おとぎの国に来たような
「夢一夜」
この歌との出会いは40年ほども前、
当時
私は田舎町の中小企業の営業マン、
営業マンと言えば聞こえはいいが
トラックの運転手に過ぎない、
世は挙げてバブルの絶頂期、
中小企業の平社員でさえ夜遊びの
出来る風潮があった、
夜の社交場は幹線道路沿いの畑の中
あちこちにネオンを点灯させていた、
必然的に仕事の終わる7時や8時過ぎからでも
老いも若きも誘い合って
夜の社交場へと繰り出した、
当時はダンスホールを兼ねた
スナックが多かったように思う、
私も例外ではなく毎晩のように
気の合う仕事仲間と連れだって
夜の街ならぬ夜の畑道に車を走らせていた、
明日が休日というある晩
7時頃だったろうか?
仕事が終わってから入社2,3ヶ月ほどのA君が
これから前橋のスナックに行くと言う、
通いなれている雰囲気は誰もが感じていた、
A君は独身ながらも芯のある若者
しかも今でいうイケメン、
会社の女性たちにモテモテであった、
我々はと言うと
蛾のように畑の中のネオンに吸い寄せられていた面々
❝前橋のスナックに❞誰もが興味を示した、
前橋は群馬第一の賑わいを誇る街、
衆議一決
彼に同行することに決まった、
あろうことか夜の遊びでは後れを取らぬ
会社の専務までもが行く事態となり
3台の車に分乗して前橋の繁華街へと向かった、
私などは経験したことのない豪華な
店に入った、
カクテル光線の回る中で
静かなダンス音楽が流れていた、
そこはスナックと言うより
厚化粧の女性従業員も複数いたので
クラブだったのかもしれない、
深々としたソファーに腰を落として
店内を見渡していたら
自分の世界が広がった気分になっていた、
ひとまず運転手を除いて水割りを注文した、
10分か15分ほど経って
気分が落ち着いた頃
他にも客はちらほらいる中で
女性従業員が我々に
❝何か歌いませんか?❞
とマイクを持って来た、
ややあって
❝俺が歌う❞
とマイクを受け取ったのはA君だった、
この時に聞いたのが「夢一夜」、
全く初めて聞く曲だった、
何より意外だったのは
A君はアスリート系の若者と言う雰囲気で
誰も彼が歌を歌うとは思ってもいなかった、
お世辞にもうまいとは思わなかったけれど
この歌の抒情性には聞き耳を立てた、
(2)
ーー恋する なんて 無駄な ことだと
例えば 人に 言ってはみても
あなたの誘い 拒めない
最後の 仕上げに 手鏡 見れば
灯りの下で 笑ったはずが
影を集める 泣きぼくろ
あなたに会う日の ときめきは
歓びよりも 切なさばかり
あ~ 夢一夜
一夜限りと言い聞かせては
紅をひく
あなたを愛した はかなさで
私は一つ大人になった
あ~ 夢一夜
一夜限りに 覚めてく夢に
身をまかす ーー
今にして思えば
意味合いこそ違えど
あの時代こそが
❝夢一夜❞ならぬ
❝一夜の夢❞だった気がしてならない。
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