松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆定住自立圏構想(米子・松江)

2011-03-01 | 1.研究活動
 学生14人を連れて米子・松江に行った。目標はいくつかあるが、米子では定住自立圏の話を聞くことである。
 日本は、現在、いびつな国になっている。人口でいえば、太平洋側+3大都市圏に人が集まりすぎ、日本海側は人口減少・高齢化が著しい(日本海側最大の都市は新潟市で人口は79万人に過ぎない)。このままでは、東京ばかりに人口が集中し、地方には人が住まず、それが最終的には、東京の滅びにつながることになる。そこで、地方が自立して暮らせる国土計画が定住自立圏構想である。
 米子・松江地区は、中海を中心とする定住自立圏である。鳥取と島根の両県にまたがる地域で、市民の生活圏と行政区画がずれているところが面白い。
 県域が違うために、現在では、それぞれの県ごとの施策となる。たとえば、この地区を訪れる観光客からみれば、鳥取県の大山や皆生温泉を訪ね、島根県の松江や出雲を訪ねるのは普通のルートであるが、現在の県境を基本に行政が観光を組み立てると、鳥取県東部の鳥取砂丘と西部の米子をつなぐという話になる。
 中海定住自立圏の事例は、これまでの行政を基準とする組み立てを転換して、市民の生活を基準に組み立てるという試みでもある。自治の時代において、さまざまな分野で、こうした発想の転換が求められるが、その意味で、中海定住自立圏は、重要な意味を持っている。そんなことを考える機会になればと思って、時間をとってもらったのである。
 今回は、米子市役所で自治基本条例づくりを一緒にやっているYさんが説明してくれた。約1時間の説明の後、学生たちにポストイットに疑問点を書いてもらい、それに答えるという方式をやってみた。学生からも、いい質問がたくさん出て、充実した時間となった。忙しい中、協力していただいたYさんたちに感謝したい。
 終了後、さきほどの話を振り返りながらの帰り道、学生の質問が面白かった。「先生、Yさんは薬指に指輪をしていましたね」。「どこを見とるんじゃい。いい男はみな結婚している」。「分かっています」。
 定住自立圏の紹介で、最後に紹介したケネディの言葉が、いかにもYさんらしい。「あなたの国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるのかを問うてほしい」。要するに、こうした社会に転換していくことが求められている。

 この日、私は学生たちと別れて、米子発の最終便で帰ることになった。空港で来週講演会をやる広島県庄原市の人たちと打ち合わせをしていたら、Yさんとおなじみの和尚さんが、空港まで見送りにきてくれた。いつもながらの心遣いで、ありがたい。
 5人で、しばし自治基本条例の話となったが、私とは別の視点で実践的なアドバイスをしてもらい、もっとも得をしたのは、庄原市の人たちだと思う。
 お土産は、多数のため、報告は省略。

 雨に煙る松江城
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2 コメント

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Unknown (hoti-ak)
2011-03-03 21:29:32
ご無沙汰をしています。
定住自立圏構想は、身近な話題で注目しているのですが、財政的な措置を除けば、具体的な取組内容自体は、この制度に乗せなくてもできることなので、では、この制度がどれ程意味があるのだろうかと思案しているところです。もちろん、広域連携のきっかけにはなると思いますが。
今後ともよろしくお願いします。
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絆としての制度 (マロン教授)
2011-03-06 07:23:30
 こんにちは。お久しぶりです。
 中海定住自立圏を説明してくれたYさんは、これを市民の自律と新しい絆で説明されていました。私も、共感しています。定住自立圏は、住民自治を高めるひとつのツールということでしょうが、逆にこうした目標や基盤がないところで無理に構想を作っても、制度の意義は生きてこないということでしょうね。
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