松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆部分的正義・全体的正義-旅費法の日当から派生して(三浦半島)

2018-06-16 | 1.研究活動
 マニアックな話から、大きな話になってきた。要するに大局的に見ることの重要性を示唆するものである。

 旅費法の日当を調べていたら、河野太郎さんのブログに、行政改革の取り組みが出ていた。とても、いい記事なので追記しよう。要するに、「百円安くするために時給千円の職員が莫大な時間をかけてチェックしている」といったことをやめて、統一ルール、定額支給にするというものである。

 これはコスト全体を考えたら、「諸雑費の発生の有無にかかわらず、日当の半額を支給」した方が得なので、それに統一しようという考えである。これに対して、「中には、得した者も出るので、おかしいではないか」という批判も出てこよう。

 これは部分的には正しいので、これまでは、この批判に答えられるように、膨大なコストを使っていた。100円少なくするために、おそらく1万円以上の時間コストをかけていると思う。

 この記事を読み、最初は、大臣が随分細かいことをやるのだと思ったが、こうした市民からの部分的正論を飲み込んで、全体的正論を実現するには、リーダーのリーダーシップが必要という例なのだろうと気が付いた。むしろ、自治体でもこそ、学ぶべきことだと思う。声の大きい部分的正論を意識するあまり、全体的正論が行われていないという場面もあるからである。

 他方、注意すべきは、政府は、企業ではないので、経済合理性だけで動くわけではなく、コスト的には損でも、正義を貫かなければいけないこともある。

 そこが難しいところであるが、だから、正義の重要性・大きさと経済的利益(損失)との見合いのなかで、ケースごとに決定していくことになるだろう。

 その際、大事なのは、全体的な観点に立つという視野を持ち、正義と経済のそれぞれの根拠(裏付け)を明確にしたうえで、比較考量し、決めたら、自信をもって説明することが求められるということなのだろう。

2016.08.01
 行革事務局を中心に、各省庁の協力を得ながら、国の業務の見直しに取り組んできました。
 その中でも旅費・会計業務の見直しに関しては、今回、徹底的に行いました。

 国家公務員が出張した後、旅費が支払われるまでに三か月以上かかることも珍しくなく、職員がその間、立て替えなければならない状況でした。
 また、精算にはたくさんの添付書類が必要で、事務作業も非常に煩雑でした。

 霞が関には旅費を精算をするためのシステムがすでに導入されていますが、旅費精算業務の実態を調査することなく、また、各省庁の違いもそのまま放置されていたため、非常に使いにくい、非効率的なシステムになっていました。

 そのため今回、各省庁の協力を得て、徹底的な旅費精算業務の調査を行いました。
 その結果、旅費の支払いが一か月以内にできたのは四割未満、三か月以上かかったのは約一割。
 多数の担当者が同じ項目をチェックし、旅費の計算システムの結果の手修正が続出していました。
 つまり、旅費を百円安くするために時給千円の職員が莫大な時間をかけてチェックしているというのが実態でした。

 そのため、付加価値の低い業務に要している時間をより付加価値の高い業務に振り向けることが真に国民のためになり、また、経済的でもあるとの理念に立ち、トータルコストを最小化す るための職員の意識改革と業務処理の改善を行いました

 例えば、現在のシステムでは時間や乗り換えなどの利便性を考慮せず、ひたすら交通費が安いものを優先するようになっていました。
 これは表示ルールを決めてシステムを改修し、世の中で日常的に使われている合理的なルートをシステムで表示するようにします。

 また、交通費を削減するためにパックを使うことを勧めていますが、様々なパックを比較検討した上でないと決められず、また、パックの内容を確認するための添付書類が必要でした。
 今後は、その比較作業も合理化し、添付書類も大幅に削減して、確認作業が合理的にできるようにします。

 職員が出張先周辺にある自宅に宿泊した時の交通費の支給基準が各省バラバラで、霞が関に七通りのルールがありました。
 これを霞が関共通のルールに統一します。

 航空機を利用した出張をするときには、職員に私用ではない公務向けのマイレージカードを作らせていましたが、職員の多くは公務出張で活用できるほどマイレージを貯められていませんでした。
 しかし、それでもカードを作らせ、煩雑な管理が発生していました。
 公務出張により取得したマイレージを次回以降の出張でも使用することが見込まれる者に限りマイレージカードを作成させることに統一します。
 また、公務出張により取得したマイレージを私用カードに登録することは自粛するように求めますが、それをしていないことを確認することはやめます。

 出張した際に、目的地周辺を移動するための交通費に関しては、目的地が役所から百キロ未満は実費支給ですが、百キロ以上の場合には日当の半額を支給する役所と実費を支払う役所に分かれていました。
 今回、これを実費支給に統一します。

 また、昼食代などの諸雑費が発生したら日当の半額を支給するというルールになっていましたが、調査の結果、約九割で昼食代が発生していました。
 諸雑費の支給のための調査の人件費を考えると、諸雑費が発生するものとして日当の半額を支給すると決めてしまう方がコストが安くなるので、諸雑費の発生の有無にかかわらず、日当の半額を支給するというルールに統一します。

 また、これまで国の会計における支払業務は、役所の会計課長等がシステムを使って相手の口座に振り込む支出官払と、資金前渡官吏と呼ばれる特定の職員が小切手や現金などにより相手に支払う前渡官払の二種類がありました。
 支出官払の方が事務が効率的でかつ、手数料も安いため、1200万件ある前渡官払を支出官払に移行します。
ただし、捜査費など秘匿性のあるものや相手から現金渡しを求められているものは除きます。

 こうした一連の改革で、年間約196万時間の作業が軽減され、約26.5億円分の人件費に相当する業務が合理化され、その分、付加価値の高い業務を増やすことができるようになります。
 また、この改革で交通費の支出も削減されることになります。
 
 不要な業務をいかに止めていくか、これからも政府の行革にしっかりと取り組みます。
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