kakaaの徒然な日記

日記がわりにときどき、ふと思いついたことをつぶやきます。

明日に向けて(1927)ゆがめられた放射線防護を問うーシリーズ国際放射線防護委員会(ICRP)の考察

2021-01-16 07:03:12 | 転載記事

明日に向けて(1927)ゆがめられた放射線防護を問うーシリーズ国際放射線防護委員会(ICRP)の考察1

明日に向けて(1927)ゆがめられた放射線防護を問うーシリーズ国際放射線防護委員会(ICRP)の考察1

2020年11月18日 12時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20201118 12:30)

● 放射線被曝の危険性についての見識を深めなくては

福島原発事故から10年を迎えるにあたり、あらためてここで放射線被曝に関する考察を深めたいと思います。
なぜそうなのかというと、この10年間、この国の民衆運動の中で脱原発、反原発の機運は大きく育ってきましたが、放射線防護の面でもっと見識を広げなければと思うからです。
端的に言って、脱原発を唱える人々の中で、被曝影響に対する見方はさまざまですが、僕はもっと危険性を共有することが大事だと思います。

とくに僕は、東京を含む東日本の多くのところが、残念ながら激しく被曝していて、今でも危険性が高いと考えていますが「それは考え過ぎだ」と思われる方も多い。
また十年前の福島原発事故の時も、いやゆる革新政党の中で、被曝から身を守るための避難を呼びかけたところはありませんでしたし、いまも避難を勧める論調は少ないです。
そもそもあのとき政権は民主党で、官房長官だった枝野氏は「ただちに健康に被害はない」としか述べてくれませんでした。避難指示は原発から20キロ程度のところにわずかに出されただけでした。

このことが捉え返されていない。
しかし実際には多くの方が、原発の近く、いや東日本から、日本から飛び出しました。果敢な避難の決行でした。僕は当時もいまもこの行動を熱烈に支持しているし、心からの感謝の念を持っています。
しかしそれはもっと広がらなくてはいけない。では壁を破るためにはどうしたら良いのか。放射線被曝の影響が幾重にもわたって過小評価されてきていることをしっかりとつかみ、広げることが大事だと思います。


福島原発事故による被曝 早川由紀夫さんの労作


● 被曝影響の過小評価を捉え返すために

この間、そのために幾つかのことに着手してきました。一つは文部科学省が出版した『放射線副読本』を読み解くことです。
この本は「放射線」についての本とされながら、被曝の危険性がまったく書かれていません。書かないことで危険性を無視して、人々の警戒感を薄めようとしています。
そんなものが全国の小学校・中学校に配られてしまっているわけですが、それでは逆手に取ろうと「読み解きBOOK」を作り、各地で読み会を行っています。

以下から無料ダウンロードできるのでぜひゲットしてください。また各地で読み会を行っていただければと思います。
https://nyoki2pj.com/lp/info_yomitokibook/

もう一つ、力を注いできたのは、被曝の遺伝的影響の追究です。
僕は京都「被爆二世三世の会」に参加していて、仲間たちと「被爆二世三世健康調査アンケート」を行っています。私たちの実感では遺伝的影響は確実にある!
その点で二世は被爆者の体験を語り継ぐだけの存在ではなく、まさに被爆の当事者として、核兵器の非人道性、放射線被曝の危険性を告発していく必要があります。

ぜひこれにも参加していただきたいです。以下の現在進行形のアンケート用紙のアドレスを記します。
被爆二世三世でない方もぜひご覧になってください!
http://aogiri2-3.jp/chousa/2020chosa.pdf


● 国際放射線防護委員会(ICRP)について学ぶ意義

今回から始めるシリーズは、『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』や「被爆二世三世健康調査アンケート」とリンクしつつ、さらに歴史的理論的考察を深めるものです。
そのために放射線防護の歴史に立ち返り、防護の国際的スタンダードを作ってきた国際放射線防護委員会(ICRP)の考察を深めたいと思います。
ICRPの成り立ちそのものが原爆の開発・製造・投下と密接に絡まっている。来年1月22日に核兵器禁止条約が発効し、核兵器を持つことそのものが犯罪であるという国際世論が高まることも踏まえつつ、ぜひ今この点についての認識を深めたい。

今回、そのための絶好の参考書としてあげたいのは『放射線被曝の歴史』(中川保雄著 明石書店)です。1991年に公刊されていますが、福島原発事故後の2011年10月に増補版が出されました。
このシリーズではこの書をみなさんと読み解いていきたいと思うのですが、本書の問題意識は「1 放射線被害の歴史から未来への教訓を-序にかえて」によく表されています。

 「放射能の恐さや放射線被曝の危険性に関する公的なあるいは国際的な評価は、核兵器を開発し、それを使用し、その技術を原発に拡張した人びとと、それらに協力してきた人びとによって築き上げられてきたのである」(『同書』p11)
 「被害をどうみるかが問題とされる事柄を、加害した側が一方的に評価するようなことが、しかもそれが科学的とされるようなことがまかり通ってもよいのであろうか」(『同書』p11)
 「一般には通用しないようなやり方で、放射線被曝の危険性とそれによる被害を隠し、あるいはそれらをきわめて過小に評価することによって、原子力開発は進められてきたのである」(『同書』p12)

まったく同感です。とくにこの国はアメリカに原爆を落とされましたが、真っ先に被害調査を行ったのは日本陸軍でした。彼らは被害を克明に記録するやただちに英訳し、アメリカ軍が占領のために上陸するとただちに差し出したのでした。訴追を免れるためです。
それ以降も、長年にわたって「唯一の被爆国」だとかいいながら、アメリカの核戦略に積極的に加担してきたのが日本政府です。だから核兵器禁止条約も批准しようとしない。
つまり被曝影響の評価はアメリカとそれに追従する日本によって、政治的軍事的に歪められ、「一般には通用しないようなやり方で」なされてきたのです。あまりにひどい。この歴史をひっくり返さないといけない。

福島原発事故から10年を前に、ともに「ゆがめられた放射線防護」の読み解きを進めましょう。

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