本川 達雄
『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学』
(中公新書)
この本の説明
第9回(1993年) 講談社科学出版賞受賞
内容(「BOOK」データベースより)
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、
総じて時間の流れる速さが違ってくる。
行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。
ところが一生の間に心臓が打つ総数や
体重あたりの総エネルギー使用量は、
サイズによらず同じなのである。
本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、
その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする
新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
この本の情報
新書: 230ページ
出版社: 中央公論社 (1992/08)
言語 日本語
ISBN-10: 4121010876
ISBN-13: 978-4121010872
発売日: 1992/08
商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.4 cm
レビュー1
生命の神秘を改めて感じます 2007/1/28
By wave115 VINE™ メンバー
サイズによる動物学の解説です.
例えば,ほ乳類のいろいろな時間
(息をする時間間隔や心臓の打つ時間,寿命など)
はおおよそ体重の1/4乗に比例するそうです.
本書では,ほ乳類の時間に限らず,
種々の生き物のいろいろなこと
(標準代謝量,移動速度など)をサイズとの関係で論じています.
そして,これらを体重との関係で対数グラフを書くと
ほぼ一直線のグラフに乗るという
驚くべき結論が得られています.
すなわち,大きかろうが,小さかろうが,
体重で規格化すると同じであるということです.
生命の神秘というものを改めて感じてしまいます.
また,人間は移動のために車輪やスクリューを発明しましたが,なぜ動物はこれらの機構を持たないのかという考察は非常に興味深いものでした.車輪やスクリューといった道具は真に効率の良いものではないのかもしれません.
「すばらしい」のひと言です.是非読んで下さい.
レビュー2
生物の神秘 2002/7/9
By 漆原次郎
中公新書の名著として誉れだかい本書。
その書名が表すところはあまりにも有名になった。
「時間」や「秒」
人間が生活の便宜上つくり出した
人工物であることを改めて知らされる。
なにか、立花隆が『宇宙からの帰還』で書いている
「地球の時間、月の時間」とスケールこそ違うが、
共通してる部分があるようでおもしろい。
各々の動物がもつ時間について書かれている箇所は
本書の最初の部分だけに過ぎず、
その後は動物の食事量やエネルギーについて、
また生物の精巧なつくりについてなど、
話題は多岐におよんでいく。
それにしても、生物とはなんと無駄なく生きているのだろうか。
生物の神秘というものを感じずにはいられない。
レビュー3
古き良き教養新書というあり方 2011/3/8
By 倒錯委員長 トップ500レビュアー
言わずと知れた中公新書のロングセラー
『ゾウの時間ネズミの時間』。
読んだことなくても、 大学の入学者案内などの冊子で、
推薦書籍として一度は目にしたという人も少なくないはず。
本書は動物学が専門の著者が、
動物の体のサイズに焦点を当てた新書だ。
僕のような生物学のずぶの素人、
門外漢の読者にとって
この本の何が画期的だったかというと、
それはタイトルにあるとおり、
ゾウとネズミは同じ空間にいながらも、
実はまったくちがう時間は生きていたという
素朴でありなおかつショッキンな事実を知らしめたところにある。
例えば、ふつう小さな動物に比べれば
大きな動物は大きな分だけ「大食漢」なのだろうと思いがちだ。
それはおそらく、実生活で肥った人が
肥った分だけ人よりよく食うということからの類推なのだけど、
人科同士で比べるのとまったく別種間で比較するのは、
当然ながらわけがちがう。
本書は物理法則をもとに、
小さい動物ほど実は「効率が悪い」
ということを解き明かしてくれる。
哺乳類だけにとどまらず、
鳥類や植物、魚類やサンゴ、ウニやヒトデといった
棘皮動物にまで 話は及ぶ。
なるほど、動植物の体の形や機能を吟味していけば、
それ相応の合理性が見て取れるというわけだ。
そうなると、必然的に自然美という合目的性には、
目的がないわけでも ないということもわかる。
00年代に到来した新書バブルは、
新興レーベルの林立と多くの新人にデビューする機会をもたらした。
その一方で、爆発的な出版点数の増加は、
きわめて賞味期限の短い時事的なものや、
特定の政治的な立場からの
偏った意見を表明しただけのものなどをも乱発し、
結果的に新書全体の質の低下も招いてしまった。
こうしたなかで本書のような、
一般読者に科学の素朴な楽しさや
驚きにふれる機会を与えてくれる古き良き「教養新書」の再興を、
ひとりの新書読者として願ってやまない。
『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学』
(中公新書)
この本の説明
第9回(1993年) 講談社科学出版賞受賞
内容(「BOOK」データベースより)
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、
総じて時間の流れる速さが違ってくる。
行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。
ところが一生の間に心臓が打つ総数や
体重あたりの総エネルギー使用量は、
サイズによらず同じなのである。
本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、
その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする
新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
この本の情報
新書: 230ページ
出版社: 中央公論社 (1992/08)
言語 日本語
ISBN-10: 4121010876
ISBN-13: 978-4121010872
発売日: 1992/08
商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.4 cm
レビュー1
生命の神秘を改めて感じます 2007/1/28
By wave115 VINE™ メンバー
サイズによる動物学の解説です.
例えば,ほ乳類のいろいろな時間
(息をする時間間隔や心臓の打つ時間,寿命など)
はおおよそ体重の1/4乗に比例するそうです.
本書では,ほ乳類の時間に限らず,
種々の生き物のいろいろなこと
(標準代謝量,移動速度など)をサイズとの関係で論じています.
そして,これらを体重との関係で対数グラフを書くと
ほぼ一直線のグラフに乗るという
驚くべき結論が得られています.
すなわち,大きかろうが,小さかろうが,
体重で規格化すると同じであるということです.
生命の神秘というものを改めて感じてしまいます.
また,人間は移動のために車輪やスクリューを発明しましたが,なぜ動物はこれらの機構を持たないのかという考察は非常に興味深いものでした.車輪やスクリューといった道具は真に効率の良いものではないのかもしれません.
「すばらしい」のひと言です.是非読んで下さい.
レビュー2
生物の神秘 2002/7/9
By 漆原次郎
中公新書の名著として誉れだかい本書。
その書名が表すところはあまりにも有名になった。
「時間」や「秒」
人間が生活の便宜上つくり出した
人工物であることを改めて知らされる。
なにか、立花隆が『宇宙からの帰還』で書いている
「地球の時間、月の時間」とスケールこそ違うが、
共通してる部分があるようでおもしろい。
各々の動物がもつ時間について書かれている箇所は
本書の最初の部分だけに過ぎず、
その後は動物の食事量やエネルギーについて、
また生物の精巧なつくりについてなど、
話題は多岐におよんでいく。
それにしても、生物とはなんと無駄なく生きているのだろうか。
生物の神秘というものを感じずにはいられない。
レビュー3
古き良き教養新書というあり方 2011/3/8
By 倒錯委員長 トップ500レビュアー
言わずと知れた中公新書のロングセラー
『ゾウの時間ネズミの時間』。
読んだことなくても、 大学の入学者案内などの冊子で、
推薦書籍として一度は目にしたという人も少なくないはず。
本書は動物学が専門の著者が、
動物の体のサイズに焦点を当てた新書だ。
僕のような生物学のずぶの素人、
門外漢の読者にとって
この本の何が画期的だったかというと、
それはタイトルにあるとおり、
ゾウとネズミは同じ空間にいながらも、
実はまったくちがう時間は生きていたという
素朴でありなおかつショッキンな事実を知らしめたところにある。
例えば、ふつう小さな動物に比べれば
大きな動物は大きな分だけ「大食漢」なのだろうと思いがちだ。
それはおそらく、実生活で肥った人が
肥った分だけ人よりよく食うということからの類推なのだけど、
人科同士で比べるのとまったく別種間で比較するのは、
当然ながらわけがちがう。
本書は物理法則をもとに、
小さい動物ほど実は「効率が悪い」
ということを解き明かしてくれる。
哺乳類だけにとどまらず、
鳥類や植物、魚類やサンゴ、ウニやヒトデといった
棘皮動物にまで 話は及ぶ。
なるほど、動植物の体の形や機能を吟味していけば、
それ相応の合理性が見て取れるというわけだ。
そうなると、必然的に自然美という合目的性には、
目的がないわけでも ないということもわかる。
00年代に到来した新書バブルは、
新興レーベルの林立と多くの新人にデビューする機会をもたらした。
その一方で、爆発的な出版点数の増加は、
きわめて賞味期限の短い時事的なものや、
特定の政治的な立場からの
偏った意見を表明しただけのものなどをも乱発し、
結果的に新書全体の質の低下も招いてしまった。
こうしたなかで本書のような、
一般読者に科学の素朴な楽しさや
驚きにふれる機会を与えてくれる古き良き「教養新書」の再興を、
ひとりの新書読者として願ってやまない。