【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第60回
「無事」(仏教)
無事(ぶじ)という言葉、実はこれも仏教の言葉になります。
一般的には、挨拶の中で「ご無事ですか」などと日常会話で使われています。
この時の意味としては、何事もなく、災いもなく、
お元気ですかという意味合いとして使われています。
お身体は大丈夫ですか、仕事が順調ですかというニュアンスになります。
一方で、仏教語としては、身体的というよりも、精神的な一面の事を現しています。
わずらいがないことで、すべてのもとに こだわりを持たずに、
ひっかかりがない心の状態を現しています。この心の状態にあり、
人間本来の姿に徹して生きている人、悟りに達していて
何もなすことがない人のことを「無事(ぶじ)の人」というそうです。
また、「無学(むがく)の人」とも言われるそうです。
一般的には、無学とは文字が読めない、教育がなく、
教養がないという意味合いとして言われますが、
仏教でいる無学とは、もう学ぶことがなく、
なすべきことを すべて終えたということだそうです。
これを知ったときには、言葉の本質とは本当に深いなと感じました。
無事とは、求めるべきものもなくなり、行うべきこともなくなった境地の
まさに悟りを得た達人の域の事をいうということになります。
まだまだ、私自身は無学の人という域には程遠いので、じっくり学びを深め、
実践を重ねながら、この過程を楽しみながら少しでも近づいていけるよう
精進していきたいと思います。
参考文献
『ブッタの教えがわかる本』服部祖承 大法輪閣