6月14日の閣議で報告・決定された2022年版の男女共同参画白書。未婚率の上昇や共働き世帯の増加など、多様化する家族や社会の状況を踏まえ「さまざまな政策や制度が戦後の高度成長期のままとなっている」「もはや昭和ではない」と強く指摘しています。
今回の白書のテーマは「人生100年時代における結婚と家族」というもの。少子高齢社会の到来とともに、社会の姿そのものが昭和の時代から大きく変化している。にもかかわらず世の中の仕組み(や意識)は当時のまま大きく変わっておらず、そのことが人々が生活していくうえでの様々なひずみを生んでいると白書はしています。
実際、既に現在の日本の社会は、90歳時点の生存割合が男性が28.1%に対して女性は52.6%と、女性の半数以上が90歳以上まで生きるという「人生100年時代」を迎えている。核家族化の進展は単身世帯の極端な増加に形を変えつつあり、社会とのつながりを欠く独居高齢者の存在や「孤独」が、社会問題として顕在化し始めているということです。
私もネット上で目を通しましたが、白書では1980年と2020年の日本社会の状況を比較し、30歳時点の未婚割合が男性は31.1%から50.4%に、女性は11.3%から40.5%に増加したと説明。さらに離婚件数も増加傾向が続き、50~60代の独身女性の約半数に離婚経験があると解説しています。
また、この35年間で、専業主婦の数は大きく減少し、女性がパートタイム労働をする世帯数は約3倍に増加したものの、働く既婚女性の約6割は年収が200万円に満たず、(夫の扶養に入るための)就労調整が行われている実態があると指摘しているところです。
白書はその上で、(一歩踏み込み)専業主婦を前提とする配偶者控除や、専業主婦が保険料負担なしで年金を受け取れる「3号被保険者」の制度などの見直しについて、「さらなる取り組みが必要だ」と明記しています。
多世代の同居といった家族構成は過去のものとなり、(男・女にかかわらず)世帯は基本的に「個人」が単位となってきている。細かく分断されている社会構成の中では、世帯単位でなく個人単位の制度設計や、女性が経済的に自立できる環境づくりが必要だと訴えているのが、今回の白書の眼目と言えるでしょう。
さらに、この白書で興味深いのは、男女のかかわり方の変化について指摘しているところです。
白書によれば、20代の男性のおよそ7割、女性のおよそ半数が「配偶者や恋人がいない」と答えています。また、「これまでデートした(ことのある)人数」についての質問に対して、「ゼロ」と答えた人が20代の独身男性でおよそ4割に上ることがわかったとしています。
これなどは、若い世代の間で孤立化や人間関係の希薄化が進み、男女のお付き合いや性交渉などに消極的な(もしくは臆病な)若者が増えていることの表れなのかもしれません。
他者と積極的にかかわろうという意欲を持たない若者たち。そこに(男女の)カップルという既成の単位についての懐疑的な視線があったとしても、決しておかしくはないでしょう。
いずれにしても、生活を相互依存する共同体としての「家族」の関係はこうして大きな変化を見せている。そしてその結果として、婚姻歴のない30代の男女の4人に1人が「結婚願望なし」と回答する状況が生まれているのは(おそらく)事実です。
彼ら・彼女らが挙げた中で最も多かったのは、「自由でいたい」というもの。生存戦略としての「群れ」から「個」へ。かつての貧しい時代には、親や夫、妻や家族に守られなければ享受できなかった「自由」が、物心が付いた時から所与のものとして与えられる令和の若者には、昭和の時代とはまた違った生き方があるのだろうなと改めて感じた次第です。
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