金曜アンテナ (2010/12/17)
暴力団担当の刑事と 弘道会幹部が 一緒に酒を飲んでいる写真や、
警察官個人の趣味・家族構成などが記された資料がでてきたのだ。
山口組弘道会壊滅のための“頂上作戦”
組長からナンバー3までを逮捕 日本最大の暴力団組織山口組。その中核組織である二代目弘道会壊滅に警察庁が王手をかけている。
「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化なし。山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化なし」とは、弘道会(本部・愛知県名古屋市)の徹底検挙を掲げている安藤隆春警察庁長官の弁だ。それを裏付けるように一一月一八日、京都府警は山口組のナンバー2の高山清司若頭・二代目弘道会会長を多額恐喝容疑で逮捕。これを皮切りに今月一日、大阪府警は山口組ナンバー3の入江禎総本部長を、組員に対する報奨金供与で逮捕。さらに五日、長野県警は弘道会幹部を融資に絡む詐欺容疑で逮捕した。来年四月中旬に出所する司忍・六代目組長とともに山口組はナンバー1からナンバー3までのトップ不在という一大危機に陥っている。
この一連の逮捕は山口組に対する “頂上作戦” ともいえるが、過去に実施された山口組壊滅作戦のそれとは大きく異なる。たとえば一九六四年の第一次頂上作戦、八五年の山一戦争、九七年の宅見勝若頭射殺事件の際の壊滅作戦は頻発拡大する抗争事件の阻止が目的だった。しかしここ十数年、暴力団組織を分裂させるほどの抗争事件は起きてはいない。にもかかわらず、安藤長官はなぜ「弘道会の壊滅」を掲げたのか。
その答えは明白だ。高山清司という希代のトップを逮捕することが、山口組壊滅に直結すると判断したからである。警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課が昨年八月に全国の警察に配布した『六代目山口組における少数精鋭主義化路線等組織管理の実態と今後の展望』という報告書の一項目には、「高山の個人的性格と暴力団としての行動特性」とある。警察庁がどれほどこの人物を警戒していたかが窺える。
この報告書は、山口組の二次団体である弘道会を次のように分析する。<二五名で結成された弘道会(初代組長は司忍)がたった二六年間という短期間で四〇〇〇名の大組織を作りあげ、山口組を支える最大勢力だった山健組さえも上回るほどの勢力を持つに至る。先鋭的暴力集団であり、その実相はテロ集団である> と。
警察庁をして「テロ集団」とまで言わしめる強力な組織を作り上げた、その中心的人物こそが高山清司である。弘道会は警察に対して「三無主義」で対決姿勢を鮮明にしてきた。すなわち、警察とは会わない、事務所には入れない、情報は出さない、という徹底した内部規律のことだ。
しかし安藤長官が弘道会の脅威を感じたのはその内部規律によってではない。
!★※ 弘道会と愛知県警の“ただならぬ関係” を知ってしまったからだ。
かつての愛知県警による捜査現場でのこと。弘道会の組事務所から、
!★※暴力団担当の刑事と弘道会幹部が一緒に酒を飲んでいる写真や、
警察官個人の趣味・家族構成などが記された資料がでてきたのだ。
安藤長官は長年にわたる、愛知県警と弘道会との関係に驚愕し、
警察の危機を感じたのだ。
京都府警が高山若頭を逮捕した当日の記者会見で安藤長官は、「これで山口組に多大な打撃を与える。これを突破口にして資金源である関係企業や共生者の摘発を図る」と明言。次は弘道会の資金源に狙いを定めるという声明である。
弘道会の資金量はどれくらいになるのか。二〇〇八年八月の改正暴力団対策法による組織犯罪処罰法の強化で、資金源対策は強化されてはいる。しかし、山口組六代目体制を牛耳るようになってからの弘道会は、本格的な東京進出を図り資金量はむしろ拡大している。一説によると資金規模は五〇〇〇億円以上にもなるという。
今年、大相撲の野球賭博が社会問題となったが、角界と暴力団との関係に詳しい人物によると「弘道会は胴元(博打などの親、元締め)なんかやらない。胴元に金を貸す銀行の役割をやる」と指摘。弘道会捜査にかかわってきた愛知県警OBも、「運営する裏カジノの現状を見ても、弘道会は金融マフィアそのものだ」と話す。弘道会の資金源を断つことが暴力団壊滅につながるのか。国家権力と暴力団の熾烈な攻防はこれからである。
成田俊一・ジャーナリスト
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