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すぐに靴下を脱いで走り出してしまうこの対応Q&A

2018年11月26日 | 教育
Q&A形式のお話です。

Q 特別支援学校(知的障害)小学部のに在籍する男の子,
 A君のケーススタディです。

・発達段階で2歳代半ばの自己主張の強くなるあたりのお子さんです。
 発声はありますが言葉はありません。A君は朝登校してくると,
 昇降口ですぐに靴下を脱ぎます。その後,靴下をはこうとしません。
 上履きの具合が悪いのか,学校で履くのをやめてしまったのか,
 教室で履かせてもすぐに脱いでしまいます。つま先立ちで歩く
 ことも多いお子さんです。

・A君は2学期まで,靴下をはきませんでしたが,3学期から学校でも
 靴下をはくことができるようになりました。どのようなアプローチ
 がよかったのでしょうか。感覚的なアプローチやB君の心理面から
 推測してみてください。

 ※補足
・A君はつま先立ちがあり,靴下を嫌います。のりなど,べたべたした
 ものが苦手で,体に少しでも触ろうとすると,過剰にくすぐったがり
 身をよじります。触覚防衛反応の働きを強く感じます。正しく
 「触覚」がはたらくことが必要です。以前は大変精神的に不安定で,
 教師のつめや,服に過剰にこだわってパニックになってしまったり,
 そのまま,その場でお漏らしをしたりしてしまうこともありました。

【解答】 

○拒否する背景に,本人の好みやルール理解の発達段階があります。
 学校では嫌だけど、恥ずかしいから靴下は履いておくという
 段階ではないので,信頼関係を築きながら対応することが
 1つ目の大切な指導ポイントとなります。

○それと,もう一つ,実は体に触れられる,触れるものに
 敏感に感じてしまい,少しでも,過剰に嫌悪感となって
 しまう症状である,触覚過敏という状態があります。
 過剰に反応しそれを拒否する行動が触覚防衛反応です。

・A君はつま先立ちがあり,靴下を嫌います。のりなど,
 べたべたしたものが苦手で,体に少しでも触ろうとすると,
 過剰にくすぐったがり身をよじります。触覚防衛反応の
 働きを強く感じます。正しく「触覚」がはたらくことが
 必要です。以前は大変精神的に不安定で,教師のつめや,
 服に過剰にこだわってパニックになってしまったり,
 そのまま,その場でお漏らしをしたりしてしまうことも
 ありました。

・その年は穏やかなかかわりの中,ずいぶん気持ちが安定
 してきました。パニックが2学期にはずいぶん減りました。
 教師との関係が大変良好になり,教師の手を引っ張る
 ことも多く見られるようになりました。

・給食の時間,早く食べ終わると,手のひらを摩るよう
 にしました。「ここを摩ってるよ」とやさしく声を
 かけながら,時間をかけながら,摩っているところを
 よく見るように気をつけて行いました。刺激を受けて
 いるところをよく見る行為を「定位」と言いますが,
 ただ摩っているだけでは,触覚が正しく働かず,
 触られているところを本人が意識することが大切です。

・手のひらを触られることから,徐々に腕の上の方まで
 触られることにも慣れてきたA君。3学期,教室で
 靴下をはかせてみると,特に脱いでしまうこともなく,
 それ以来,脱がなくなりました。正しい触覚がずいぶん
 働くようになったのだと思います。

・ここで言う触覚は単なる皮膚の感覚ではなく,感覚統合
 の働きで言う触覚です。先のA君にあった,靴下をはく
 のが嫌,べたべたが嫌,触られることが嫌,というのは
 主に「原始系」の働きです。それとは対照的に「識別系」
 の働きがあります。

・「原始系」は本能的に身を守ろうとするもので,
 古い脳に当たる大脳辺縁系が働きます。いわば動物的
 な脳の働きです。それに比べて「識別系」は自己コン
 トロールを行う,新皮質の脳,いわば人間の脳の働き
 です。識別系の触覚がきちんと働くことによって,
 原始系の暴走を押さえ,コントロールするのです。
 そのために手のひらや腕を摩って識別系を働かせる
 ように触覚への感覚入力を行います。

ここがポイント! 

 靴下をしつこく履かせるのではなく,信頼関係作り
 と識別系の触覚を高めることが効果を現す。

<参考文献>
・木村順著「育てにくい子にはわけがある」大月書店

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