西京極 紫の館

サッカー観戦、映画や音楽鑑賞、読書などなど、
日々のなんやらかんやらを書いてみようかな、と♪

ことり  小川洋子/著  朝日新聞出版

2013年08月26日 22時16分18秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
親や他人と会話ができず、小鳥の声を理解し語る兄。その彼の言葉をただ一人わかる弟。兄はあらゆる医学的治療を試みるも、人の言葉を話すことはなかった。ただ薬局で棒つきキャンディーを買い、その包み紙でブローチをつくって過ごす。兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。弟はバラの咲き誇るゲストルームの管理人として働きながら、温かな兄と2人の生活を続けていく。小さな、ひたむきな幸せ…。そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、 弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女らと出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない書き下ろし小説。

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
  感動度 ☆☆☆☆★
  意外性 ☆☆☆★★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
この小説は主人公である“小鳥の小父さん”の遺体が発見されるところから始まる。小父さんの死は、世に云う孤独死であり、寂しく辛く苦しいものに違いないと発見した人々には思われる。もちろん読者である僕自身もそう思った。だが、小父さんが死を迎えるラストまで読み終えた時、一抹の寂しさと共に、やすらかな想いが心に残った。そして、もう一度冒頭を読み返した時、その印象はまったく違っていた。これはかなしいけれど、幸せな終末なのだ、と。人の死が心に温かい…そんな気持ちにさせてくれる小説でした。

人気ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿