MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2517 いくら筋トレしてもダメな人はダメ

2023年12月23日 | スポーツ

 健康器具を扱う「株式会社セルパワー」(京都市)が2020年7月に全国の50代以上の任意の男女1117人に対し実施したアンケート調査によれば、回答者の約17%が何らかの健康機器を利用していると答えたということです。

 その内訳は、「筋トレ機器」が24.9%とトップで、次いで「ルームランナー」が18.5%。さらに「振動マシン(足、お腹、お尻)」(11.6%)、「ぶら下がり健康器(9.0%)」と続いています。一方、「健康機器を購入して失敗したことはありますか?」との質問に対しては、回答者の約3割が「はい(31.4%)」と答えており、「購入したのに使っていない」が半数超の52.3%、「安いものを選んだ」が13.4%、「試してみなかった」が(11.1%)と続いたとされています。

 人口構成の高齢化が進む中、世はまさに健康ブーム。健康長寿を目指すお年寄りを中心に、健康への意識は高まるばかりの様子。平日昼間のテレビのCMは、(高齢者向けの)健康食品や健康器具に席巻されている観があります。

 実際、セルフケア健康機器(個人用健康管理機器、健康回復機器、健康治療機器)の市場は2021年に2190億円規模に達したとの報告もあり、(ほぼ同じ市場規模の)動画広告などと並ぶ「成長産業」と目されているようです。

 とは言え、いくら「健康に良い」と言われても、中には「ホント?」と疑問を関させるものがあるのも事実です。「1カ月でウエスト回り(なんと)マイナス8cm!」とか言われても、何だかうそっぽい。「あくまで個人の感想…」なのだろうなと思わないでもありません。

 そんな折、4月23日の総合情報サイト「現代ビジネス」に、現職の内科医で医学博士の奥田昌子氏による『じつは日本人にとっては意味がない8つの健康法』と題する論考を見つけたので、小サイトにその概要を残しておきたいと思います。

 いつまでも健康で若々しくありたいという人々の願いに応えるかのように、次々に登場する新しい健康法。大抵はもっともらしい説明がなされテレビや雑誌が盛んに取り上げるが、ある食品や習慣に健康効果があるかどうか判断するのは難しいと奥田氏はこの論考で語っています。

 実は、健康法にも人種差の問題がある。メディアは欧米で流行している健康法をきそって紹介するが、欧米人とは異なる遺伝子を受け継ぎ、異なる環境要因のもとで生きてきた日本人の体質は、当然ながら、欧米人の体質とは多くの点で異なるというのが氏の認識です。

 例えば、大きな負荷をかけて瞬間的に力を入れるダンベル運動やスクワット、腕立て伏せなどの運動を繰りかえす無酸素運動系のトレーニング。筋肉がつくと基礎代謝(安静にしているときに消費する必要最小限のエネルギー)が増えることから、「筋力トレーニングで“やせ体質”になれる」と言われるようになったということです。

 しかし、実際は理屈どおりにはいかないもの。問題は、日本人は欧米人と違って簡単に筋肉がつかないことだと氏は言います。

 人の筋肉は筋線維という細い線維が集まってできている。氏によれば、この筋線維には赤と白の2種類があり、赤い筋線維はゆっくりと長い時間にわたって働くもの、白い筋線維は瞬間的に大きな力を発揮できるのが特徴だということです。

 赤白どちらの筋線維が多いかは個人差があるものの、それ以上に大きいのが人種による違い。例えば、白筋の合成が少ない人はアフリカ系では3~10%しかいないが、欧米白人では20%、アジア系では30%以上に上ると氏は説明しています。

 結果、人種ごとに平均すると、アフリカ系では筋肉全体の約70%が白筋であるのに対し欧米白人は50~60%とされる。日本人を含む黄色人種では逆に70%が赤筋と言われ、アフリカ系の人がオリンピックの短距離走で活躍するのはこのためと考えられているということです。

 そして、この赤筋と白筋の割合は、トレーニングによってある程度は変化するものの、大きく変わることはないと氏は指摘しています。一般的に、鍛えることで太くなるのは大部分が白筋なので、日本人が筋肉をつけようと思ったらもともと少ない白筋を集中的に鍛えなければならない。これは効率が悪いうえに、苦労して筋肉を1kg増やしても基礎代謝量の増加は1日あたりせいぜい20kcal、わずかキャラメル1粒分のカロリーに過ぎないということです。

 因みに、これによる体重の減少は年に1~2kg。体力があって、プロなみのトレーニングを続けられる人であっても、筋力トレーニングだけで基礎代謝を十分高めるのは困難を極めるというのが氏の見解です。

 そして何より、基礎代謝には意外な側面がある。実は筋肉だけでなく脂肪組織もエネルギーを消費しているので、脂肪が1kg減ると基礎代謝量が1日あたり5kcal下がるというのが氏の指摘するところです。

 つまり、激しいトレーニングを通じて筋肉を1kg増やし、脂肪を2kg減らしたとしても、結果、基礎代謝量の増加は差し引き10kcalになってしまうということ。これは、いくら筋力トレーニングをしたとしても「やせ体質」にはならないことを意味していると氏は言います。

 結局のところ、(少なくとも日本人の場合は)痩せたければ、カロリーの総摂取量を減らすとともに、日常生活のなかで体をこまめに動かしてカロリー消費を積み重ねるほうが確実とのこと。

 いくら筋トレを繰り返しても、マッチョになれる人は限られている。健康を考えるなら、プロテインをがぶ飲みするよりも、質素で低カロリー、栄養バランスに優れた日本食の方が日本人の体質に合っていると考える奥田氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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