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内科・循環器科の専門医で大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏は読売新聞オンラインのコラム「YomiDr.」に、(あくまで一般的な話ではあるが)「妻に先立たれた夫」は元気がなくなり早死にするけれど、「夫を亡くした妻」はその後も元気で長生きすると綴っています。(石蔵文信の「男と女の楽しい更年期!」2021.3.10)
愛媛県で1996~98年に、60~84歳の男女約3100人に対して、配偶者の有無や喫煙習慣、糖尿病や高血圧の治療歴など調査し、約5年後の2001~02年に対象者の生死を確認したデータがあるそうです。
調査中に死亡した男女計約200人と生存していた約2900人を比較して配偶者の有無などの影響を分析した結果、75~84歳では、女性は夫がいる方がいない場合に比べて死亡リスクが2.02倍高く、逆に男性は妻がいる方がいない場合に比べて0.46倍(半分以下)に低くなっていた。
その意味するところは、夫の依存が妻に負担をかけている一方で、妻に先立たれると夫は身の回りのことを助けてくれる存在を失い逆に死ぬ危険性が2倍に高まるということ。男性には少しショックかもしれないが、妻を亡くした夫は早死にし、夫を亡くした妻は長生きするのは(医学的には)もはや常識となりつつあるということです。
こうした状況を知ってか知らずか、実際、多くの男性が「妻よりも早く死にたい」と考えているようだと、氏は2月10日の同コラムに記しています。氏によれば、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査では、「自分が先に逝きたい」と答えたのは男性78%、女性50%で男性の方が有意に多く、その理由は、男女とも「パートナーを失う悲しみに耐えられないから」が最多、続いて「死ぬときにそばにいて欲しいから」だったということです。
一方、男女の違いが際立ったのは「パートナーの介護をしたくないから」で、女性でこれを選んだ人は全体の19.5%に及び、男性を10ポイント以上も上回っていたと氏は説明しています。高齢期を迎えた世の夫たちの多くが、(勿論そうとは知らずに)それだけ妻に嫌われているということかもしれません。
さらに、同調査で高齢男性が妻に願うこととして多かったのは、「健康で長生きしてほしい」というものだったということです。
これは一見、妻の体を心配しているように見えるが、実は、妻に倒れられると困るというのが本音のようだと氏は指摘しています。幸いなことに、一般的に女性の方が結婚年齢は低く長生きなので、7~8割の夫は、妻に看取ってもらえるかもしれない。しかしだからといって、多くの妻たちが夫に長生きしてもらいたいと思っているわけではないのは言うまでもありません
石蔵氏は4月14日の同コラムに「夫に早死にしてもらいたい妻たちは…意外といます」と題する、恐ろしくも興味深い一文を寄せています。
世の妻たちには、ストレス源となる夫が長生きすると自らの寿命が縮むという現実が見えている。実際、氏が1217人の既婚女性(平均年齢46.4歳)にアンケート調査をしたところ、約半数の妻が夫の早死にを望んでいたという結果に驚いたということです。(「妻の病気の9割は夫がつくる」マキノ出版)。
夫の早逝を望んでいる妻に対して、「そんなに嫌なら、離婚でもすればいいじゃないか?」と考える人もいるかもしれない。しかし、主に経済的な理由などから離婚には踏み切れない妻は多いようだというのが氏の認識です。
ある程度慰謝料や財産をもらっても、自分に十分な稼ぎがなければ毎月の生活に困ってしまう。そのため、離婚をしたくてもできない上に、夫からのストレスにさらされている妻が夫の早死にを望むのは、ある意味自然なことかもしれません。
こうして夫が原因のストレスから逃げ場を失った妻たちは、本気で夫の早死にを望むようになる場合も多い。また、それほど強いストレスを感じていない妻にも、夫に嫌がらせすることで発散している人が結構いるようだと氏は話しています。
例えば、夫の歯ブラシでお風呂を掃除して、そのまま元に戻すとか、みそ汁に鼻糞を入れるというような、夫には気づかれない小さな復讐をしている妻は少なくないというのが氏の指摘するところです。
生活を妻に依存している夫の多くは、彼女を家政婦のように考えて使い倒してきた。そう考えれば鼻糞くらいは、ある意味「自業自得」と言えるかもしれません。
氏はあるテレビ番組に出演した際に、実際にこのような復讐をしている何人かの妻たちと同席したということです。休憩の時間に恐る恐る「夫の前でも文句を言うのですか?」と聞いたところ、彼女たちは(そろって)「夫は貞淑な妻だと思っていますから」と笑って答えていたと氏はしています。
「秘すれば花」とはよく言ったもの。復讐の醍醐味とは、まさにそうしたところにあるのでしょう。
早くこのオヤジが死んでくれれば、私も楽になれる。こうした現実を考えれば、いつも文句を言っている口うるさい妻よりも、長年連れ添って全てを許してくれているようなおとなしい妻に注意したほうがよいかもしれないと話すこのコラムにおける石蔵氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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