貴州省畢節市七星関区田坎郷茨竹村で4名の兄弟姉妹が、農薬を飲んで自殺した件は、中国中央TVのニュース専門チャンネルや「新聞1+1」と云う番組でも報道された事もあり、大きな反響を呼んでいる様です。2012年11月には、やはり、同じこの畢節市で家出してゴミ箱の中で生活していた子供5名が、寒いのでゴミ箱の中で暖を取っていて二酸化酸素中毒で死亡すると云う事件があった地域だけに、三年前の悲劇的な事件も記憶に新しい内に、三年と間を置かずに、またも、留守児童4名が服毒自殺すると云う大変に痛ましい事件が再び起きた事もあり、余計に注目、関心を浴びている様です。12日には李首相も、何故このような出来事が、再度起きたのかその原因を明らかにする様に求めると共に、二度とこのような事が起きない様に指示を出した様です。
中国の主要メディアも、10日に、第一報を簡単に報じた後、各メディアの記者等も現地入りして、自殺した家庭の様子等も具体的に報道し始めた様です。また、地元七星関区の共産党宣伝部の担当者の話も中国のメディアに載る様になり、自殺した児童の家庭環境や児童一家と村人の関係等が具体的に明らかになりつつある様です。
新京報(電子版)等に拠れば、地元七星関区の共産党宣伝部の担当者は、子供らが農薬を飲んで自殺したのは確かだが、自殺の原因は貧しさとは考えられないと話したとの事です。その理由として、銀行口座には約3400元程のお金があった事や、今年の4月に父親が700元程子供に仕送りして来た事を挙げています。また、家には食糧(注:主にトウモロコシ)が、1000斤(一斤は500グラム)あった事や、腊肉が数十斤あった事を挙げています。また、子供たちが住んでいた家は一部三階建で、親が出稼ぎで蓄財したお金を利用して建てた物で、その価値は20万元相当とみられる等の点を考慮すると子供達は、貧しさが理由で自殺したとは考え難いと話して居るとの事です。特に、一部のメディアが、子供達は毎日トウモロコシだけしか食べていなかった等の報道をして、さも貧しいが故に自殺した様に報道した事には同意しかねると語ったとの事です。
この家族は、「農村最低生活保障」の対象となり、2012年からは年四回保護費も受け取っていた上、父親からも仕送りがあったので、食うには困らなかったハズだと党宣伝部関係者は語っている様です。また、この家庭は、村でも中程度の生活水準で、特に貧しいとは云えないとも報じられています。
事件直後とは違って、今では、子供達が自殺した理由は、経済的な理由ではなく、彼らの家庭環境を原因として挙げる声が多い様です。夫婦の間では喧嘩が絶えなかった事、2014年に母親は夫と大喧嘩をした後、家出してしまったとも。その後は母親とは連絡が途絶えたとの事。また、携帯が壊れたりして、最近は、父親とは電話連絡も出来ない状態だったとも報じられています。(注:自殺した後父親には直ぐに連絡が取れず、2日程してやっと連絡が取れたとの事、母親は別の男性と暮らしていたとの事で、12日にやっと連絡が付いた様です)。子供達は、他の子供達と遊ぶ事も殆んどなく、特に、5月に学校に行かなくなった後は、家に閉じこもり切りの状態だったと党宣伝部の責任者は語っている様です。特に、一番年かさの子供は、父親から、度々暴力を振るわれていた様だとの報道も流れています。
13日付の南方都市報(電子版)は、一番上の子供が書いたと思われる遺書が見つかったとも報じると共に、その内容についても触れています。但し、実際に子供が書いたと云われる遺書そのものは公表されてはいない様で、その遺書の内容のみが報道されています。
12日に、李克強首相が原因の究明と再発の防止に関して、直接指示を出した事もあり、早速地元政府当局の関係者である七星関区副区長、郷教育局長、茨竹村主任(注:村の党の書記)、田坎小の校長、この家族の留守児童を担当していた教師等は停職、解職等の処分を受け取調べを受けている様です。今後さらに経過が明らかになった時点で、関係者は再度処分されるだろうとの事。
貴州省畢節市では、2012年11月5名の留守児童がゴミ箱で死亡した以外にも、2013年には留守児童5名が、下校途中に「農用車」に追突され死亡すると云う事故もあったそうです。また、今年5月には7名の女児童が、先生から猥褻行為を受けていたと云う事件が発覚したばかりで、その被害者の大半はやはり留守児童だったとの事。被害者は7名と言われているものの、実際は十数名に上るとも云われ、何故に貴州省畢節市では、留守児童をめぐる事件がこうも起きるか疑問の声も上がっている様です。
ネットで調べると茨竹村は田坎彝族郷の東南部に位置しており、人口は約2000人で、落花生、栗等が主要栽培農作物との事。彝族、苗族が多いとの事。
自殺した4名の子供が暮らしていた家。一部3階建て。一番上の階で子供らは生活していたとの事。新京報より
家の中に在ったトウモロコシ。海抜も高い上、カルスト地形で水の便も悪いこともあり、この地域では米は獲れない様です。トウモロコシは「玉米麺」(トウモロコシ麺)として食べる様です。また、玉米飯(細かい粒にしたトウモロコシと米を一緒に炊いた物)として食べることもある様です。トウモロコシご飯は貴州では割合に良く食べられており、私も貴州では何度か食べた事があります。豚小屋もあり、子供達は2頭の豚世話もしていたとの事です。貴州などでも春節には、必ず豚を屠り、その一部で腊肉(燻製)を造り、次の春節まで一年間食べ続けます。一部のメディアの報道では、今年春節に父親が造った腊肉が十数斤在ったとも報じています。
倍可親のHPより
子供達は、二階部分を居間として使って居た様で、ここでTV等を見ていた様です。三階では、ノートなどを焼いた跡も見つかったとの事。
倍可親のHPより
子供達は、自殺する直前の晩御飯に、玉米飯(トウモロコシ入りご飯)やスープや一品のオカズも食べたそうですが、これは子供が自殺する直前に食べた特別の、この世で最後夕飯だったとも報道しています。子供たちが学校に行かなくなった後、村関係者や学校関係者、担任等が、子供らを何度か訪問したものの、子供らは会おうとしなかったとも報じられています。
子供達は家から2キロ程の距離にある小学校に通っていたとの事です。自殺した子供達は、成績も特に悪いと云う様な状態ではなかったとの事。「超生」の子供3名に付いては、親が「社会扶養費」約9900元を払 い、戸籍も正式に取り、一番下の5歳の子は村の幼稚園に通っていたそうです。(注:中国では一人りっ子政策ですから、それを超えて子供を生んだ場合は収入に応じて「社会扶養費」を払わなければなりません。尚、夫婦は漢族)。一番下の子供は、幼稚園に通っていたそうですが、私としては、幼稚園ではなく、所謂「学前班」の様な気がしますが、、、、。
そもそも貴州省の農村の郷レベルや村に幼稚園があるのはかなりまれです。ましてや、ここは政府に認定された貧困地区ですので、幼稚園があるとは、私としては信じ難い思いです。中国では小学校から義務教育ですから、幼稚園は当然学費も徴収します。もし、この地区に幼稚園があったすれば、一体幾ら位いの学費を徴収していたか、是非知りたいところです。某新聞に拠れば、畢節市のある村の「学前班」では、一年で600元から700元程度の学費を徴収しているとの事です。その村の「学前班」には、50数名の子供が在籍しているそうですが、先生は一人との事。子供達が通っていた学校には、中国の貧困地区で、現在実施されている無料の「午餐」も在ったそうです。
2012年に中毒死した児童の中には、確か戸籍が無いため学校から入学を許可されなかった子供がいた様な記憶があります。その様な事もあり、新聞ではこの家庭の子供は全員戸籍があったと報じたのかもしれません。