松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ボランティアとNPOの間(相模女子大学)

2016-05-25 | 1.研究活動

 この日のボランティア論は、ボランティアとNPOの間という問題を考えた。

 この論点は、一般的には、両者の違いを説明するものである。特に大きな違いといえるのは、善意性、無償性、組織性などである。しかし、私のボランティア論は、善意性や無償性は、基本的な条件とは考えないので、両者は、どこが違うのかという問題に突き当たることになる。 

 答えはいくつかあるだろう。ボランティアは、NPOの核のようなもので、NPOはボランティアを包摂するものとするものととらえる見方、それとも関連するが、組織性に注目して、個々の個人に注目するのがボランティア、組織として活動するのがNPO、あるいは比重の置き方が違うくらいといったものである。

 明確な答えを持っていないので、この日は、NPOという考え方がボランティアに与えた影響という観点から考えてみた。

 日本の新聞にNPOという言葉が出るのは、1991年であるが(日経4紙)、その後、ブームとなって、新聞紙上にNPOの文字が躍るのが、1997年である。阪神淡路大震災の後である。このように、NPOという考え方が、日本で知られるようになって、ボランティアの考え方が影響を受けたというのが、この日の仮説である。

 同時代なので、体験的によくわかるが、まず注目されたのは、社会性の広がりというか、社会的影響力の大きさである。これはボランティアの場合、相対の関係が強いが、NPOが相手とするのは、社会やある種のまとまりだからである。

 それが政策性の強さになって表れる。社会やある種のまとまりを相手とするので、政策性が生まれてくるのだろう。その政策性を支えるのが、NPOの収益活動、組織性だということになる。ここが、当時、あっと驚かされたところである。

 NPOの出現で、一部のりっぱな人、お金持ちのできることだったボランティアが、誰にでもできることになった。NPOとは言えない、個々の市民が、ゴールデンウィークで海外に遊びに行く代わりに、三陸海岸や熊本に行くようになった。ボランティアの市民化を進めたのは、NPOの出現が大きいだろう。

 これだけボランティアが増えてくると、高い意識に基づく自主性や、社会のため、他人のためという他利性だけでは説明できなくなるなかで、ボランティアの動機をめぐる本格的議論が必要になる。

 実は、この難問を今回の授業で紹介しようと思っていたが、まさに難問で、とても間に合わず、そこで、NPOを詳しく説明することで、一息ついたというか、時間を稼いだというのが、今回のボランティア論である。

 私は、授業評価では、「シラバス通りか」という評価項目は、いつも評価が低いが、これは、授業などで触発されて、今回のように、どんどんと別の道に進んでしまうからである。来週は、がんばろう。

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