熊本県産として販売されていたアサリの多くが、実は外国産であった可能性が高いという問題で、農林水産省と熊本県は今年3月、同県宇土市の水産関連会社2社に食品表示法に基づく是正を指示したと報じられました。
両社は調査に対し、生育期間が短い稚貝を仕入れた上で熊本県内で4~9か月の「蓄養」を行い、生育期間の長い場所を原産地とする食品表示のルールに基づいて出荷したと主張しているようです。しかし、同省などは、該当するアサリは輸入された時点で1年以上生育されていた(はずだ)という専門家の見解を踏まえ、今回の措置に踏み切ったとしています。
アサリの産地表示をめぐっては、農水省が全国のスーパーなどで熊本県産として販売されたアサリについて調査した結果、およそ97%で「外国産が混入している可能性が高い」と判定されたということです。
しかし、ちょっと考えればわかるように、97%と言えば、そのほとんどが外国産だということ。このような(極端な)状況を農水省や流通関係者が把握していなかったはずはなく、「業者との癒着」「見て見ぬふりをしていた」と言われても仕方のない状況に、農水省などの監督官庁の責任が問われるべき問題と言えるでしょう。
こうした状況を踏まえ、消費者庁は産地表示ルールを一部見直し、輸入したアサリを国産として表示するには、国内での育成の期間が1年半以上とするなど、ルールの厳格化を図ることを決めたとされています。
新ルールでは、アサリを出荷調整のために浜にまいたり海に入れたりする「蓄養」の期間を産地認定の算定期間から外し、「蓄養」だけでは国内産と表示できないようにするということです。
さて、それにしても、こうして農産物などの食品の産地を「国産」と偽装する事件が後を絶たないのは、言うまでもなくその方が高く売れるから。そしてその背景には、消費者の外国産農産物への不信感と国内産農産物への神話があるからに外なりません。
個人的には、何を根拠に国内産であることをそんなに有難がるのかはよくわかりませんが、今回の事件を受けて「国内産」の表示に対する不信感が高まることは容易に想像できます。
こうした状況を受け、7月29日の総合情報サイト「Forbes JAPAN」に、『国産」表記は信用できない?産地偽装の驚くべきカラクリ』と題する記事が掲載されていたので、参考までに紹介しておきたいと思います。
食品を選ぶ際に「国産」を意識して選ぶ消費者はどのくらいいるのか。特に日本人は国産を積極的に選ぶ傾向が強く、2020年に日本政策金融公庫が行った調査では、74%が「国産にこだわっている」と回答したと記事はしています。
それだけ多くの国民に信頼されている国産食品だが、実は20年ほど前から産地偽装が深刻な問題となっている。例えば、農林水産省が2021年10月から12月末まで行った調査では、「熊本県産」として販売されたアサリのDNAを調べたところ、(前述のとおり)実に97%に「外国産が混入している可能性が高い」との判定が下された。2020年の熊本県産アサリの年間漁獲量は21tしかないにもかかわらず、農水省がサンプル調査を行ったわずか3カ月の間に、「熊本県産」として販売されているアサリは推定2485tにも及んでいるということです。
これは、中国から輸入したアサリを日本の沿岸に撒き、しばらく待つことで「国産」を名乗っているもの。こうした取り扱いはウナギでも当たり前のように行われており、「国産」を名乗るウナギの稚魚の多くは外国から輸入されたもので、2019年は75%が輸入稚魚だったと記事はしています。
国の基準では、輸入した生鮮食品には「原産国名」を、国産の食品には「都道府県名」などの表示を義務付けている。しかし、2か所以上で飼育や栽培をした場合は、生育期間が長い場所を原産地として表示するという(いわゆる)「長いところルール」が適用されるというのが記事の説明するところ。例えば、中国で植菌し、日本で収穫したシイタケは「国産」になる。アサリはこのルールを悪用しているのだということです。
正当な国産商品を選ぶことで、国内の1次産業の発展に繋がることは間違いない。しかし、「国産」と表示されていたからといって100%の信頼を置いてしまうと、自分のイメージと異なる実態に気付けず、かえって国内の1次産業の衰退に繋がる可能性すらあるというのが記事の見解です。
私たちにできることは、国産表示に隠された裏側を知り、賢い消費者として買い物をすること。正真正銘の国産を見極めるのは難しいかもしれないが、ホームページを見たりメーカーに問い合わせたりして、応援したいと感じた企業の食品を選ぶようにすることで国産食品の未来は大きく変わるはずだとする記事の指摘を、私も興味深く受け止めたところです。
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