現実的な目線で見た際に、現代女性の眼にはどちらのほうが魅力的に映るのかというのが、この記事で筆者の問いかけるところです。

 経験を重ねながら徐々に大人になくアムロとは対照的に、シャアは早くから成熟している男として描かれている。ザビ家への復讐を果たし、人類を次のステージに導くという高い理想と信念を貫き続けているのがシャア・アズナブルだと記事は言います。

 もちろんそこに魅力を感じる人も多いだろうが、それは一方で柔軟性に欠けるということでもある。振り返ってみると、シャアはかなり早い段階で“アースノイドかスペースノイドか”といった二元論的な考え方をしていた。有能すぎて自分の考えに固執してしまい、視野が狭くなっていたという見方もできるかもしれないということです。

 そうやって、万能の秀才が万能感を拗らせに拗らせた結末思いついたのが、“もういっそ地球にコロニー落として全部ぶっ壊しちゃおう!”という、実に短絡的な方法。表向き大義名分を謳ってはいるが、これは子どもが癇癪を起こして物を壊すようなものだ筆者はしています。

 ただ純粋に母の愛を求め、それゆえにララァの死を乗り越えられなかったシャア。彼の純粋さの陰に、抜け切らない幼児性を感じる女性も多いだろうというのが筆者の指摘するところです。

 パイロットの才能ではアムロに負け部下にはロリコンと揶揄され、さらにマザコンを拗らせて自滅したシャア。しかし彼にはアムロにはないものを持っている。それは、顔と身長と家柄だと筆者はここで指摘しています。

 顔は見てのとおり。身長は公式データによるとアムロは168m、シャアは当初175cmとされていたが『機動戦士Zガンダム』以降は180cmとなっている。家柄もジオン公国創始者の息子と申し分ないということです。

 2021年の「第16回出生動向基本調査」によると、結婚相手に求める条件に関する調査で、相手の「容姿」を「重視する」あるいは「考慮する」と答えた女性は過去最高の81.3%。同じ項目で男性は81.2%と(わずかながらではあるが)女性を下回っており、つまり現代女性の多くが美男を求める傾向にあると氏はしています。

 拗らせた幼児的万能感も、イケメンにかかれば「純粋すぎる人」になる。それが有能で育ちの良いイケメンならなおのこと。「彼の苦悩や弱い部分を支えてあげたい」と思う女性も多いだろうし、内に抱えた葛藤に苦悩する姿が一段と映えるのは、やはり彼の恵まれた容姿に負うところが多いということでしょう。

 ところで、因みに先に挙げたデータでは、女性が結婚相手に求める条件で最も高いのは「人柄」(98.0%)で、次点が「家事・育児の能力や姿勢」(96.5%)とのこと。この点はシャアにはあまり望めないので、結婚相手としては、シャアよりもアムロを選ぶ女性も多いのではないかと筆者はこの論考の最後に綴っています。

 人の好みというのは、目的と条件によって変わるもの。ある女性に言わせると(彼女の眼から見れば)「所詮ガンダムはシャアの物語」ということですが、アムロだってシャアの引き立て役では終わらない。アムロあってのシャアであり、シャアあってのアムロだったのだろうなと、記事を読んで改めて感じた次第です。

 



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