眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

2017年に観た映画(オフシアター日本映画編)

2018-01-16 14:19:03 | 映画1年分の「ひとこと感想」2006~

昨年観た映画の「ひとこと感想」は「オフシアター日本映画編」から書くことにしました。たくさん上映されたのですが、私が観られたのは8本だけです。


『新地町の漁師たち』(監督:山田徹)

福島第一原発の事故の後、TVのニュースなどで、漁師の方たちと東電や国とのやりとりが報道され、私などでさえ大変だろうな・・・と思った。そのとき現地・現場ではどんなことが起きていたのか・・・の一端を、この映画で見せてもらったと思う。(県立大学の関係?の自主上映会で無料だった。広い会場は学生さんたちでほぼ満席で、挨拶のとき監督さんもそれを喜んでおられたのを思い出す。講演もあったのだけれど、時間がなくて聞けなかったのが残念)

☆『さとにきたらええやん』(監督・撮影:重江良樹 音楽:SHINGO★西成 2015)

こんな理念で、こんなやり方(年中無休・利用料無料)で、運営されている場所(「こどもの里」通称「さと」)が、西成に現実にあるのだということを初めて知り、驚きと感動で胸が詰まったドキュメンタリー映画。(その昔小さい子を抱えてアップアップの毎日だった自分のわずかな経験からも、こういう場所がどれほど必要とされているかは痛感していたけれど、実際には「まずあり得ない」と勝手に思い込んでいた・・・そもそも経営的に成り立つ筈がないという理由で) 
こどものための居場所(宿泊施設)というだけでなく、「西成」と言う場所、そこに住む人々への視点が鮮明で、「困っている人はいつでも受け入れ、対処方法を一緒に考えます」という姿勢がぶれない・・・ということが、観ているだけで伝わってくる。「知らなかったこと」を「丁寧に」教えてもらった映画の1本。

『オーバー・フェンス』(監督:山下敦弘 原作:佐藤泰志 2016)

チラシは覚えているのに、物語自体は全然思い出せない。覚えているのは、ラスト近く、蒼井優がひとりで踊るシーンを観ているのが苦痛だったこと。(キライな俳優さんじゃないのに、役柄の女性像が私の好みに合わなかったから・・・なのかなあ)
登場人物たちに共感できるような感性?が、今の自分にはもう無くなっているのかなあ・・・なんて思った記憶もかすかに残っている。(佐藤泰志の映画化作品では、最初に観た『海炭市叙景』が私は一番好きだと思う)

『淵に立つ』(監督・脚本・編集:深田晃司 2016 日本=フランス)

2時間くらいなのに、「終わらない映画」を観ている気分になった。
映像(色彩など)で人物の心情を鮮明に描きたい・・・という意図はわかっても、私の目には不自然さの方が目立って見えたりして、内容の深刻さとは別に、観ていること(視覚)自体にもちょっと疲れた。物語自体も、あそこまで偶然?が重なって(と私には見える)ああいうラストにまで至らないといけないのかなあ・・・とか、あそこまでしないと作り手は気が済まなかったのかなあ・・・などなど、作り手との感覚の違い??を強く感じた作品。ただ、キャストが皆適役・好演(というかそれ以上)で、違和感を感じながらも最後まで興味を持って観られたのは、そのことが大きかったのだと思う。


次の2本は、高知県立美術館春の定期上映会の「”巨匠が描いた明治” 映画上映会」(4本)の一部です。

『 婦系図』(総集編)(原作:泉鏡花 監督:マキノ正博 1942)

この時代の女優さんたち、特にこういう映画での山田五十鈴は本当に綺麗で見とれてしまう。古川緑波をちゃんと観たのも初めて。(覚えているのはそこまでで、物語については殆ど思い出せない(^^;)

『我輩は猫である』(原作:夏目漱石 監督:市川崑 1975)

原作小説がなぜか好きで、高校以来何度か読み直したけれど、この映画のキャストはその小説の中の人物として、全然違和感が無いのに驚いた。(演じている俳優さんたちは皆よく見知っている?人たちなのに・・・なんか不思議) 特に何も起きないし、特にどうこういう映画化でもない?のかもしれないけれど、何も考えずにのほほ~んと、2時間楽しく観ていられたのは、私にとっての「猫伝」の雰囲気そのままだったからかも(^^)。

『人生フルーツ』(監督:伏原健之 2016)

修一さん(建築家・90歳)と妻の英子さん(「手仕事が好き」・87歳)が、「妻は夫を立てて後をついていく」世代のご夫婦で、実際そういう人生を送られたらしいのに、深いところで(当然のように)「対等」だったことが透けて見えるようで、そのことが一番記憶に残っている。(映画自体とは関係ない個人的なことだけれど、同世代の私の義父母のことが映画の各所で思い出されて、余計に色々なことを考えさせられたドキュメンタリーだった)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/50478948.html

『日本と再生』(製作・監督:河合弘之 脚本・編集・監督補:拝身風太郎 2017)

諸外国が再生エネルギーを軌道に乗せようとしているのは、日本の福島原発事故を冷静に(距離をもって)「外」から見て、その意味を理解し、自分たちは将来的にどうするのかを、本当に真剣に考えたからなんだろな・・・とため息の出る思いだったのをはっきり覚えている。
日本の将来はさまざまな意味で危うくなって久しいのかもしれないけれど、私などの目には「原発」もその大きな要因の一つに見える。(外国に輸出するというニュースを見ると鳥肌が立つ。自国で事故が起きても満足に対処できないのに、外国に売ってどうするんだろ) 
自分たちのことしか考えていないように見える今の権力者層(というのが適切な言葉かどうかもよくわからないけど)と、それをどうにも出来ないまま時間だけが経っていく(ように見える)現状。何を望んでいるのか私にはヨクワカラナイ「国民」と呼ばれる多数の人々。そして・・・(その一人である)何も出来ない、しようとしない自分。そんな中で、こういうドキュメンタリーを見ると、少しだけ「希望」が感じられる気がするのだけれど・・・

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/50627929.html





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