球形ダイスの目

90%の空想と10%の事実

黒電話のロマン

2018-10-07 | 趣味(旅行・娯楽・読書・食)
先日、アウターゾーンなる漫画をKindleで衝動買いした。

自分がたぶん小学生くらいのときに少年ジャンプで掲載していた漫画で、
エロチックな服装の女性が語り部をやっている、オムニバス形式の小品という程度の記憶。
表面上は。

この漫画に詳しい人のために書いておくと、
ハッキリと自分が読んだ記憶があるのは、第8話の"笑う校長"で、記憶があるのはさらにその中の一部。
赴任先の生徒の顔が皆同じであることに、この話のメインキャラである教師が驚いている、
というシーンだった。

その程度の記憶しか鮮明に残っていないのに、
どうしてコミックスを一通り読みたくなったかは説明が難しい。
ネットの中で有名な話が何個かあって、それの影響で一通り読みたくなったんだったかな…?
あるいは、ミザリィという(さっきエロチックな服装と書いた)語り部の顔だけ知っていて、
結局本題がどういう話だか知らなかったため、気になったという感じである。

ちなみにネットを見た限りでは、以下の話は比較的知名度が高いようだ。

第18話 『森の妖怪』 → boketeのネタ元?
第29話 『妖精を見た』→ 当時この"妖精"が怖かった青少年多数。チャイルドプレイみたいだね。
第87話 『禁書』   → 漫画等に対する規制がいたずらに厳しくなった世界を描いた寓話だが、
             東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正に関する議論が出た際に、
             この話を思い出した人が多数とのこと。

当時のジャンプの漫画の中では中堅どころというか、
他の漫画のついでになんとなく読んでいる人が多いくらいの位置づけの漫画だったと思う。
その割には断片的に話を憶えている人が多いのが面白い。

印象的なシーンがあって、なんとなく読んでいた程度の読者の心にも刻まれているということ。
こういったジャンルのエンターテイメントは、世代を問わず一定の需要があること。
話を大きくしてしまったが、多分そういうことだと思う。

ちなみに自分が好きな話を述べるなら、以下の2つかなぁ...
第64~67話 『目標:月世界!!』
作者の愛情が随所に滲み出ている名作。
愛情とは...機動戦士ガンダム0080の小説版で、バーニィが死ななかったような(殺せなかった)タイプの愛情とでも言おうか。
「一流の悲劇よりも三流のハッピーエンド」という言葉が鳴り響く。
※この話は三流ではないが

月を目指すロマン。二人は夢を靴底に貼り付けて歩み続け、最後には別の道を歩むことになる。
二人のどちらが幸せか?正解はなく、希望とノスタルジーと寂しさの混じった展開に胸が熱くなる。

第83話 『マジック・ドール』最終話
話の中身よりラブコメが好きな諸君に人気があったと思われるシリーズの最終回。
変則版の輪廻転生といった感じの結びで、とりわけ人と関係を築くのが得意でない自分には、
こういう出会いこそが俺の人生哉と、ロマンを感じてしまう。




同じ作者によって書かれている短編集で、"サランドラの壺"という1冊がある。
この短編集はデビュー初期に書かれたものが多く、絵柄(というか登場人物の外観)がアウターゾーンよりも
さらに古臭いものが多いが、ここに収録されている"マジック・セラー~ラスト・コール"という短編は白眉。

あらすじ。
ある青年が、フリマにてレトロな黒電話に興味を持ち、部屋のアクセサリーとして購入する。
電話としての機能は失われているにも拘わらず、ある日その黒電話から電話が掛かってくる。
電話の主は20年前の電話の持ち主で、女優の卵という。
青年と女性はお互い状況が呑み込めない状況から会話をスタートしつつ、
次第に時間を越えた会話を楽しむようになり、心を通わせていく。
しかし、そんな夢のような時間が、不幸な事件で終わりを告げてしまう。
青年はその後どうしたか―
切なくも救いのあるストーリーで、読んでいて心地よい。

世の中には色々と現実逃避の(気を紛らわす)方法があるが、効果は千差万別である。
これらの漫画は、"そうだよ、俺はこういう現実逃避がしたかったんだ"と思わせる
ワクワクを呼び起こしてくれるものだった。

この年になってしまうと、自分にとって都合の悪いことや、やりたくないことでも日々直面せざるを得ない。
そんな時に、思いついたようにこういう漫画を読んで、日々彩度が落ちていく心のキャンバスを
ポスターカラーさながら染め上げるというのは、なかなか良いものである。

コンビニとかでも最近置くようになっているらしいので、読んでみ。


コメント
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