「松茸与日本人」と題して中国語で検索すると、「日本人が百年にも亘って何故マツタケを珍重するか、ようやく分かった」「何故日本人はこの様にマツタケに夢中になるのか」「日本人は何故マツタケを好んで食べるのか?その秘密 とは」「何故日本人の癌に拠る死亡率が世界で一番低いのか、その秘密は松茸」と題して中国人が書いたブログや中国語サイトにも松茸と原子爆弾に関しての記事が結構受けられます。
このブログでも何度か触れた事もあるのですが、それらの記事やブログの内容は大同小異で、要するに「広島にアメリカが原子爆弾を投下した後には、すべての物が破壊され焦土と化したが、その中で唯一生き残った生物が松茸である」「松茸には強靭な生命力と繁殖力がある」「松茸には放射能を防ぐ作用がある」「松茸には抗癌作用がある」「日本人は癌による死亡率は世界中で一番低い国であるが、それは抗がん作用のある松茸を良く食べるから」と云った根拠の無い記事が散見されます。
以前中国人の知り合いと大理市剣川県に行った際にも、矢張り地元の中国人から広島に投下された原子爆弾と松茸の話を聞かされました。そこでも松茸が採れるそうですが、殆どが日本へ輸出されるとの事でした。以前にも、何度か同じ様な話を中国人から聞いた事もありますので、「抗がん作用がある」「放射能を防ぐ」と云う様な話は、一部の中国人にはそれなりに信じられている様です。
私の微信の朋友圏にも日本に3年程住んでいた事のある中国人が、つい最近「日本人がどうしてこの様に松茸を追い求めるのか、その秘密とは」題した記事を転載しましたが内容は略同じです。この記事の中では「全ての菌類も死滅したが、その中で唯一生き残り、繁殖したもの。それが松茸である。」「それで松茸は戦後日本人の注目を浴び、日本政府は巨額の研究開発費と多くの科学者に松茸の研究をさせた処、松茸に放射能を防ぐ作用をある事発見した」等その内容がより荒唐無稽になっている様です。
私は普通は、微信の書き込み等にはコメントはしないのですが、今回は本当に珍しい事ですが反論と云うかその様な説は根拠がない事、日本でその様な説を述べる人は居ない旨のコメントをしました。
静岡大学名誉教授水野卓氏は「松茸の抗癌作用の奇跡」と云う本で、石川久雄教授は「松茸の抗癌作用の研究」と云う著作の中で、それぞれ松茸には抗癌作用がある事を述べているとの中国での記述もあります。がこれらの中で述べられているキノコは、姫松茸やマイタケやアガリスクであり松茸ではありません。
googleで彼らの名前を入れて検索すると「世界的な潮流となった補完代替医療の新しい方向性を示唆―。同時に、その一翼を担うAHCCのがん治療における意義を明らかにする。」
癌患者における AHCC の使用経験 上山 泰男 関西医科大学 外科 教授 の著作より「Active Hexose Correlated Compound(AHCC)は,担子菌培養抽出物である。担子菌類由来の物質には,医薬品としてレンチナン,クレスチンがある。いわゆる,健康食品として,アガリクス・ ブラゼイ,マイタケ,などが利用されている。」
「AHCCは、シイタケを筆頭とした担子菌(キノコ類)から得られた「植物性多糖類」で、その菌糸体を大型タンクで長期培養して得られる抽出物です。アガリクスというキノコが癌の治療や予防に効果が高いとして、近年アガリクスを使用した健康サプリメントなどが数多く販売されています」「数あるアガリクスの中でも最高級品と称されているのが、ヒメマツタケという種類のキノコで正式名称をアガリクスブラゼイムリルと言います。」等の記述はありますが、松茸が癌に効くとの研究成果は見当たりません。
中国語サイトには「中国産の松茸の70%は日本へ輸出されるが、特に雲南省の香格里拉産の松茸の90%は日本に輸出されており、この様に抗癌作用があり、免疫力を高める効果もある松茸が国外に輸出される事は、わが国にとって大変な損失である」等と云う様な記事もあります。
意図的に松茸には抗癌作用がある等と縷々説明して松茸の購入を促すサイトも結構多くある様です。とどのつまりは松茸には「抗癌作用がある」「放射能を防ぐ効果がある」「免疫力を高める」「腫瘍にも効く」等と余り根拠の無い話を流布して、要するに松茸の購入をあおっている様な気がします。
大理市下関の農貿市場で売られている松茸。一斤(500g)150元との事。
昆明市の農貿市場で見かけた松茸。昆明市は一キロ単位で計算します。6月でしたので一キロ300元との事でした。