MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#1972 次期政権の経済対策に望むこと

2021年09月21日 | 国際・政治


 9月17日、自民党総裁選に立候補した河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人は候補者演説会と記者会見にそろって臨み、政策論戦をスタートさせました。

 今回の選挙の最大のテーマは、何といっても新型コロナへの対応です。河野氏は抗原検査キットの安価かつ大量供給の必要性を強調。自身が担当してきたワクチン接種の拡大は勿論ですが、自分が実際に感染しているかを確認できるようにすることが非常に大事だと訴えています。また、岸田氏、高市氏は、ワクチン接種に併せて治療薬の開発・普及の加速をクローズアップしています。高市氏は特に感染拡大に備え、リスク最小化をするための(ロックダウンなどの強い措置)への法整備の必要性などにも言及していました。一方、野田氏は「早期発見・治療がこれからのコロナ対策で最も重要だ」と話し、期間限定の軽症者向け医療施設を設置する考えを示しています。

 また、4候補がそろって口にしたのは、新型コロナで経済的な影響を受けた事業者や個人に対する経済的な支援策の増強です。河野氏は(得意の)デジタル技術を活用した事業者向け協力金の早期給付を目指すとしたほか、岸田氏と野田氏は事業規模に応じた支援の拡大を提案しました。特に岸田氏は、立候補当初から数十兆円規模の経済対策の実現を改めて提案したほか、高市氏は、生活困窮者に向け特別定額給付金の再給付十記すことなどを訴えるなど、規模を拡大した新たな経済対策を目玉にしたい考えのようです。

 つまり、この先誰が政権を担うことになったとしても、コロナで傷ついた経済の立て直しに向け(選挙公約を踏まえた)政府による大規模な財政出動が行われる可能性が高いということ。私自身、その考え否定するものではありませんが、その一方で、各候補の口からその財源をどう生み出すのか、大きな赤字を出し続けているプライマリーバランスの問題や、2000兆円を超える積みあがった債務残高をどう解消していくのかといった方向性が示されなかったのは残念と言えば残念です。

 勿論「選挙」なのですから、厳しいことばかり言っていたのでは票に繋がつながらないのはわかります。しかし、内閣総理大臣が一国の責任者である以上、与党自民党の総裁選挙を取材するメディアには、そこのところの考え方を厳しく問う責任があるような気もします。もとより、こうした疑問は誰もが感じるところなのでしょう。9月18日の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」に「コロナ政策、3つの誤り」と題する一文が掲載されていたので、ここで紹介しておきたいと思います。

 新型コロナウイルスによる経済の混乱という未経験の困難に直面して、政府の政策対応が試行錯誤となるのはやむを得ない。しかし、その経験を踏まえて、同じ誤りを繰り返さないようにしてほしいと筆者はこのコラムに綴っています。そして、
実際のところ、これまでのコロナ危機下の経済政策については、以下の3つの大きな誤りがあったというのが筆者の認識です。

 その第一は、需給ギャップの拡大に引きずられて、まず規模ありきの景気対策を取ったこと。1年前に政府は、財政支出40兆円、事業規模73.6兆円という大型の経済対策を決定したが、これには、当時34兆円といわれていた国内総生産(GDP)ギャップ(2020年7~9月期、内閣府推計)を政策的に埋めるべきだという議論があってのことだったと筆者は言います。その後、この「34兆円」という数字が独り歩きし、対策の「規模」に影響した可能性がある。しかし、実質・年率表示のGDPギャップと名目の財政支出は対応していないし、そもそもGDPギャップの全てを財政で埋めるという考えには相当の無理があったということです。

 そして、第二の誤りは、政府が行った国民一人一律10万円の特別定額給付金を支給したことだと筆者は指摘しています。生活困窮者以外にも広く給付された結果、その多くは(そのまま)貯蓄に回ってしまった。内閣府が発表している家計貯蓄率の四半期別速報によると、コロナ前の19年には2.3%だった家計貯蓄率は、10万円給付が行われた20年4~6月期に21.8%に跳ね上がり、21年1~3月期も8.7%と高水準が続いた。平均的にみた家計はむしろお金が余っているというのが筆者の見解です。

 さらに第三の問題点として、筆者は「Go Toキャンペーン」の存在を上げています。政府は昨年夏、旅行や外食の需要を喚起するため、世論の反発を押してこの政策を断行した。しかしこれは、感染拡大という外部不経済を生む対面サービスを補助金によって奨励することになり、全く経済原理に反する政策だったということです。

 こうした明確な政策の誤りは、二度と繰り返してほしくない。しかし、このままでは再び実施される恐れは十分にあると筆者は懸念を表しています。これから先、自民党の総裁選挙、衆院選などが続けば、候補者はどうしても国民の注目を浴びたくなる。国民の受けを狙って、「大規模な経済対策を講じる」「コロナで困っている人のために給付金を配る」「苦境に陥っている旅行、外食業界を助ける」と主張したくなるからだと筆者は説明しています。

 さて、筆者も言うように、国債を発行して誰れ彼かまわず10万円単位のお金をばらまいても、それで経済がうまく回るようになるとは(正直言って)思えません。結局のところ、政府が「やってる感」を示すために、次世代への付け回しを増やし続けているだけだと感じている人も多いはずです。

 既に立憲民主党や共産党などの野党連合からは「消費税減税」の声が上がり、連立与党の公明党からも「子供1人当たり10万円」の無条件給付といった提案が聞こえてきています。そうした中、経済の活性化策や生活困窮者の支援を行うにしてもそれを人気取りの手段とすることなく、「効果」と「コスト」を見定めた賢明な支出(ワイズスペンディング)を心がけてほしいとこのコラムを結ぶ筆者の指摘を、候補者の皆さんには(是非)しっかり聞いてほしいと感じた次第です。




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