松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙㊴立候補予定者のための行政支援窓口(三浦半島)

2017-08-18 | 1.研究活動

  前にも紹介した千秋在住というのブログで、公開政策討論会で、立候補予定者が、それぞれの政策を競い合う仕組みは、多くの情報やコネを持つ、現職に有利で、新人には不利ではないかという指摘があった。

 実は、この問題は、マニフェスト選挙が始まったときも、同じ議論があった。マニフェストには、政策の達成時期や数値目標を示すことになるから、情報量等の点で、「現職有利、新顔不利」になるのではないかという批判である。

 しかし、実際の選挙結果は、必ずしもそうならず、むしろ現実を踏まえてたマニフェストをつくった現職は迫力がなく、他方、既存の政策の延長線から逃れた新人のマニフェスト(?)のほうが、住民から支持されたという結果も出ている(しかし、実際に市長になると、マニフェストは撤回に次ぐ、撤回となる)。

 マニフェストの場合、書いてある文章を比較し、その裏付けを検証する機会がなくて選挙になるから、地道な政策よりも派手な政策のほうが魅力的になるかもしれない。他方、今回の公開政策討論会は、その裏付けが選挙前に検証にさらされるので、本当にできるのか、どうやってできるのかが具体的に問われることになる。その意義はとても大きいが、たしかに何もしなかったら、現職のほうが有利かもしれない。

 本来ならば、公開政策討論会は、情報量という点で現職有利になるはずであるが、現実には、新人が公開政策討論会をやろうと提案すると、現職が逃げ回って、実現しないパターンがこれまでだった。現職の立場では、十分に達成できていない政策もあり、そこを新人に批判されるのが嫌で、逃げ回るのである。これに対して、今回の新城市のケースは極めて稀なケースで、現職市長と現職議員が、むしろ公開政策討論会に極めて積極的で、逆に、市民である新人のほうが消極的という構図になっている。

 これは、今までのような「笑顔と握手」、「名前の連呼」の選挙をやっていたら、「もう駄目だ」という問題意識を、現職であるが故に持ったことが、公開政策討論会を推進する原動力になっているのだろう。こうした条件がそろうことは、滅多にないので、このチャンスを活かさなければと思う。

 さて、指摘の情報量の差についてであるが、

 ①まず、市長に出ようというのであれば、あちこちに顔を売るのもいいが、その前に、市政情報を調査し、全国の先進事例を調べ(今はネットでいくらでもできる)、疑問があれば、市役所の担当課を訪ねて、あちこちで議論して、つまり時間をかけて、よく勉強したうえで、市民の期待を裏切ることのない政策を提案してほしいと思う。新人なら、現職の二倍、勉強するくらいの意気込みでやってほしいと思う。それが挑戦者だと思う。これは、議員に立候補しようとする人も同じである。

 ②今後、公開政策討論会の制度化を考えていく際には、市長立候補予定者や議員立候補予定者が、政策立案や勉強を行うのをサポートする仕組みを考える必要があるだろう。「立候補予定者のための行政支援窓口」の設置などがその例である。立候補予定者たる者は、この窓口に何度も通い、どんどん力をつけていく、そうなれば、選挙も変わっていくだろう。

 新城市の公開政策討論会の取り組みは、新城市だけにとどまらず、日本の自治の新しい文化と制度をつくるものとなっていくと思う。期待を込めて、新城市の動きに注目している。

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