我 老境に入れり

日々の出来事をエッセイと写真でつづる

一夜の夢

2023-08-24 05:17:56 | うたごえ、カラオケ、他音楽

                                         おとぎの国に来たような

「夢一夜」

この歌との出会いは40年ほども前、

当時

私は田舎町の中小企業の営業マン、

営業マンと言えば聞こえはいいが

トラックの運転手に過ぎない、

世は挙げてバブルの絶頂期、

中小企業の平社員でさえ夜遊びの

出来る風潮があった、

夜の社交場は幹線道路沿いの畑の中

あちこちにネオンを点灯させていた、

必然的に仕事の終わる7時や8時過ぎからでも

老いも若きも誘い合って

夜の社交場へと繰り出した、

当時はダンスホールを兼ねた

スナックが多かったように思う、

私も例外ではなく毎晩のように

気の合う仕事仲間と連れだって

夜の街ならぬ夜の畑道に車を走らせていた、

明日が休日というある晩

7時頃だったろうか?

仕事が終わってから入社2,3ヶ月ほどのA君が

これから前橋のスナックに行くと言う、

通いなれている雰囲気は誰もが感じていた、

A君は独身ながらも芯のある若者

しかも今でいうイケメン、

会社の女性たちにモテモテであった、

我々はと言うと

蛾のように畑の中のネオンに吸い寄せられていた面々

❝前橋のスナックに❞誰もが興味を示した、

前橋は群馬第一の賑わいを誇る街、

衆議一決

彼に同行することに決まった、

あろうことか夜の遊びでは後れを取らぬ

会社の専務までもが行く事態となり

3台の車に分乗して前橋の繁華街へと向かった、

私などは経験したことのない豪華な

店に入った、

カクテル光線の回る中で

静かなダンス音楽が流れていた、

そこはスナックと言うより

厚化粧の女性従業員も複数いたので

クラブだったのかもしれない、

深々としたソファーに腰を落として

店内を見渡していたら

自分の世界が広がった気分になっていた、

ひとまず運転手を除いて水割りを注文した、

10分か15分ほど経って

気分が落ち着いた頃

他にも客はちらほらいる中で

女性従業員が我々に

❝何か歌いませんか?❞

とマイクを持って来た、

ややあって

❝俺が歌う❞

とマイクを受け取ったのはA君だった、

この時に聞いたのが「夢一夜」、

全く初めて聞く曲だった、

何より意外だったのは

A君はアスリート系の若者と言う雰囲気で

誰も彼が歌を歌うとは思ってもいなかった、

お世辞にもうまいとは思わなかったけれど

この歌の抒情性には聞き耳を立てた、

 

       (2)

ーー恋する なんて 無駄な ことだと

  例えば 人に 言ってはみても

  あなたの誘い 拒めない

  最後の 仕上げに 手鏡 見れば

  灯りの下で 笑ったはずが

  影を集める 泣きぼくろ

  あなたに会う日の ときめきは

  歓びよりも 切なさばかり

  あ~ 夢一夜

  一夜限りと言い聞かせては

  紅をひく

 

  あなたを愛した はかなさで

  私は一つ大人になった

  あ~ 夢一夜 

  一夜限りに 覚めてく夢に

  身をまかす ーー

 

今にして思えば

意味合いこそ違えど

あの時代こそが

❝夢一夜❞ならぬ

❝一夜の夢❞だった気がしてならない。



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