表千家一期一会

岡林院・お茶事


社中のM様が
私の目の前に現われたのは
平成20年の9月
街の公民館で行っていた
「茶道一日体験講座」の会場でした


その頃
ご自分に合ったお茶の教室を探していたM様は
たまさか当時社中の一人であったK様にすすめられて
私のもとを訪れたのでした


その日は
初心者向けの体験講座で
ふだんの稽古場ではなかったにもかかわらず
なぜか初めてお目にかかったその日
その場所で
M様は入門を決められたのでした


以来13年間・・・


彼女はただひたすら
黙々とお稽古を積み重ねてこられました


その間
お舅様姑様の介護に
日々相当なエネルギーを注がれる傍ら

2016年からは
京都のいくつかのお寺で
外国人観光客をお茶でもてなすという
取り組みに積極的に関わって来られました


その中で
多くの方々に助けられながら
彼女が大きく成長されてゆく姿を
私はまぶしい思いで見守って参りました


この度
様々な事象が調い
機が熟したというのでしょうか
彼女から
お茶事のお招きを受けることとなりました


場所は
高台寺塔頭・岡林院


折しも
寧々様御遠忌400年


そのゆかりの高台寺にて
愛弟子より
真心の一服をいただく幸せを
しみじみ味わう一日となりました



先日下見をしたこの場所で
連客のお二方と合流


お二人は
M様と長年共にお稽古を積んで来られた方であり
彼女の成長を見守ってこられた社中の先輩方です





ねねの道より右に曲がると
岡林院へといざなう長い石畳に
清々しく打ち水がされていました




三体のお地蔵様が
静かに出迎えて下さいます




岡林院

待合から
露地に下り立つと

目の覚めるような
苔の美しさ・・・!


風が一吹きするごとに
はらはらと紅葉の舞い散る露地を渡り
四畳半の小間”忘知庵”へと歩をすすめます



益州老師筆「日々是好日」



精進の懐石は
広間の椅子席に座を移し
かたじけなくも
御本尊様の御前にて頂戴いたしました



後座の釜に
立ち上る湯気。。。


薄明かりの中
土壁の細い花入れに入れられた
白椿の清らかさに
胸をうたれます



誰一人声を発することなく
亭主と客それぞれに
胸のうちにこみ上げてくる思いを
かみしめておりました





最後に薄茶をいただいて
一同打ち解けた心持ちとなり
口々にご亭主へねぎらいの言葉をかけ
退出させていただきました


玄関に参りますと
和尚様が
見送りに出てこられました


この度のご厚意に御礼を述べ
しばし歓談させていただきました


その中で
「適当」
という言葉が印象に残りました


「適当でいいんですよ・・・」


「適当とは
『当(まさ)に適(かな)う』
ということなんです」



なるほど・・・!


とうなずきつつも
その『適当』にたどり着くには
まだまだできていない自分であるなあと
あらためて自分の未熟さを感じながら
おいとまの挨拶をさせていただきました


振り返ると私達が門を出るまで
ずっと頭を床につけたまま
見送って下さった作務衣姿の和尚様に
再度御礼を申し上げたいような気持ちでした


『余情残心』という言葉が
ふと頭に浮かびました



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