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クローンは本物か

2021-04-13 00:20:04 | Weblog
2021年4月に開館した「長野県立美術館」で開催された「未来につなぐ~新美術館でよみがえる世界の至宝 東京藝術大学スーパークローン文化財展」を観てきました。
 (長野市が感染警戒レベル5に指定されていた影響もあってか、1時間の滞在中は自動的にソーシャルディスタンスを保ちました!)
 法隆寺の釈迦三尊像をはじめ、いくつかの歴史的な絵画や彫刻がアナログ技術とデジタル技術を駆使して再現されていました。


 それは見事なものでした。特にメインとなる法隆寺の釈迦三尊像は、現在の姿のものと、作られた当時の金箔をあしらわれていた姿のものがそれぞれ展示されていました。
 その時に驚くべき光景を目にしました。それは、展示されていたクローンの釈迦三尊像の前で、入館者の何人かが手を合わせて祈っている姿でした。

 私は混乱しました。

 この釈迦三尊像はクローンであり、芸術として展示されているはずなのにこの入館者はあたかも本物の仏様に接するように手を合わせているのです。
 しかし私はハッとしました。法隆寺の釈迦三尊像も仏様のお姿を写した世界の何千か何万かのお姿の一つであって、「本物」のお釈迦様ではないではないか。
 しかし私たちは寺院に安置された仏像の前に額ずき、手を合わせている。とするとここにいらっしゃるクローンも一つのお姿と言えるのではないか。
 もし私が複数のお姿が存在することを否定するのであれば、あのテロリストタリバンの偶像崇拝禁止を認めることになりはしないか。
 今回の展示の真意を図るべく2000円の図録を買い求めました。果たして図録で東京藝術大学の見解は芸術としてのクローンの可能性について積極的に論じていますが、「本物」と「レプリカ」の違いについては書かれていません。
 この論点自体が余計なお世話なのかもしれませんが、口にあわを飛ばしてこのことを話した私は娘に、
 「ある姿を自分の祈りの対象であると信じた時に、そこに本物が存在するんだよ」とあっさり論破されました。おそるべし。





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