【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第33回
「徳とは何か?」(大学)
徳というものは、日本人においては非常に大切なものとして位置づけされています。
江戸時代までは幼少教育のテキストとして使われ、
リーダーたる人の心構えを説いた書物として『大学(だいがく)』というものがあります。
そこでは、リーダーが学ぶべきことは、
「徳を身につけること」だとされています。
その中で、有名な一節として下記のものがあります。
「大学之道、在明明徳」(大学の道は、明徳(めいとく)を明らかにするにあり)
東洋リーダーシップ論の第一人者の田口佳史先生は、
徳についての概念として、次のように表現しています。
「徳とは、自己の最善を他者に尽くしきること」である。
そうすることで、相手からは自然と感謝され、いい人間関係が構築される。
一番、人として大切な在り方の基盤になることだと思います。
田口先生によると、かつて日本では徳という字に「いきおい」とルビをふることもあったそうです。
つまり、自己の最善を尽くして積んだ徳は、その人に勢いを与える。
他者に尽くしてきたからこそ、自分が困っている時に協力や後押しがもらえる。
不思議なことに、ラテン語のvirtu(英語のvirtue)も「徳」を意味するとともに、
「生きる力」や「勢い」という意味があるそうです。
私も沢山の創業者や起業家の方々にお会いしてお話を聞いてきましたが、
成功され人間的にも素晴らしい方々は、「しばしば幸運に恵まれて他者からの後押しを受けた」、
「たまたま人に紹介されて」、「偶然にも助けてもらって」、「ひょんなことから」
などという表現をされる方々多かったように感じます。
これは、決して偶然ではなく、日頃からその方々が徳を積んできたからのことであり、
その賜物だと思います。
事業というものが、最終的に「徳業」というものとして、
徳を基盤とした事業というものが社会で求められるように感じます。
私も、少しでもそのような状態に近づけるように 徳を積み、
これからも日々精進していければと思っております。
参考 (『リーダーシップの旅』 野田智義 金井壽宏著 光文社新書)
*写真は、JR辻堂駅近くにある、二宮尊徳さんの像です。
二宮尊徳さんは、いつも大学をむさぼるように読んでいたそうで、
歩きながら読んでいた本は、「大学」だといわれています。