松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆住民投票制度は、なぜ二流の制度なのか

2012-08-30 | 1.研究活動
 住民投票制度について、いくつか書いてきた。繰り返しになるが、いま一歩、踏み込んで書いておこう。
 住民投票は、参加の民主性という点では優れている。だれでも、投票に参加できるからである。
 ①弱点は、決定の権力性である。つまり、多数が少数を数の力で押さえつけてしまう。数で決まったから従えというのである。しかし、これは民主主義社会ではやっていないことと、私たちは教わってきた。よく話し合い、相手の言い分も聞けと教わってきたのである。その基本を見失ってしまっている。住民投票を声高に主張する人たちの持っている、ある種の権力性(非妥協的な雰囲気)には、私は戸惑うことが多い。
 ②お任せ民主主義を助長するという点である。たしかに住民投票で参加の当事者になれるが、この制度は決定したことに責任を取る人がいないシステムだからである。少数者の立場からは、判断の間違いを訴えたいところであるが、多数者の市民は、訴えの当事者にはなってくれない。責任を取ってくれる人がいないのである。多数者によって権利を侵害された考える人たちは、訴えの持って行き所がない。みんなで決めたことだと言って、少数者を黙らせることは、決して良いことではないと私たちは学んできた。この制度は、結果として、民主主義を強化するよりも、言うだけ民主主義を助長しているように思える。
 ③この制度は、いよいよせっぱつまって、一か八かの時の制度である。考えて考えて、議論して議論して、いよいよ甲乙つけがたいとなったときに、使う制度である。その意味では、「住民の5分の1」といった数字は、本質的な発動条件ではなく、「議論を尽くしても決めきれなかったとき」というのが住民投票の発動条件になるのだろう。条文にどのように書くのかは難しいが、そういうことではないか。
 ④新城市の市民案では、住民投票の前には、市民が集まって一度きちんと議論する機会をつくるという条文が提案されている。それによって、話が進めばいいし、投票することになっても、利害得失を考えて投票することができるようになる。
 率直なところ、この制度の魅力が私には、いまひとつである。住民投票に莫大な税金を使う前に、行政や議会がその役割を存分に果たすようにし、市民も本来の持っている市民力を発揮できるようにするために、税金を使ったほうがいいように思う。

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