人生をひらく東洋思想からの伝言

東洋思想の言葉やその精神を通じて、ともに学びながら人生や経営をひらいていけたら嬉しいです。

第175回 『一期一会(いちごいちえ)』(仏教)

2025年01月28日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】


第175回

『一期一会(いちごいちえ)』(仏教)


私たちの日常会話に深く根付いている「一期一会」という言葉。

聞き慣れた言葉でありながら、その深い意味や由来については

意外と知られていないかもしれません。


この言葉の成り立ちを紐解いていくと、興味深い発見があります。

「一期」は仏教用語で「一生」を、「一会」は「一つの集まり」を意味します。

ただし面白いことに、「一期一会」という言葉自体は仏典には登場しません。

実は、この言葉の源流は茶道の世界にありました。

茶聖・千利休の弟子である山上宗二が著した『茶湯者覚悟十体』の中で、

次のように説いています。


「そもそも茶湯の交会は、一期一会といひて、たとへば、

幾度おなじ主客交会するとも、今日の会にふたたびかへらざる事を思へば、

実に我一世一度の会なり、さるにより、主人は万事に心を配り、

いささかも粗末なきやう、親切、実意を尽くし、

客も次の会まで逢ひ難きをわきまへ、亭主の趣向はひとつもおろそかならぬを感心し、

実意をもって交るべきなり、これを一期一会といふ」

(茶会の出会いは一期一会である。たとえ何度も同じ主人と客が会うとしても、今日のこの時間は二度と戻ってこない。だからこそ、主人は細部まで心を配り、誠意を尽くす。客もまた、次の機会までに会えないかもしれないと心得て、主人の心遣いに感謝し、真心を持って交わるべきである)

この精神は、茶道の世界を超えて、現代の私たちの生活にも大きな示唆を与えてくれます。

人との出会いや関わりの一瞬一瞬を、かけがえのない機会として大切にする・・・

この心構えは、忙しい現代社会だからこそ、より一層その価値を増しているように思えます。

日本人なら誰もが一度は耳にしたことのある「一期一会」。

この機会に、その本質的な意味をあらためて見つめ直し、

日々の出会いや関わりを、より大切に、より深く味わっていきたいと感じました。



参考文献
『暮らしに生きる仏教語辞典』山下民城編 国書刊行会

 


大磯 六所神社

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第174回『大難を小難に、小難を無難に』(仏教)

2025年01月21日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】

第174回

『大難を小難に、小難を無難に』(仏教)


この世を生きる上では、大なり小なり様々な難儀なことに出逢い、

その体験、経験をするのが人生なのかもしれません。

その難儀な事が、おかげさまで、様々な偶然や奇跡によって

助けられたことは、皆様も多々あることだと思います。

それは、ご先祖さまや、目に見えない大いなる力が、私たちを支えているのかもしれない

ということを
表現したのが、今回の言葉になります。


この言葉は、仏教にも神道に通じるものがあり、

すべての存在が持つ「いのち」の繋がりを感じさせてくれます。

「今回は無事で良かった」と私たちが何気なく口にする言葉の裏には、

実は大きな災いが小さな困難へと変わり、さらにそれが無事に収まったという

深い感謝の念が込められているのです。

 

先日お話しした「おかげさまで」という言葉同様、今回の言葉も

私たちの生きる世界が見えない恩恵と慈悲に満ちていることを教えてくれます。

あらためて、この言葉の持つ深い意味に心打たれる思いです。




参考文献
『よくわかる観音経のすべて』大栗道榮 日本文芸社

 

 

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第173回『おかげさまで』美しい日本語

2025年01月14日 | 日記
【人生をひらく東洋思想からの伝言】
 
第173回

『おかげさまで』- 美しい日本語

 
日々の暮らしの中で、私たちが何気なく使う「おかげさまで」という言葉。

この短い言葉の中に、日本語の奥深さが凝縮されているように感じます。


「お陰様で」という漢字で表現されるこの言葉には、

目に見えない大きな力への感謝と畏敬の念が込められています。

私たちの先人は自分たちの生命や幸せが、神仏や自然、周囲の人々など、

様々な存在による恩恵によって支えられているということを実感しながら

生きてこられた中でこの言葉を生み出したのでしょう。


一見シンプルなこの挨拶言葉には、個人の成功や幸福を決して独りよがりのものとせず、

常に周囲との調和の中に見出そうとする日本人特有の謙虚さと智慧が息づいています。


上手くいったときは「おかげさまで」と捉える心、

うまくいかないときは「更なる成長や学びのチャンス」と謙虚に受け止める。

そんなしなやかな心持ちで過ごしていけたらと思います。

このような言葉の背後にある豊かな精神性は、

現代社会においてますますその価値を増しているように思えます。

そのような、美しい言葉を、言霊として大切に使い続けてきた日本語の奥ゆかしさと

感性を大切にしたいと思います。
 
 
 
参考資料
『アホは神の望み』 村上和雄著 サンマーク出版
『音 美しい日本語のしらべ』はせくらみゆき著 きずな出版
 
 
 

Moa美術館
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第172回 『令和7年 乙巳(いつし、きのと み)の意味とは』(日本の暦)

2025年01月07日 | 日記
【人生をひらく東洋思想からの伝言】
 
第172回

『令和7年 乙巳(いつし、きのと み)の意味とは』(日本の暦)


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

旧年中も大変お世話になり、有難うございました。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。



東洋思想研究の第一人者である田口佳史先生から毎年ご教示いただく干支の意味を基に、

自分なりに感じることなども含めてお伝えさせて頂きます。

この内容が、皆様の本年の指針となり、実りある一年を過ごすための一助となれば幸いです。




「乙」の意味

前年の歩みが、ついに地表に出てきます。

地表の厳しさ、激しい風雨や寒暖など
は予想以上に厳しいものですが、

その厳しさがとても大切になってきます。


まだ、真っすぐに伸びることができずに折れ曲がっているところを表しています。

まだ、外界の抵抗が強いですが、いかなる抵抗があっても、

どんな紆余曲折を
経ても、それを進めていくことが大切です。


「巳」の意味

冬眠より地上に出てきた蛇を表しています。辰と蛇はある意味で、似ていますが

辰は目に見えないもの想像的な存在、蛇は目に見える現実的な存在としての

象徴なため、日々の生活態度、習慣などがとても大切に問われてくるように感じます。

新しい時代にむかい、自分自身を律する気持ちと、

一歩一歩進んでいく地道な行動
が実を結んでいきます。


「全体的」

前年の「甲辰(きのえたつ)」は、革新の実現のために決断し、歩み出したところを

表したの文字が「甲」です。辰は歩みだした当初の悪戦苦闘を表しています。

そのような中で、様々な抵抗が強いため、粘り強い気持ちと覚悟が必要になってきます。

本当に自分自身が目指すところをしっかりと見定めて、

だらしない、ごまかしの生活に
見切りをつけて、退路を断つ気概を持ち、

滞っていることを一掃し、しっかりけじめをつける、
という覚悟をもって、

本気で「片を付ける」気持ちで臨んでいく、そんな気迫が試される一年に
なりそうです。

自分自身も、今まで避けてきたり、先延ばししてきたことに、

しっかり向き合ながら、
愚直に進んでいこうと思います。


皆様にとって、悔いのない素晴らしい一年になりますよう、

心より祈念申し上げます。


参考資料
『干支の活学』安岡正篤著 プレジデント社
『タオ・クラブ・メールマガジン624号 2024年12月27日号』田口佳史編 



 
 

義母作の折り紙
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第171回 『有名無力、無名有力』(安岡正篤)

2024年12月30日 | 日記
【人生をひらく東洋思想からの伝言】
 
第171回

『 有名無力、無名有力』(安岡正篤)

東洋思想の研究者であり、昭和の時代に政財界のリーダーたちの精神的支として活躍され、

国民的教育者として知られた安岡正篤先生。

混乱した時代に、私達日本人としての方向性や在り方に多大な影響を与えて下さった

素晴らしい方であります。

沢山の貴重な著書を通じて学ばせて頂いております。

 

その安岡先生が、当時このような言葉を述べられました

「有名無力、無名有力」


「人間は案外、有名になると無力になるものです。かえって無名であることが、有力であることが多い。」

本の中で安岡先生は、ご自身の体験から:

有名になると朝から電話が鳴り、

会合や義理での付き合いが多く、忙しくなり

食事もまともに食べられず

本当にやりたい事、勉強したいことが出来なくなっていったそうです。

「本当に偉くなろうと思ったら、なるべく無名でおらないといけません。これは私が無責任なことを言うのではなく、

私自身がもう悩んでいることです。」

またこの教えは特に若い人に向けられたもので:

「特に若い人達によく言う。有名になることを目指すのではなく、無名で有力であることを志し、

自分の力を磨き続けてほしい」

つい私も、有名になる事で、人間関係も含め、物、お金など必要なものがそろい、

有力になるような幻想をどこか持っていましたが、この言葉を知り、無名で有力であることの大切さ

そして安岡先生が仰っていた本質を考えさせられました。

そして、何のために有力になるのか?それは、社会のために、公のために尽くすためなのでは?

など、自問自答しながら残りの人生で何ができるかわかりませんが、一歩一歩進んでいきたいと思います。

少しでも社会のためにお役に立てるよう、精進していきたいと思います。

今年も、ブログでは勝手な独り言のようにつぶやいていましたが、

読んで下さり、励ましのメッセージなど有難うございました。

来年も、引き続きよろしくお願い申し上げます。

参考図書
『運命
開く』安岡正篤著 プデント社

寒川神社 大祓式
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