さて…久々に安部公房作品を読んでみました。
どうだったか…
まず、面白いとは言えるだろう。そして、(他の安部公房作品と同じように)怪奇な話。
展開といい言葉遣いといい安部公房節そのままに、という感じ。
ミステリアスな女性が出てこないので、出てくる作品よりは劣情をそそる様な魅力は下(すみません)。
この小説の最大のポイントは自ら火星人と名乗る客人で、こいつの屁理屈だけで内容の8割を占めるというもの。
※これは長くなるので別の記事で書きます
個人的に近いと思ったのは"闖入者"。あれの場合は実際に家と命を奪われたが、この小説の中では主人公が正常な判断力(心)を奪われた、というような住み分け。あるいは妻も?
理不尽な形で主人公が壊れて、結局誰が得することなく話が終わるため読後感はあまりよくなく、客人を○しておけば良かったのに…という気持ちにはさせられた。
お勧めできるかどうかは…ファンなら。
しかし、ファンである自分でも、一読しただけでは主人公の心が壊れた流れがハッキリとは整理できなかった。
(読んでいる間は物語の筋の方が気になるので主人公の揺れ動く認識に意識が向きにくいということがある)
忙しいから読書は一読しかしないと決めている人にとっては
意味不明で面白くない、という評価を受けるかもしれない。
何度も読むことで客人の話の構造が理解できる確率が上がってくるだろう。
・ふと思い出したこと
昔ドリフで店員を騙しすかしてお釣りをごまかすコントがあったと思うが、
あれはこの小説でやっていることに近い。アレの規模が大きくなって小説になったという説明を分かりやすく思う人もいるかもしれない。
[補足]
何度となくキチガイという表現が出てくるが、
昔の小説であることと作者が既に故人であることから修正を免れている。
いいね!
文言の表面だけ修正なんて意味無いからやめてしまえと常々思っているためこの判断は素晴らしい。
間違っても浜田村の民は死霊銀バエなんぞ食べたりしないのである。