動と静、生じることと滅すすること、有と無、これらは二項対立の関係にあるといわれていますが、それに関する記事や解説をいくつか選んでみました。
✧二項対立 dichotomy
二項対立(にこうたいりつとは論理学用語の一つ。二つの概念が存在しており、それらが互いに矛盾や対立をしているような様のことを言う。元々は一つの概念であったものを二分することにより、それを矛盾や対立をする関係へと持っていくことを二項対立と言うこともある。
陸と海、子供と大人、彼らと我々、臆病者と英雄、男らしさと女らしさ、既婚者と独身者、白と黒、運動と静止、明と暗のように、相対立する一対の概念を二項対立という。 (二項対立 wiki)
この解説には違和感がありますね。陸と海が対立し、子供と大人が矛盾する云々とは考えにくいのでwikiの解説は疑問。
つぎはデジタル大辞泉の解説
✧二項対立(dichotomy)
論理学で、二つの概念が矛盾または対立の関係にあること。また、概念をそのように二分すること。内側と外側、男と女、主体と客体、西洋と非西洋など。二分法。
内と外が対立し男と女が矛盾しているとは考えにくいのでこの解説も疑問。
これも難しい言葉をつかってますがこちらのほうがよいと思います。
✧対概念(ついがいねん)
互いに対照的な要素を持ち、一方が言及される場合には自ずと他方の存在が前提されている、といった関係の概念。対をなす二つ一組の概念。
「実用日本語表現辞典 」
*調べると「dichotomy」は二つに分ける、分類する、くらいの意味で、対立とか矛盾の意味はあまり含まれていないようです。単なる分類、区別、あるいは差異くらいの意味合いの言葉だと思われます。対立を強調する、「二項対立」というより比較の対象によって使い分けできる「二項関係」のほうが関係を考える上ではよいと思います。
やや難しい言葉を使ってますがこれなら納得。
✧反対概念
論理学で、同一の類概念に属する概念のうち、その内包上最も対立度ないし差異の大きな概念。例えば、白と黒の関係。両者の間に灰色という中間の概念が介在する点が矛盾概念と異なる。
内包はある概念がもつ共通な性質のことを指し、外延は具体的にどんなものがあるかを指すものである。 これらは互いに対義語の関係をもつ
デジタル大辞泉
対義語・反対語・反意語・反義語とは、意味の上で互いに反対の関係にある語をいう。「善」⇔「悪」のように全く反対の概念を表す語を反対語、「右」⇔「左」のように、組になる語を対義語と区別することもある。
わたしとしてはこれが一番よかった。
矛盾概念には両者の中間にあたる概念がなく、反対概念には中間の概念があるので区別できます。
例
○✕ ○(△)✕
生死 生(病老)死
生滅 生(住異)滅
二項対立の考え方を解消する方法のひとつに弁証法があります。「正」「反」の対立関係から、より高次の「合(ジンテーゼ)」が導かれることを、ヘーゲルは「アウフヘーベン」という言葉を用いて説明します。
たとえば男を「正」とするなら女が「反」なります。これを結びつけると夫婦になります。さらに子供が生まれると家族になります。アウフヘーベンには高次にすると同時に保存するという意味があります。男女、子供と老人を含む概念としては「家族」という概念があります。そして男、女、子供、老人という個々の存在はそのまま保たれています。各自がその性質を保ちながら統一されるのがアウフヘーベンです。
弁証法的にみると、陸と海はつながっています。子供と大人もつながっています。彼らと我々も臆病者も英雄も同じ人間です。男と女は結びついているもの、やがて結ばれるものです。白と黒は連続しています。運動と静止、明暗も連続しています。
内と外はつながっています。男と女は結びついています。主体と客体も切り離せません。西洋と非西洋だけは矛盾概念です。
このようにすべてのつながっているもの、結びついているもの、連続しているものを分断するのが二分割思考、二項対立、二元論です。では、二項対立の反対は何でしょうか。量子力学の概念ですがこれかな。
✧相補性
相補性とは、光や電子の粒子性と波動性や、古典論における因果的な運動の記述と量子論における確率的な運動の記述のように、互いに排他的な性質を統合する認識論的な性質であり、排他的な性質が相互に補うことで初めて系の完全な記述が得られるという考えのことである。
✧相補関係
複数の人や物事が、互いに相手を非常に重視する関係にあること 。緊密な関係、2つで1つ、一心同体、相補的な関係、相補的関係、互いを補い合う関係、2人で1セット等
Weblio類語辞書
これで決まりですね。
✧表裏一体
相反する二つのものが大もとでは一つであること。また、二つのものの関係が密接で切り離せないこと。
表裏一体とは、「密接に結びついていて決して切り離せないこと」を意味します。
コインの表と裏は本来別々の面であっても、決して切り離すことはできないことから、二つのものが密接に結びついた関係にあるなら、それは一つであるという考えのもと用いられる言葉です。
表裏一体の類義語・対義語
類義語には、決して分けられないという意味の「不可分」などが挙げられます。また「陰と陽」などの考えかたも表裏一体と同じだといえます。
また対義語には「二律背反」が挙げられます。互いに矛盾し、決して交わらない二つのことを指す言葉です。
なんのことはない、人間が表裏一体そのものでした。
画 ルネ•マグリット