ベネチア映画祭の席上、スタジオ・ジブリの社長さんだったかが、宮崎駿監督の引退の意向を発表したというニュースをTVで見て以来、やっぱりかあ・・・と、なんだか一人でシミジミしていた気がする。
そして9月6日、今度は本人の会見が報道された。 TV画面に映る「ハヤオおじさん」は晴れやかな笑顔で、「今回は本気です」「ぼくの長編アニメーションの時代は、これで終わったんです」なあんて言っていた。
翌日の新聞(朝日)には、「公式引退の辞」なる文章も載った。「2013・9・4」の日付だった。
おじさんが作品を創り出す過程、アイディアを出しそれを作品にまで仕上げることの大変さは、これまでに時々NHKの特別番組で見せてもらっっていた。
その際私が一番驚いたのは、この人は(「監督」であるより何より)文字通りの「アニメーター(絵描きさん)」なんだ・・・ということだった。慣れた調子で紙をパラパラさせながら、一枚一枚目を通し、線を描き加えていく。それは見ているだけでも、気の遠くなるような作業だった。
でも、おじさんは別にその作業自体については、特にどうこうとは言わなかったと思う。むしろ「アイディア」が生まれるまで、キャラクターがどういう個性の持ち主なのかが定まるまで、そんな苦労を語っていたような記憶がある。(もちろん私のことだから、甚だアヤシイ記憶だけれど。)
けれど一番最近の『風立ちぬ』の制作過程を撮した番組では、おじさんの言葉で一番耳についたのは、「あーメンドクサイ」だった。
メガネを外して、至近距離で絵を見ながら修正していく作業が、なんだかおじさんにとっての「膨大な雑用」、ほとんどある種の拷問?のように、私の眼には映った。
「それでもね、人間ていうのは、常に(どこかが)動いているものなんですよ。例えば髪の毛とかね。わざわざ動かさなくてもいいように思うかもしれないけど、それが“気配”、“佇まい”を変えるんです。やっぱり違うんですよ。こうして髪が動くのと動かないのでは」などなど。
そして、数十万枚(違ってるかも?)の絵について、作業は続いていくのだ。
おじさんは「引退」会見では、「絵を描く集中力が落ちた。ソレは加齢によるもので、加齢によって起こることは仕方がない」と、まるで『風立ちぬ』の主人公二郎のように、理路整然?と答えていた
でも、たかがTVで見ていただけでも、おじさんにとって『風立ちぬ』という作品が、内容的にも、「絵」自体としても、おじさんに難題を突きつけ、否応ナシの葛藤を強いるものだっただろうということは、想像がつく。その上さらに「加齢」が、おじさんを苦しめただろうな・・・ということも。
「長編アニメーションはもう作りません。ジブリのプログラムからも、外してもらうことにしました。ぼくは自由です」
・・・良かったあ。ほんとに良かった。私なんかでもそう思うくらい、おじさんは「自由」という言葉を、ちょっとだけ胸を張って(格好をつけて?)、照れくさそうに、でもとても嬉しそうに口にしたのだ。
『千と千尋の神隠し』を観た幼い女の子が、アトリエの玄関先でおじさんに会って、言った言葉を思い出す。
「みやざきはやおさん、せんとちひろのかみかくし、つくってくれて、どーもありがとう」
私もあのくらいの年頃の女の子になって、ありがとうを言いたいな。あの女の子のように、ゆっくりペコリとお辞儀もして。(おじさんは本当に嬉しそうだったから(^^)。)
以前にもこのブログで書いたけれど、私は「宮崎駿監督」のアニメーションは、元々は相性が良くないというか、妙な違和感もあって、あまり好きじゃあなかった。それなのに、気づいてみたらいつの間にか、勝手に「おじさん」などと呼んでいる。
非常に美しい絵とダイナミックな動き。耳に心地良い音楽。どきどきわくわく引き込まれてしまうキャラクターと物語。内容がイマイチよくわからなかったりしても、ソンナモノ問題じゃなくなるくらい、それらのアニメーションは、確かに面白かった。
でも、私にとって「おじさん」の作品が特別なのは、もっと他にも理由があったんだと、今回改めて気づかせられた。
子どもに伝えたかったことは?と尋ねられて、おじさんはこう答える。
「この世は生きるに値するという思い。それは今でも変わらない」
“生きる希望”を感じさせてくれる映画が好き・・・と、私はいつも思ってきた。(あなたには、それが他の人より必要だと、若い友人から言われたのも思い出す。)
おじさんの作品は、解ってもワカラナクても、おじさんが何を言いたいのかなんて考えもせずに、ただ呆然と観ていた気がする。
「メッセージを込めて作ることは出来ない。自分ではつかまえられないものを描いている。つかまえられるものは、ロクなものではない」
なんだかこれで、一観客の私も、納得がいった気がする。
宮崎駿監督へ。長い間、本当にお疲れさまでした。そして何より
「ありがとうございました!!!!!」
以前このブログで書いたハヤオおじさん関係の記事を、自分用にまとめて貼っておきます。
“ハヤオおじさんのアトリエ” ・・・・・ 『崖の上のポニョ』他
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7e710b7a1d51f6ad524606b58345399c
“ハヤオおじさんと子どもの本”
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/7a2b92f3fec8f39ee61131c767855dc2
“オドロキたい!トキメキた~い♪” ・・・・・ 『コクリコ坂から』
http://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/cd5856a6f5856e30d1a217f86bfe662c
『風立ちぬ』、機会があれば、どうぞご覧になって下さい。
(あ、でも、もの凄いメロドラマ?でもあるので、そこははにわさんがOKかどうか、ちょっと不安も・・・(^^;)
ああいう大正から昭和にかけての物語を、若い人たちはどう思うのかな~なんて思ってたんですが
うちの若い住人2人は、多分それぞれ違う理由から観に行って
各人各様に、感じるトコロがあったようです。
(おたくのお嬢さんは何て言われたかな・・・?(^^)。)
荒井由美の「ひこうき雲」は、大学に入ったばかりの頃
確かはにわさんのLPで初めて聞かせてもらったんだと思います。
エンディングで流れるんですが、本当になんとも言えない気持ちになって・・・
色々な意味で、私にとっては「懐かしい」映画でした。