今日はフィンランドからやってきた名作(といわれる)
四人の交差点を読んだ。図書館で借りました。
どうだった?
・外国語の訳本ながら非常に自然な日本語で読みやすかった。
・内容はある拡大家族のうち4人をクローズアップして、同じ家に住みながらも交わらない家族の心と、そうなってしまう理由(センシティブな理由1つとフィンランド人の気質)を描いた作品。大きく4章構成で、
婆(マリア)ー母(ラハヤ)-義娘(カーリナ)ー父(オンニ)がそれぞれ中心となって1930年代~90年代の年表を互いに虫食いするようにエピソードが描かれる。
・特徴としては、"自立した女性"がかなり意識的に描かれていること。
しかし、この当時はそういう女性が浮いた存在であったらしい。個人的にはそこに驚いた。2022年現在では最も男女平等の進んだ国として認知されているフィンランドだけど、昔から進んでいたわけではなかったのだと。
調べていくうちに"110年かけて実現した男女平等"というものも見つけた。
何というか、おみそれしました。
・平易な文体、会話も出来事も、霧の中を歩くような不明瞭さを残しながらも淡々と描かれていくし、それに黙ってついていく、これが面白い。
本には多少厚みがある割には結構すらすらと読むことができると思う。
題名の"交差点"というのは日本語で言うと"すれ違い"みたいに訳したくなる意味が込められていて、
出会っても、共には歩まずに別な方向に歩き続けずにはいられないという関係性が示唆されるタイトル。
劇中では大戦で心ならずともドイツを友軍としてロシアと戦う必要があったという背景が描かれ、多くの日本人読者には新鮮な情報を得ることが出来る。
フィンランドにあまり興味が無い人でも普遍的なことがテーマになっているのでしっかりと読めると思います。
星を付けるなら★4~★5。
誰にお勧めか…女性。
実は男性の登場人物は皆描写が薄い。
主人公の一人であるオンニ(男)はこの話の秘密の一つを握るキーマンではあるが、
2人目の母ラハヤが話の中心にいて、彼女が周囲に与える緊張感の濃密な描写に比べるとその夫というポジションだったりであまり彼の内面を伺い知ることが出来ない。
一方女性は3人もメインを張るし、他の子どもたちも女性が中心。
恐らく女性の方がより楽しんで読めるのではなかろうか。
◇
もう一つどうしても特筆したくなるのが…
先日読書メモを書いたガルシア・マルケスの”百年の孤独”と似た雰囲気を多分に感じるということ(読んだことがない人には不親切で申し訳ないが)。
[似ている点]
・家があり、家族があり、一見幸せそうな生活の中で、
各々が分かり合えず孤独を感じていること
→この共通項が似ているように感じさせる理由だと思う
・ある一族の生活を三世代以上にわたって描いていること
(こちらは一族の栄枯盛衰のようなものは無いが)
[似ていない点]
・近親相姦だったり、代々がみな同じ名前、ということはない。
・四人の交差点の登場人物は、"自分は変われないし、この状況を打破することは出来ない"という諦念が文章のそこかしこに見られた。
つまり、"人間関係"という部分の閉塞感はこちらの方が強い。
この手の小説というのは、家族の誰かには自分に近いところがあり、
共感する要素があると思うので多くの人が前向きに手に取ってもらえる良さがあると思う。
来る秋に備えて買っとけ!(適当)