山田 鋭夫
『レギュラシオン理論―経済学の再生』
(講談社現代新書)

この本の説明
内容紹介
危機ごとに姿を変える資本主義を、どうとらえるか?
最新鋭理論〈レギュラシオン〉は、
人間を取り巻く「制度」に着目、
そこに働く「調整」(レギュラシオン)を通じて資本主義を透視する。
ケインズ、マルクスの遺産を乗り超えフランスで誕生した、21世紀の経済学を易しく説き明かす。
経済の「変化」をとらえる――問題は、
経済の「変化」をどう説明するからである。
しかもその変化を、個々的にでなく総体的に、
そして歴史的にでなく理論的に、だがしかし、
いわゆる純理論的にでなく歴史に開かれた理論として――
そういうものとして「歴史理論的」にとらえてみたというのが、
私の長年の願いであった。
静態的な経済学でなく、
いわば「可変性の経済学」を探しもとめていたのである。
加えてその経済学は、理論のための理論でなく、
われわれふつうの市民が使える道具として
役立ってくれるものでなければ意味がないのである。
そんな私にひとつの大きな啓示をあたえてくれたのが、レギュラシオン理論であった。
――本書より
内容(「BOOK」データベースより)
危機ごとに姿を変える資本主義を、
どうとらえるか?最新鋭理論〈レギュラシオン〉は、
人間を取り巻く「制度」に着目、
そこに働く「調整」を通じて資本主義を透視する。
ケインズ、マルクスの遺産を乗り越えフランスで誕生した、
21世紀の経済学を易しく説き明かす。
この本の登録情報
新書: 192ページ
出版社: 講談社 (1993/05)
ISBN-10: 4061491466
ISBN-13: 978-4061491465
発売日: 1993/05
商品の寸法: 17.8 x 11 x 1.2 cm
レビュー1
レギュラシオン理論の優れた入門書 2006/10/29
By 仮面ライター VINE™ メンバー
当書は、フランス・レギュラシオン学派の
ミシェル・アグリエッタ(M.Aglietta)や
ロベール・ボワイエ(R.Boyer)などの著作の訳出に尽力された
山田鋭夫氏(名古屋大学)が、
必ずしも経済学を専門としない読者を想定して書き下ろした
新書版によるレギュラシオン(調整)理論の入門書である。
刊行は1993年であるけれども、日本における最も平易で簡潔な解説書と確言できよう。
同書では、あまり聞き慣れないこの理論の大要が手際よく整理されており、
「レギュラシオン・アプローチ」(著者)に関する格好の手引書となっている。
そして、私が特に瞠目するのは
前述したアグリエッタやボワイエの「出自」である。
彼らはいずれも「官庁エコノミスト」の出身であり、
アグリエッタは国立経済統計研究所などに、
ボワイエは建設省や大蔵省などに勤務していたことだ。
このあたりの事情と経緯については、
本書「2.レギュラシオン理論の誕生と理論家たち」に述べられているが、
彼らは1970年代のフランスにおける経済計画等に関わる中で、
既存のモデルや用具が有効性を喪失し、
ケインズ主義的手法等が奏功しなくなった現実を思い知らされる。
そうした問題意識(現場感覚)が、やがてレギュラシオン理論として開花することとなったのである。
私は、この学派を細かくフォローしておらず、
今も存続しているのか否か生憎と判らない。
しかし、私が当該理論に惹かれるのは、
上述のように純粋なアカデミズムの世界から生まれ出たものではないという点にある。
さらに、「レギュラシオン学派は…マルクスとのつながりを引き受けなければならない」
(ボワイエ『現代「経済学」批判宣言』)というスタンスにも大いに共感を覚える。
レビュー2
著者の経済観に疑問 2006/10/19
形式:新書 レギュラシオン理論は、
マクロ経済の構図を諸制度との関係の中で考察し、
各国各時代の様式・システムを描き出す試みであり、
理論それ自体は非常に興味深い。
しかし、それを紹介する著者の経済学観にはかなり独特のものがあり、
この点を十分留意して読み進める必要があるだろう。
さらに、その後の議論においても、
著者の述べる「民主主義の経済学」が何を目指しているのか、
そこでは何が主体となって新たな「発展様式」が構築されていくのか、
今ひとつ見えてこない。
レギュラシオン理論におけるフォーディズム理解に関しては、日本に絞って考えると、
産業構造の変化、特に農村部から都市部への人口移動という要素は無視し得ない意味を持っているように思う。
また、傾斜生産方式が採られたことにも表れているように、
「生産性インデックス賃金」はかなり遅れてもたらされたのではないかと推察される。
そのように考えを巡らせると、
レギュラシオン理論の特殊な理論フレームに従って考えることにどれだけの意義があるのか、
十分な理解を持ち得ない。
加えてミクロ的な基礎がない、との批判も有り得るように思う。
レビュー3
レギュラシオン理論のエッセンスを読み解く啓蒙書 2012/3/29
By 読書散歩 トップ500レビュアー
1970年代にフランスで産声をあげたレギュラシオン理論のエッセンスを読み解く啓蒙書。
業績ではアグリエッタの『資本主義のレギュラシオン理論』(1976)を嚆矢とする。
他にポワイエ,クレール,リピエッツ,オミナミと論客が輩出。
「レギュラシオン」とは生物学,システム論の用語で
「その構成諸部分が相互に整合的でないようなシステムの動態的調和」を意味するが,
それを資本主義分析に応用したのがこの理論(p.52)。
理論の概念構成は単純で「制度的形態」「発展様式」「危機」「マクロ経済的結果」からなる(p.75)。
危機といわれながら何故,資本主義が存続するのか?
そのメカニズムに最大の関心があった。
「市場」ではなく「制度的諸形態」を内臓と考え,
「蓄積形態」を骨格とみなし,「調整様式」を血液・神経・ホルモンと捉える。
「発展様式」は生物体そのもの,すなわち「国民経済」である。
戦後の資本主義の発展をフォーディズムで要約し,
発展の「黄金の回路」を検証。
今後の展望を「ネオ・フォーディズム」「ボルボイズム」「トヨティズム」に模索する。
著者の解説は明快。この理論の今日的状況は定かでない。
この本、1993年9月17日(20時14分)にコープSの旧IWZ、NOVA東店で購入していた。
『レギュラシオン理論―経済学の再生』
(講談社現代新書)

この本の説明
内容紹介
危機ごとに姿を変える資本主義を、どうとらえるか?
最新鋭理論〈レギュラシオン〉は、
人間を取り巻く「制度」に着目、
そこに働く「調整」(レギュラシオン)を通じて資本主義を透視する。
ケインズ、マルクスの遺産を乗り超えフランスで誕生した、21世紀の経済学を易しく説き明かす。
経済の「変化」をとらえる――問題は、
経済の「変化」をどう説明するからである。
しかもその変化を、個々的にでなく総体的に、
そして歴史的にでなく理論的に、だがしかし、
いわゆる純理論的にでなく歴史に開かれた理論として――
そういうものとして「歴史理論的」にとらえてみたというのが、
私の長年の願いであった。
静態的な経済学でなく、
いわば「可変性の経済学」を探しもとめていたのである。
加えてその経済学は、理論のための理論でなく、
われわれふつうの市民が使える道具として
役立ってくれるものでなければ意味がないのである。
そんな私にひとつの大きな啓示をあたえてくれたのが、レギュラシオン理論であった。
――本書より
内容(「BOOK」データベースより)
危機ごとに姿を変える資本主義を、
どうとらえるか?最新鋭理論〈レギュラシオン〉は、
人間を取り巻く「制度」に着目、
そこに働く「調整」を通じて資本主義を透視する。
ケインズ、マルクスの遺産を乗り越えフランスで誕生した、
21世紀の経済学を易しく説き明かす。
この本の登録情報
新書: 192ページ
出版社: 講談社 (1993/05)
ISBN-10: 4061491466
ISBN-13: 978-4061491465
発売日: 1993/05
商品の寸法: 17.8 x 11 x 1.2 cm
レビュー1
レギュラシオン理論の優れた入門書 2006/10/29
By 仮面ライター VINE™ メンバー
当書は、フランス・レギュラシオン学派の
ミシェル・アグリエッタ(M.Aglietta)や
ロベール・ボワイエ(R.Boyer)などの著作の訳出に尽力された
山田鋭夫氏(名古屋大学)が、
必ずしも経済学を専門としない読者を想定して書き下ろした
新書版によるレギュラシオン(調整)理論の入門書である。
刊行は1993年であるけれども、日本における最も平易で簡潔な解説書と確言できよう。
同書では、あまり聞き慣れないこの理論の大要が手際よく整理されており、
「レギュラシオン・アプローチ」(著者)に関する格好の手引書となっている。
そして、私が特に瞠目するのは
前述したアグリエッタやボワイエの「出自」である。
彼らはいずれも「官庁エコノミスト」の出身であり、
アグリエッタは国立経済統計研究所などに、
ボワイエは建設省や大蔵省などに勤務していたことだ。
このあたりの事情と経緯については、
本書「2.レギュラシオン理論の誕生と理論家たち」に述べられているが、
彼らは1970年代のフランスにおける経済計画等に関わる中で、
既存のモデルや用具が有効性を喪失し、
ケインズ主義的手法等が奏功しなくなった現実を思い知らされる。
そうした問題意識(現場感覚)が、やがてレギュラシオン理論として開花することとなったのである。
私は、この学派を細かくフォローしておらず、
今も存続しているのか否か生憎と判らない。
しかし、私が当該理論に惹かれるのは、
上述のように純粋なアカデミズムの世界から生まれ出たものではないという点にある。
さらに、「レギュラシオン学派は…マルクスとのつながりを引き受けなければならない」
(ボワイエ『現代「経済学」批判宣言』)というスタンスにも大いに共感を覚える。
レビュー2
著者の経済観に疑問 2006/10/19
形式:新書 レギュラシオン理論は、
マクロ経済の構図を諸制度との関係の中で考察し、
各国各時代の様式・システムを描き出す試みであり、
理論それ自体は非常に興味深い。
しかし、それを紹介する著者の経済学観にはかなり独特のものがあり、
この点を十分留意して読み進める必要があるだろう。
さらに、その後の議論においても、
著者の述べる「民主主義の経済学」が何を目指しているのか、
そこでは何が主体となって新たな「発展様式」が構築されていくのか、
今ひとつ見えてこない。
レギュラシオン理論におけるフォーディズム理解に関しては、日本に絞って考えると、
産業構造の変化、特に農村部から都市部への人口移動という要素は無視し得ない意味を持っているように思う。
また、傾斜生産方式が採られたことにも表れているように、
「生産性インデックス賃金」はかなり遅れてもたらされたのではないかと推察される。
そのように考えを巡らせると、
レギュラシオン理論の特殊な理論フレームに従って考えることにどれだけの意義があるのか、
十分な理解を持ち得ない。
加えてミクロ的な基礎がない、との批判も有り得るように思う。
レビュー3
レギュラシオン理論のエッセンスを読み解く啓蒙書 2012/3/29
By 読書散歩 トップ500レビュアー
1970年代にフランスで産声をあげたレギュラシオン理論のエッセンスを読み解く啓蒙書。
業績ではアグリエッタの『資本主義のレギュラシオン理論』(1976)を嚆矢とする。
他にポワイエ,クレール,リピエッツ,オミナミと論客が輩出。
「レギュラシオン」とは生物学,システム論の用語で
「その構成諸部分が相互に整合的でないようなシステムの動態的調和」を意味するが,
それを資本主義分析に応用したのがこの理論(p.52)。
理論の概念構成は単純で「制度的形態」「発展様式」「危機」「マクロ経済的結果」からなる(p.75)。
危機といわれながら何故,資本主義が存続するのか?
そのメカニズムに最大の関心があった。
「市場」ではなく「制度的諸形態」を内臓と考え,
「蓄積形態」を骨格とみなし,「調整様式」を血液・神経・ホルモンと捉える。
「発展様式」は生物体そのもの,すなわち「国民経済」である。
戦後の資本主義の発展をフォーディズムで要約し,
発展の「黄金の回路」を検証。
今後の展望を「ネオ・フォーディズム」「ボルボイズム」「トヨティズム」に模索する。
著者の解説は明快。この理論の今日的状況は定かでない。
この本、1993年9月17日(20時14分)にコープSの旧IWZ、NOVA東店で購入していた。