松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆新城市の位置(新城市)

2015-08-29 | 1.研究活動

 新城市における議員研修会の補足。研修会では、政策づくりの話の最初に新城市の位置について話をした。新城市全体に自信を失っているように感じたからである。エールの意味を含めて、やや時間をとって新城の位置について話をした。補足を含めて、敷衍しよう。

 私は、年間に100日くらい、全国の自治体に出かけ、市長さんや職員の方々、あるいは市民の皆さんとお会いし、議論し、一緒に仕事をする。その中で、新城市は、きらりと光る自治体である。若者政策をはじめ、全国の自治体をリードする政策もあるが、何よりも私が評価するのは、自治の未来を見据え、真正面から自治の基本に取り組むまじめな姿勢である。相撲で言えば、がっぷり四つの本格的な取り口を高く評価している。

 例えば、若者政策であるが、若者政策に対して自治体をあげて「本格的」に取り組んでいるのは、新城市だけである。本格的というのは、若者を賑やかしの対象としてとらえるのではなく、自治が持続し、活性化するには、若者のまちづくり参加がキーになるが、その点を真正面に据えて、取り組んでいるからである。

 私は機会があると、あちこちの首長さんに若者政策の意義を話すが、うまく理解してもらえないことも多い。また理解してもらっても、それを政策の真正面に据えようと考える首長さんはほとんど出てこない。なぜなら、若者政策はリスクがあるからである。

 若者政策を打ち出すと、必ずでてくるのは、困っているのはむしろ高齢者だという声である。この意見は、選挙によってえらばれる市長さんたちにとっては、結構、厳しい。実際、選挙を見るとわかるが、若者の投票率は、高齢者の半分である。さらには投票者の絶対数も若者のほうが少ない。だから、若者向けの政策は分が悪く、高齢者によい顔をしない首長は、選挙で不利になるからである(シルバーデモクラシーの問題である)。かりに自治の未来という点からは若者政策が大事だと考えても、選挙のリスクを考えると、二の足を踏むということになる。

 ところが、新城市では、穂積市長さんは、マニフェストの第一に若者政策をあげた。さらに、若者政策を具体化する政策を次々に展開している。こうした例は、全国では見たことがない。そのセンスとともに、マニフェストの第一に挙げる勇気はすごいと思う。

 ついでなので、穂積さんについて、ひとこと書くと、この人は、人の悪口や恨み言を言わない人である。ざっくばらんのくだけた席でも、聞いたことがない。要するにセルフコントロールができるのである。自治経営は、思いの通りにはいかないことが多いので、ついつい人の悪口や恨み言のひとつも言いたくなるだろうが、それを包み込むことができるかどうかが、リーダーの条件である。

 なぜならば人の悪口や恨み言を言う人は、苦しい場面にあたると、必ず人のせいにするからである。困ると、国が悪い、県が悪い、誰それが悪いという。聞いているこちらが恥ずかしくなるときがある。自分はそれで気が済むかもしれないが、人のせいしても、本来の問題は解決しない。それどころか、リーダーのそうしたふるまいは、住民に伝播し、依存民主主義がますます進むことになる。

 これは自治では、もともと100%ということがないからである。人々の暮らしはさまざまで、思いもさまざまだからであるが、それをくみ取りながら、より適切な判断を下すことが求められる。そこには冷静な判断、絶妙なバランス感覚が必要になる。感情的になると、どうしても判断を誤ってしまう。

 政策を巡って、新城市の位置については、やや補足も含めて、大要、以上のような話をした。もちろん私とは違う評価をする人もいるだろう。ただ、これは全国の自治体をたくさん見てきた私の経験に基づく意見である。

 最後に、議員さんから質問を受けた。新城市の進むべき方向についてである。私の意見は、自治の問題に本格的に取り組んできたという、これまでの実績を活かした、知的で文化度の高い、ハイブローなまちづくりを目指すというものである。むろん、こうした無形の価値は、市長一人で作ってきたものではなく、穏やかで、はにかみながらも、現場で着実なまちづくりを進めてきた新城の人たちこそが創り上げてきたものでもある。それを議員さんたちも、大いに励まし、後押しするように、大いに奮闘してもらいたい。

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