厚生労働省が2023年に大学4年生、大学院2年生を対象に実施した調査(「新しい時代の働き方に関する研究会報告書」2023年11月13日)によれば、「大学生にとっての働きたい組織」の特徴は、以下の3点に集約されるとのことです。
一つ目は、「リスクをとりチャレンジングな事業成長を目指している」よりも、「安定し確実な事業成長を目指している」を支持するというもの。不確実な時代を生き抜く知恵として、まずは「安定」を重視するということなのでしょう。
二つ目は、「短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスもかかる」よりも「短期での成長はしにくいが、体力的・精神的なストレスがかからない」を支持するというもの。無理をしてストレスフルな環境に身を置くよりも、身の丈に合った仕事を淡々とこなしていきたいということなのかもしれません。
そして三つ目は、「その会社に属していてこそ役に立つ、企業独自の特殊な能力が身に付く」よりも、「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身に付く」を志向するということです。その会社で何をするかよりも、会社が何をしてくれるかを基準に考えるのが現代の就活のお作法とのこと。離職・転職は織り込み済みで、自分個人のキャリアアップを第一に考える(思いのほかドライな)彼らの姿に、イマドキを感じるのは私だけではないでしょう。
「Z世代」などと呼ばれ、それ以前の世代とは一線を引かれる彼らは、(旧世代が作り上げてきた)この社会にどのように抗い、どのように生きていこうとしているのか。(そうした疑問に応えるように)10月23日の経済情報サイト「Forbes JAPAN」に『Z世代が解雇される3つの理由』と題する記事が掲載されていたので、小欄にその概要を残しておきたいと思います。
Z世代に対する最も一般的な批判は、「やる気が見られない」というもの。Z世代は達成したい目標を掲げて「一生懸命」働くということをしない…と主張する声は大きいが、それはなぜかを掘り下げようとする人はあまりいないと記事は記しています。
2008年の金融危機からコロナ禍の混乱に至るまで、Z世代は「雇用主が忠実な従業員をどのように扱うか」を目の当たりにしてきた。解雇、減給、雇用の不安定さは、Z世代の親たちが抱える共通のテーマだったと記事はしています。こうした視点に立てば、Z世代が従来のキャリアパスになぜ懐疑的になるのかがわかろうというもの。努力が必ずしも報われるとは限らないと知れば、「自力で苦境を乗り越える」ことの困難さも理解できる。つまり、他の世代の目に映るZ世代の「やる気の欠如」は自己防衛の一形態であり、頑張ってもさほど安定が得られない環境に身を置くことへのためらいなのかもしれないということです。
さて、Z世代が職場で直面する問題につながっている「もう1つの要素」として、記事は彼らが身に着けてきた「コミュニケーション(の方法の)変化」を挙げています。この世代は、ネットやデジタル機器がある環境で生まれ育った「デジタルネイティブ」とされるが、それが従来型の職場環境における対人スキルにつながるとは限らない。SNSやテキストベースのやり取りにどっぷり浸かって育った彼らは、対面での意思疎通、特に職場でのやり取りに苦戦する可能性があると記事はしています。
また、彼らは(パンデミックにより)打ち合わせの代わりに、慣れ親しんだ手短なテキストでのやり取りが容認されていた時代に社会に出ざるを得なかった由。キャリア形成の重要な時期にオフィスに出社して同僚と顔を合わせて働く機会を逃してしまい、仕事に必要とされるコミュニケーションスキルを身に着けられなかった可能性もあるということです。
記事によれば、こうした問題は(主に)職場がZ世代に「慣らしの機会」を提供することなく、職場に溶け込むことを期待する場合に生じるとのこと。このようなコミュニケーションギャップは誤解やミスを招きやすく、Z世代が仕事熱心でないという印象につながりかねないと記事は説明しています。
そして、Z世代が職を失う可能性がある最も決定的な理由として、記事は「長時間労働や常時対応、仕事漬けの生活を重視する従来の労働文化を拒否している点」を挙げています。彼らより年長の世代にとって、「成功」は勤勉さや会社にキャリアを捧げることと結びついている。しかしZ世代は、こうしたミレニアル世代の(出世を念頭に置いた)「ハッスル文化」を支持していないと記事は指摘しています。
記事によれば、彼らが求めているのは「給料以上」のもの─つまり、バランスや意義、そして雇用とは別の個人的な充実感だということ。実際、Z世代の半数が就職を検討する際の最優先事項の1つに「ワークライフバランス」を挙げており、この「本音をはっきり口にする」世代は、有害な職場環境に我慢することを潔しとせず、「思っていたのと違う」仕事はすぐに辞することを厭わないということです。
もちろん、これは「怠惰」とは違う感覚。(言うならば)Z世代はキャリアアップよりも、個人のウェルビーイングやメンタルヘルスを優先する傾向が強いということだと記事は言います。こうした優先順位の変化は、年長の同僚や、従業員に期待以上の成果を求める企業にとっては不快かもしれない。しかし、少なくともZ世代はそれでも、残業したり、勤務時間外でも常にEメールに対応したりすることを(感覚として)好まないということです。
さて、雇用の安定やキャリアアップといった約束が守られるとは限らない、目まぐるしく変化する世界で育ってきたZ世代。その彼らが直面する職場の問題の多くについて、(彼らを迎える世代は)全て彼らに非があるわけではないと認識することが重要だと記事は最後に綴っています。
彼らは、(努力に対して必ずしも報いてくれるわけではない)会社で働くばかりが人生ではないことを悟っている。Z世代を名乗る彼らは、時代遅れの働き方や現代のニーズに適応できていない職場と「今日も格闘している」のだと話す記事の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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