のりひめのひとりごと Monologue of Noriko

2012年からオーストラリアと日本を行き来しています。日常のいろいろを書いてます。

子供の宇宙、文房具屋さん★のりひめエッセイ

2011-10-10 10:16:59 | のりひめエッセイ
その17「子供の宇宙、文房具屋さん」 

小・中学校は、毎日一番多く過ごす場所が
学校の机だった。机の上には、筆箱、下敷き。
授業に飽きたり、答えがわからないとき、自
習時間、友達と話せないときには、お気に入
りの文房具たちが味方だ。

 いきつけの文房具屋さんが2軒あって、友
達と遊ぶときのおきまりのコースだった。
 そこには色とりどりの小さなものたちの夢
の世界がある。運動会が近くなるとぽんぽん
をつくるためのカラーテープが入荷したり、
12月はクリスマスカードがはばをきかす。
文房具屋さんで季節を先取りしたものだ。

 一番好きなお店はサイジムという駅前のお
店で、ここは長居できる。100円で10円
の小さな金券をくれて、大事にためた。

 入り口左手のコーナーで新作をチェック、
そのままノートからレターセットへ。ひとつ
ひとつ吟味しながらゆっくり進む。ここから
奥にいくとレポート用紙や帳票類のコーナー
でつまらない。きびすを返して、誕生日やお
祝いのカードコーナーにとりかかる。こんな
の手作りでできるかな、無理かな、などと自
問自答しながら幅90センチほどのひな壇の
ケースをを順番に鑑賞する。

 次は、となりのご祝儀袋少々鑑賞して奥の
通路へ。黒いスケジュール帳や革の手帳のと
なりは筆記用具。子供が好きなキャラクター
の絵がついたぺン、下の段に消しゴム、角に
はこれまた大好きなシールコーナーだ。

 親におつかいを頼まれたときは、我が物顔
で店内を歩き回る。いつものコースにプラス
して、奥の書道コーナーにいってみたり、ガ
ラスケースの万年筆をじっくりながめる。

 文房具は、子供にとって、自由が許される
小さな宇宙だ。おこづかいのやりくりももこ
こから学んだ。

 高校は電車にのって通うようになり、地元
の文房具屋さんにいかなくなってしまった。
そのまま大学、就職、一人暮らし。たまにし
か実家に帰らなくなった。駅前にあった店は
次々とシャッターをおろした。

 久々に駅を降り立ち、実家に帰る。
 駅前の文房具屋サイジムは、あるだろうか。

 あったあった。昔とかわらない配置だ。商
品はきちんと入れ替えられ、ほこりもついて
いない。小額商品で、毎日買いに来るもので
もないのに、よくつぶれずに残っている。
 父に頼まれた封筒を買ってレジに行ったら
かわらぬ印刷の10円券をくれた。

 100円ショップや大型スーパー、コンビ
ニ、はてはアスクルなどのの大波がきても、
ちゃんと生き残り、店内には中高生の男子が
数人、買い物途中の主婦もいた。おそらく、
私たちの世代がお母さんになり、その子供た
ちがきているのだろう。

 街にあったふとん屋さん、靴屋さん、天ぷ
ら屋さんや生地屋さん、呉服屋さんが姿を消
す中、街の文房具屋さんは変わらず、10円
券を発行しながら、誰かの机の上や筆箱の中
に小宇宙を展開している。

(2011年8月23日)

今でも文房具屋さん 大好き!です~