今回(2024)のオフシアター映画は、わたしには感想が書きにくい(ほんとは書けない?)作品が多かったんだと思いました。
なんだか勝手な文句ばっかり言ってるようで、書いていても気分良くなかった。もっとさらっと「ひとこと」だけのメモにすれば良かった… などと、書き終わってからぼやいてます。
(でも考え始めると、書き始めると、ウソ(きれいごと)書いてもしょうがない…と思ってしまう自分。面倒だな~と思われたら、どうぞ読まずにスルーなさって下さい)
『燃えあがる女性記者たち』(監督:リントゥー・トーマス スシュミト・ゴーシュ 2021 インド)
「不可触民」と呼ばれる、それも「女性」たちが、新聞社「カバル・ラハリヤ(ニュースの波)」を作り、そこで活動(仕事)しているということが、わたしにとっては本当に驚きだった。そういう苦しい環境にいても(というかそういう環境だからこそ)動き出せる女性たちが現実にいるのだということが、ほとんど目からウロコだった自分が恥ずかしい。
現実はこの映画より、ずっと厳しいものなのだろうと思うけれど。(このドキュメンタリーの撮影スタッフたちも大変だったはず。命が危ういというレベルで)
『蟻の王』(監督・脚本:ジャンニ・アメリオ 2022 イタリア)
なぜかわからないけれど、この映画の主人公である芸術家の男性像が、よほど自分は苦手だったのだろう。(インテリの身勝手みたいに見えちゃう?雰囲気のせいかなあ。物語は既にオボロ~なのに)
彼を崇拝し影響を受けた若い画家については、「同性愛の治療」の目的で所謂「電気ショック」を何度も受けている場面など、本当に痛ましかった。「一体いつの時代の話?」と思うけれど、1960年代のイタリアの実話に基づいているとのこと。そんな頃でもまだそういうことが、それも「治療」として行われていたということに、わたしなどは本気で腹が立つ。(「治療すべきもの」とされていること自体間違っているのだけれど、50年代の「イミテーション・ゲーム」の主人公(イギリス)も、ムチャクチャな「薬物治療」を受けていた) 若い画家の初々しさと一途さ。演じたレオナルド・マルテーゼの横顔が、今も記憶に残っているので余計に。
『ブルーバック あの海を見ていた』(監督・脚本:ロバート・コノリー 原作・脚本協力:ティム・ウィントン「ブルーバック」 2022 オーストラリア)
この映画の主役は西オーストラリアの美しい海と、大きいものは体調1.5mにもなるという魚グルーパー(主人公の少女がブルーバックと名付ける)じゃないかと。魚は「作り物なのかな~ でも、ほんとに生きてるみたい」な仕上がりで、それもすごい!
映画を観ている間、自分も素潜りで海中を歩いたり、踊ったり?しているような気がしたくらい、海が自然な美しさで、なんだか物語のことはアタマに入らなかった気がする(^^)
(ミア・ワシコウスカを初めていいなと思った。この人は所謂ヒロイン風?の役より、こっちの方が自然で、しかも美しく見える気がして)
『探偵マーロウ』(監督:ニール・ジョーダン 2022 アメリカ=アイルランド=フランス)
原作は「黒い瞳のブロンド」。「ロング・グッドバイ」の続編として本家より公認とか。わたしとしては、そちらを読んでみたいと思った。(きっと面白いのだと思う。映画の方は、なぜこれを作ったのかわからなかったけど…って、ゴメンね(^^;)
『あしたの少女』(監督:チョン・ジュリ 2022 韓国)
英語題は”Next Sohee"(次のソヒ) こういう労働環境で頑張らざるを得ない「ソヒ」(主人公の少女の名)は、たくさんいるのだという意味かな…と。
現場実習生としてコールセンターで働き始めた高校生が、3か月後には最悪の決断をする。でもそれは「若い人にはよくあること」のように扱われ、もみ消されようとする…
タイトルも、刑事の役で出演するペ・ドゥナも、同じ作り手の『私の少女」を意識してのことかもしれないけれど、若い人の苦しさを「本気で取り上げてなんとかする」ことができないのは、今回も変わらないのか…なんて、ちょっと思ってしまった。状況は日本も同じようなものだと思うから、余計に辛く感じたんだと思う。(ぺ・ドゥナのパンチにはビックリした。最後のソヒのダンス映像、その弾けるような笑顔は嬉しい驚きだったけれど… なんとも言えない気持ちが残った映画)
『アダマン号に乗って』(監督・撮影:二コラ・フィリベール 2023 フランス=日本)
精神障碍者と呼ばれる人々を支援する活動について、よく知らない、あまり考えたことがない、という人にとっては、ちょっとわかりにくいドキュメンタリーかも。(といっても、自分もあまり知らないんだけど)
「説明は最小限にして、とにかく活動の現状を見てもらう」という作り手の姿勢と、「映してよい(本人の許可が取れている)人・物」が限定されるとか、撮影に際して色々あるだろう現実的な制約が、この活動の全貌をわかりづらくしているように、わたしには見えたから。
それでも、こういう活動が(当然お金が掛けられて)なされているということ、それ自体はとても羨ましく感じられた。(わたしは自分がこういう活動の「利用者」側のように、今も感じるのだと思う。そういう時代も結構長かったので)
『ダンサー イン Paris 』(監督・共同脚本:セドリック・クラピッシュ 2022 フランス=ベルギー)
バレエを心から愛している人が作った映画だと思った。ヒロインがケガで苦しんでいても、雰囲気は明るく健康的で、「前向きに生きていこう」というメッセージを(それも穏やかに優しく)感じさせる映画。(観ると、きっとバレエが好きになります(^^))
https://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/71b6a3707bc5fe3ef853cc6642985573
『親愛なる同志たちへ』(監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー 2020 ロシア)
「冷戦下のソ連で30年間隠蔽された民衆弾圧事件を題材に…」という作品で、その内容というのは、共産主義国家ではあり得ないはずの「スト」鎮静化のために、当時のフルシチョフ政権側は「約5000人のデモ隊や市民を無差別に銃撃」し、その後の情報遮断を強硬な手段で実行した…というもの(らしい)
映画では、「熱心な共産党員として長らく国家に忠誠を誓ってきた」女性主人公が、祖国に裏切られ、しかも騒動の間に一人娘が行方不明になり、情報遮断の中を探し回る…という物語が描かれる。
こういう映画の感想は、わたしには書けないのだと思う。(観ている間は、少しでも笑える瞬間を探していただけ?という気がしてくるくらい)
「物事は規則や論理?に従っては進まないし、当然すべてに《裏》の事情がある」「人は欲得ずくか、たまに個人的な感情で動くだけ」などなど… そんなことを今更映画で見せられても… (って、歴史に興味が持てなくなってる?だけなのかもしれないけど)
『ハワーズ・エンド』(監督:ジェームズ・アイボリー 原作:E.M.フォースター 1992 イギリス=日本)
昔この映画を観たときには、もっと素直に映像の美しさを楽しんでいたのかなあ。今回は、イギリスの田園風景は美しいけれど、人間社会は美しくないんだなあ…というような感慨が残った。(日本も戦前は階級社会だったと思うけれど、自分は「身分」が問題になる社会が、この年になってもやっぱり許容できないんだろうか。財力による格差の方がまだマシ…といった気分になってきて困った)
『ブルックリンでオペラを』(監督・脚本:レベッカ・ミラー 2023 アメリカ)
主演の男優さん(ピーター・ディンクレイジ)の落ち着いた風情、自分(と自分の人生?)についての自信の厚み?が魅力的だった。
http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58696057.html
『ぼくは君たちを憎まないことにした』(監督・脚本:キリアン・リートホーフ 2022 ドイツ=フランス=ベルギー)
「2015年の、所謂《パリ同時多発テロ事件》で妻を失ったジャーナリストが、事件発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラーを映画化」とのこと。生後17か月の息子と残された彼は何を思い、どう行動したか…
個人的な感想だけれど… 怒りや悲しみという自分の気持ちを最優先する主人公を見ながら、こういう事件をニュースとして知るたびいつも感じた、「当事者じゃない自分には分からないことなんだな」ということを、再確認させられた映画だったと思う。
(映画を観ながら疑問に感じた細かいことがいくつもあったらしく、原作をたまたま見つけて読んだ後の短いメモが残っていたので、備忘用に貼っておきます。映画の感想にはなっていません(^^;)
http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58735887.html
『戦争と女の顔』(監督:カンテミール・バラ―ゴフ 原案:スベトラーナ・アレクシエービチ 2019 ロシア)
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」を原案に作られた映画とのこと。映画を観ている間、わたしはむしろその原案になった本の方を読む方が、穏やかな気持ちで「戦争に参加した女性たち」のことを知ることができるんじゃないかと、考えていたのを思い出す。(自分が以前に読んでとても勉強になった本なので)
軍事行動に参加した女性兵士の戦後の生活が、どれほど過酷なものだったか、主演の若い女性二人を見ているだけで、もう胸が痛くなる。わたしなどは、こういう痛みからは、「何かを学ぶ」ことなど出来ないのかもしれない。もちろん、映画は「知る」「学ぶ」ために観るものじゃあないのだけれど。
『本日公休』(監督・脚本:フー・ティエンユー 2023 台湾)
「台中の街角にある昔ながらの理髪店」というのが既にノスタルジーを感じさせる。店主の女性理髪師とさまざまなお客とのアレコレ、家族間の問題などを、ごくありふれたこと、いつまでも変わらない日常のように描きながら、その実、時は流れ、人は老い、時代は変わっていくのだと、穏やかに、時にユーモアも交えて語っている映画だと思った。(台湾の映画はなんとなく好き。ごく自然に、こういう雰囲気の中で暮らしたい…という気持ちにさせられる作品を何本も観た気がする。こういう懐かしさって、何なんだろう)
(1) 7本 (2) 13本 オフシアター 計20本
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