分権時代になり、あるいは自治体消滅時代になって、地方議会・議員の頑張りが期待されている。そうした中、議員のあり方をこれまでの延長線で考えることも必要であるが、もはや待ったなしの状況では、これまでとは違う、あらたな発想が必要ではないか。それが標記の自治体職員の兼職である。
これは地方議員への参入障壁を低くする試みである。では、なぜ議員への参入が容易ではないのか。
①むろん家庭や人によってさまざまであるが、子どもたちは、親や社会から、勉強して一流大学に入り、大企業や役所に入ることがよいというプレッシャーのなかで育っている(むろん、例外もたくさんあるが)。なぜ、大企業や役所なのか。それは安定しているからである。一生勤められるからである。他方、議員は、4年の任期制である。落選すれば無職になる。こうした社会全体の風潮の中で、安定を望まず、あえて任期制の仕事に向かうのには、積極的・消極的さまざまな理由があると思うが、少なくとも、数は少数であることは間違いない。
②議員の被選挙権は25歳である。22歳で大学を卒業し、数年勤めないと、被選挙権がないということである。せっかく入った会社や役所を辞めて、わざわざ議員になろうと考える人も、全体にはきわめて少数になるだろう。
③地方議員の職業を聞くと、「農業」や「建設業」と答える人が多い。いつ選挙に落選するか分からないし、給料もそう高くないから、他の仕事がないと地方議員にはなりにくい。他に職業があり、しかも、議員との両天秤でできる職業ということになると、さほど多くはなく、ますます、この条件に合う人は限られてくる。
数が、少ないということは、それだけ選択肢が狭まるということである。安定期ならば、それでも何とかなるが、難しい時代になると、その難局を乗り切れる人が必要になり、その人を見つけるには、分母が大きいほうがよいのは当たり前である。江戸時代でも、幕末になると、門閥ではなく能力主義になる(勝海舟は、安定期ならば、ずっと無頼の徒のままである)。
そこで、270万人いる地方公務員を分母にしたらどうかというのが標記の提案である。地方自治に知識や関心もある。志も全体に高い。ちなみに自治体職員の地方議員の兼職は、世界では珍しいことではない。フランスもドイツも、自治体職員は、自分の自治体以外の議員ならなれるようだ。
自治体職員も議員しようということになると、民間企業の従業員ももっと容易に議員に出れるようにしようということになる。分母がさらにぐっと広がることになる。こうした新規参入が増えてくると、既存の議員さんも、負けていられないと、切磋琢磨が始まるだろう。
このような改革には、当然、ある程度のデメリット・弊害もあるだろう。しかし、それには個別の対応をすればよい。また、理屈通りにいくか、やってみないと分からないという面もあるだろう。これは特区でやってみたらよい。自民党は、地方創生を掲げているが、こうした思い切った対応でなければ、地方創生は覚束ない。
追記
地方創生は、統一地方選挙などの選挙目当てだと言う報道もある。もしそうならば、既存の地方議員に喧嘩を売るような標記のような改革は俎上にあがらないであろう。政治の力量が問われている。