え~マイガールで皆さんが感動したところでupしにくいなと思いながら・・・
ではBGMは嵐の『Snowflake』でどうぞ
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妄想ドラマ 『Snowflake』 (7)
1月の後半から雪が立て続けに降った。
いつもは数日で解けてしまう雪もなかなか消えず、昼間緩んでは夜に凍結する状態を繰り返していた。
2月半ばの土曜の午後、玄関先で悲鳴のようなものが聞こえ、悟が2階の窓から見ると、
栗原美冬が手に付いた雪をはらい、バッグを拾い上げていた。
約束の時間にはまだ早い。
ドアを開けて悟が
「転んだ?」と聞くと
「滑ったの。またかっこ悪いとこ見られちゃった。ほら」
と言って振り向いて見せた。
コートのお尻のところが溶けかかった雪と泥で汚れていた。
それから二人で笑い、悟は美冬を家の中へ招き入れた。
「お邪魔します。ちょっと早くついちゃって。おうちの方は?」
と聞かれ、悟は一瞬ためらってから答えた。
「両親は事故で亡くなったんで今は一人暮らし」
「えっ、いつ?」
「12月」
「何も知らずにごめんなさい。あの・・・」
思いもよらないことに慰めの言葉も出てこない。
なんと言ってよいかわからず、悲しげな目で悟を見つめる美冬に悟が助け舟を出した。
「大丈夫だから。もう一人にも慣れたし、俺って料理の才能あることもわかったしね」
「自分でご飯作ってるの?」
「たまにだけどね。カレーはけっこういけるよ。一回作れば3日は食える」
悟の明るい声に美冬はホッとした。
真新しい仏壇に手をあわせてから、ダイニングテーブルで悟が入れてくれた
インスタントコーヒーを飲んだ。
美冬が訪れたのは4月から悟の絵をギャラリーに飾るための、具体的な打ち合わせをするためだった。
一通りの説明が終わると、美冬は悟のほかの作品を見たがった。
「見せられるようなものはそんなにないんだ。昔の絵は俺が見ても下手だし」
「昔って若造がなに言ってんの。悟君はまだ高校生でしょ」
「そうだな。でも美冬さんだってまだ若いくせに」
「そうね、まだ駆け出しのギャラリストです。だから知りたいの、人がどうやって画家になっていくのかね。
悟君がこの絵を描くまでの成長過程に興味があるから、小さい頃からの絵も見てみたいの」
「俺、画家になんてならないよ」
「でも絵はずっと描き続けるでしょ?」
「わからない」
悟は美大へ行けばこの先4年間は絵を描いていられると漠然と思っていたが、
その先のことは考えていなかった。
一瞬にして未来が無くなった両親の人生を思うと、あまり先のことを考えても仕方がない気がした。
リビングに出しておいた中学時代からの絵を美冬に見せた。
美冬は悟が中学生の時に描いた水彩画や高校の美術部に入って描いた油絵など、
作品として完成させた8点を黙って丁寧に見たあと言った。
「他にはないの?デッサンとか、ただのスケッチとかでもいいんだけど」
「たくさんあるけど、落書きみたいなもんだよ」
「いいから見せて」
美冬の真剣な口調に押されて、自分の部屋に取りに行こうとすると、
彼女もついて来た。
悟の部屋は美冬が思ったより広かった。
昔は二部屋に仕切って姉と半分ずつ使っていたが、姉の結婚後仕切りを
外して絵を描くスペースに当てていた。
美冬は描きかけの絵に息を呑んだ。
ダイナミックな受賞作とは一転して、驚くほど細密に描かれた猛禽類と思われる鋭いくちばしの鳥が、
切り裂かれた明るい光の奥の闇からこちらを見つめていた。
澄んだ瞳が悟に似ているような気がした。
「意外だった?俺こういう細かいのをちまちま描くのも好きなんだ」
壁際に並べられたカラーボックスに、スケッチブックが無造作に重ねられていた。
美術部で描いたらしいデッサンやスケッチに混じって、もっと前に描かれた
人物画や静物画もあった。
デフォルメされていたり、驚くほど細密に描写してあったり時期によって
描かれる興味の対象も違っていて面白い。
一番古いものは小学生の時の絵だったが、その立体の捉え方の的確さに舌を巻いた。
オレンジ色の表紙のスケッチブックには何枚も、魚が図鑑のように細かいところまで鮮明に描かれていた。
「これいつごろ描いたの?」
「小5の夏休みに親父がスケッチブック買ってくれて、その時」
「はっきり覚えているのね」
「親父が好きだったんだ釣り」
「それで魚の絵なんだ」
悟はきっと父親のことが大好きだったんだろうと美冬は思った。
「もっと前のはないの?」
「一枚もない。この家に引っ越す時に全部捨てたんだ」
「そう、残念ねぇ。だって急にこんなに描けるわけ無いもの。小さい時から絵は好きだったんでしょ?」
そう聞くと、悟が急に背中を向けた。
「親父が悟は才能あるって喜ぶからさ・・・親ばかってやつ?」
明るく言おうと思ったのに、声は途中で途切れ、最後は少し声が震えた。
美冬が何も言わず、ためらいがちに悟の背中に手を触れた。
突然悟の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
我慢しようとトレーナーの袖で何度拭っても、涙は後から後から溢れてきて
やがて嗚咽となり、悟はこらえようとするのを諦めて心のままに任せて泣き続けた。
両親が亡くなって、初めて流した涙だった。
-------------つづく----------
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高校生のままでしたね
妄想が膨らんでなかなか進みません。
悟の部屋とか絵とかね。健太くんの部屋の雰囲気も思い出したりして
寄り道も多い
みなさんも好きでしょ、妄想
次回こそ成長させる!!
ではまた
ではBGMは嵐の『Snowflake』でどうぞ

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妄想ドラマ 『Snowflake』 (7)
1月の後半から雪が立て続けに降った。
いつもは数日で解けてしまう雪もなかなか消えず、昼間緩んでは夜に凍結する状態を繰り返していた。
2月半ばの土曜の午後、玄関先で悲鳴のようなものが聞こえ、悟が2階の窓から見ると、
栗原美冬が手に付いた雪をはらい、バッグを拾い上げていた。
約束の時間にはまだ早い。
ドアを開けて悟が
「転んだ?」と聞くと
「滑ったの。またかっこ悪いとこ見られちゃった。ほら」
と言って振り向いて見せた。
コートのお尻のところが溶けかかった雪と泥で汚れていた。
それから二人で笑い、悟は美冬を家の中へ招き入れた。
「お邪魔します。ちょっと早くついちゃって。おうちの方は?」
と聞かれ、悟は一瞬ためらってから答えた。
「両親は事故で亡くなったんで今は一人暮らし」
「えっ、いつ?」
「12月」
「何も知らずにごめんなさい。あの・・・」
思いもよらないことに慰めの言葉も出てこない。
なんと言ってよいかわからず、悲しげな目で悟を見つめる美冬に悟が助け舟を出した。
「大丈夫だから。もう一人にも慣れたし、俺って料理の才能あることもわかったしね」
「自分でご飯作ってるの?」
「たまにだけどね。カレーはけっこういけるよ。一回作れば3日は食える」
悟の明るい声に美冬はホッとした。
真新しい仏壇に手をあわせてから、ダイニングテーブルで悟が入れてくれた
インスタントコーヒーを飲んだ。
美冬が訪れたのは4月から悟の絵をギャラリーに飾るための、具体的な打ち合わせをするためだった。
一通りの説明が終わると、美冬は悟のほかの作品を見たがった。
「見せられるようなものはそんなにないんだ。昔の絵は俺が見ても下手だし」
「昔って若造がなに言ってんの。悟君はまだ高校生でしょ」
「そうだな。でも美冬さんだってまだ若いくせに」
「そうね、まだ駆け出しのギャラリストです。だから知りたいの、人がどうやって画家になっていくのかね。
悟君がこの絵を描くまでの成長過程に興味があるから、小さい頃からの絵も見てみたいの」
「俺、画家になんてならないよ」
「でも絵はずっと描き続けるでしょ?」
「わからない」
悟は美大へ行けばこの先4年間は絵を描いていられると漠然と思っていたが、
その先のことは考えていなかった。
一瞬にして未来が無くなった両親の人生を思うと、あまり先のことを考えても仕方がない気がした。
リビングに出しておいた中学時代からの絵を美冬に見せた。
美冬は悟が中学生の時に描いた水彩画や高校の美術部に入って描いた油絵など、
作品として完成させた8点を黙って丁寧に見たあと言った。
「他にはないの?デッサンとか、ただのスケッチとかでもいいんだけど」
「たくさんあるけど、落書きみたいなもんだよ」
「いいから見せて」
美冬の真剣な口調に押されて、自分の部屋に取りに行こうとすると、
彼女もついて来た。
悟の部屋は美冬が思ったより広かった。
昔は二部屋に仕切って姉と半分ずつ使っていたが、姉の結婚後仕切りを
外して絵を描くスペースに当てていた。
美冬は描きかけの絵に息を呑んだ。
ダイナミックな受賞作とは一転して、驚くほど細密に描かれた猛禽類と思われる鋭いくちばしの鳥が、
切り裂かれた明るい光の奥の闇からこちらを見つめていた。
澄んだ瞳が悟に似ているような気がした。
「意外だった?俺こういう細かいのをちまちま描くのも好きなんだ」
壁際に並べられたカラーボックスに、スケッチブックが無造作に重ねられていた。
美術部で描いたらしいデッサンやスケッチに混じって、もっと前に描かれた
人物画や静物画もあった。
デフォルメされていたり、驚くほど細密に描写してあったり時期によって
描かれる興味の対象も違っていて面白い。
一番古いものは小学生の時の絵だったが、その立体の捉え方の的確さに舌を巻いた。
オレンジ色の表紙のスケッチブックには何枚も、魚が図鑑のように細かいところまで鮮明に描かれていた。
「これいつごろ描いたの?」
「小5の夏休みに親父がスケッチブック買ってくれて、その時」
「はっきり覚えているのね」
「親父が好きだったんだ釣り」
「それで魚の絵なんだ」
悟はきっと父親のことが大好きだったんだろうと美冬は思った。
「もっと前のはないの?」
「一枚もない。この家に引っ越す時に全部捨てたんだ」
「そう、残念ねぇ。だって急にこんなに描けるわけ無いもの。小さい時から絵は好きだったんでしょ?」
そう聞くと、悟が急に背中を向けた。
「親父が悟は才能あるって喜ぶからさ・・・親ばかってやつ?」
明るく言おうと思ったのに、声は途中で途切れ、最後は少し声が震えた。
美冬が何も言わず、ためらいがちに悟の背中に手を触れた。
突然悟の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
我慢しようとトレーナーの袖で何度拭っても、涙は後から後から溢れてきて
やがて嗚咽となり、悟はこらえようとするのを諦めて心のままに任せて泣き続けた。
両親が亡くなって、初めて流した涙だった。
-------------つづく----------
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高校生のままでしたね

妄想が膨らんでなかなか進みません。
悟の部屋とか絵とかね。健太くんの部屋の雰囲気も思い出したりして

みなさんも好きでしょ、妄想

次回こそ成長させる!!
ではまた
