2019年8月の渋野日向子選手による全英女子オープンゴルフ優勝後、久しぶりに盛り上がりを見せていた日本のゴルフ界。そこに伝えられた今年4月の松山英樹選手によるマスターズゴルフトーナメントでの優勝は、ゴルフファンに限らず日本中に大きなインパクトを与えました。
日本ゴルフ界の宿願でもあった日本人選手による(男子)4大メジャー大会での優勝は、コロナ禍で感染リスクが低いゴルフが見直されるきっかけとなり、日本のゴルフ業界にとっても強い追い風として作用しているようです。
さらに今日(6月7日)は19歳の笹生優花選手による全米女子オープンの優勝が伝えられ、オリンピックの東京大会を目前に世代交代を果たした日本勢の活躍はとどまるところを知りません。
最近、仕事の関係でゴルフ場の経営者の方々と話をする機会が増えているのですが、現在のゴルフ場は、ゴルフを始めたばかりの若いゴルファーや、しばらくプレーを離れていた60代以上の世代の回帰などによって大いに賑わっているのだということです。
人気の余波はゴルフ場以外のところにも波及しており、ゴルフグッズを扱うチェーン店やクラブメーカー、さらにはカーボンシャフトを焼く加工業者まで、注文が多くて受注をこなしきれない状況だと聞いています。
ゴルフというスポーツを巡るこうした盛り上がりは、(しばらく冷え切っていた)ゴルフ場会員権市場にも早速火をつけているようです。
5月26日の日経新聞によれば、松山選手が優勝した今年4月の関東圏ゴルフ場(主要150コース)の会員権の平均価格は、前年同期比15.6%高の193万円で、前年同月を4か月連続で上回ったということです。
会員権仲介大手の「桜ゴルフ」(東京・中央区)は同紙の取材に答え、4月の個人による買い注文数は前年同月の実に2.7倍上っており、売り注文数も前年同期比41%増と、市場全体が活気づいていると話しています。
私が聞いた関係者の話でも、首都圏のゴルフ場は(「密にならない」というエクスキューズから)ここのところどこも予約が一杯で、しかもそれは(在宅勤務の影響かどうかはわかりませんが)土・日・休日に限らない。(カラオケや飲み会などが制限される中)堂々と大手を振って出かけられ、健康的で社交性もある男女共通のレジャーとして人気を博しているということです。
加えて最近では、コロナ禍でやることがなくなった若者が、「ゴルフでもやってみるか」と興味を持ち始めたという話をよく聞くようになりました。
ゴルフの裾野が広がったというのでしょうか。全体的に見ても仕事がらみのグループによる社交的な色彩が薄まり、プライベートのパーティーでの和気あいあいとしたものに変わってきた。父親に連れられた母親や息子、娘たちなどのラウンドも多く、郊外でのキャンプやピクニックの感覚に近いものがあるという話です。
このような利用者の変化に伴って、ゴルフ場でのプレースタイルもずいぶん変わってきたと、キャディーさんたちが話していました。自分たちのペースで回れるセルフでのラウンドが好まれ、プレースタイルも、厳密にルールや勝ち負けにこだわらない「ゆるい」ものになっている。もちろん、スコアについて「握る」ようなことはなく、(コロナの影響もあって)昼食時にビールを飲む人すら少なくなっているということです。
こうした話を総合すると、新しくゴルフを始める人を中心に、ゴルフはこれまでのような「スポーツ」としてではなく、ちょっとおしゃれをして出かける手軽な「レジャー」として捉えられているように感じます。
そして、こうした変化に対しては、ゴルフ場の経営サイドも敏感です。
御存じのように、現在のゴルフ場は、純然たるメンバーシップ制度では経営が立ち行きません。ゴルフ場の多くがインターネットなどによるビジター予約を受け入れ、メンバーには縁もゆかりもない人を、ネット予約経由でラウンドさせているのが現実です。
旧来の(いわゆる)「カントリー倶楽部」は、英国の伝統に基づくメンバーによる自主独立の運営が基本だったため、そこに連れられて来たビジターはローカルルールの中でほとんど借りてきた猫状態、肩身の狭い窮屈な状況に置かれていました。
しかし、(一部の名門と呼ばれる施設を除けば)いまや多くのゴルフ場が(正直言って)一見のビジターさんに高いプレイフィーを負担してもらわなければ運営が成り立たないのも事実です。
最近は、初心者のようなビジターが多くなりゴルフ場の「品格」が落ちたという苦情を(古参のメンバーから)しばしばいただくようになったと、知り合いのマネージャーがこぼしていました。
しかし、経営する側からいえば、ビジターに優しいゴルフ場というスタイルで運営していかなければ大切なお客様を逃がしてしまうことにもなり兼ねない。このネット社会では、悪い書き込みのひとつもあれば、あっという間に客足は遠のくというのが本音のところでしょう。
昭和のおじさんたちの社交場として一世を風靡したゴルフ場にも、(若い選手たちの活躍とともに)世代交代の波は着実に押し寄せているようです。
巷はコロナで大変ですが、青空の下で友人たちとゴルフに興じれば、日ごろのストレスもかなり解消できるというもの。家計の金融資産も増えているようですので、(ゴルフ場の経営のためにも)あまりキリキリせずに、気の置けない仲間とおおらかにプレーを楽しんでいただければと考えるところです。
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