松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ヤングケアラー法①・「過度に」行っている子ども・若者

2024-06-07 | ヤングケアラー

 ヤングケアラーが法制度となり、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義された。

1.ヤングケアラーの現状
 国の全国調査によれば、次の通りである。
・世話をしている家族がいる 小学6年生(6.5%)、中学2年生(5.7%)
・ケアの頻度を「ほぼ毎日」している 小学6年生(52.9%)、中学2年生(45.1%)
 ・平日1日あたりのケアの時間が3時間以上 小学6年生(29.9%)、中学2年生 (33.5%)

 こうした背景から今回の法改正で、ヤングケアラーが法律に位置づけられた。

2.法改正は子若法の一部改正として
 ヤングケアラー条例がいくつもあるので、独立の法律になるのかと思ったが、子ども・若者育成支援推進法(子若法)の改正法として制度化された。
 この法律の対象者として、従前の「修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者」に加え、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」(第2条第1項7号)が入れられた。

3.問題とされているのは「過度」
 「過度に」家族の介護その他の日常生活上の世話を行っているとすることで、政策の対象とすべきヤングケアラーが抜け落ちてしまうのではないかとの懸念である。
 他方、「過度」をとってしまうと、明らかに広すぎる。
 なので、「過度」はおかしいと批判する際には、それに代わる対案を示す必要がある。

4.それまでの定義
 それまでは、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども」(こども家庭庁ホームページ)と言っていた。私は、なぜ、これを法律の定義にしなかったのか。ぜひ知りたいと思う。

5.どのように考えていくのか
 定義は、なぜヤングケアラーを問題とするのかに遡って考えていく必要がある。

 ・ヤングケアラーはかわいそう。
  テレビ等で紹介されるのは、そうしたケースが多いし、たしかにその一面はあるが、自分は当たり前のことをしていると考えて世話をしている子ども・若者も多い。
  かわいそうから出発すると、「過度」という主観性のある言葉は、「自分たちはあたりまえのことをしている」だから「過度」ではないと考える子ども・若者が出てしまうだろう。

 ・ケアラーには、老老介護(高齢のケアラーが高齢の要介護者を介護する)やビジネスケアラー(仕事をしながら家族の介護に従事する)などがあるが、ヤングケアラーが、ケアラーが、子ども・若者ゆえに、人格形成、学業・教育、将来の選択肢(進学や就職など)に大きな影響を与える。子ども・若者らしい暮らしができないことから起こってくるキズや歪みが問題だと考えている。

 そう考えると、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている」ため、人格形成、学業・教育、将来の選択肢(進学や就職など)に影響が出てきてしまうため、これに対応する施策が必要だということになる。こちらの方が、より客観的だし、対応する施策も救援・保護的な施策に限らず、幅広になる。

6.過度をめぐっては、運用基準が示されるようだ
 過度に対する懸念を受けて、過度が過度に限定されないように、運営基準が示されるようだ。これがきちんと示され、きちんと運用されれば、5で述べた懸念は減少されるだろう。

7.子若法の仕組みをうまく使ってほしい
 ヤングケアラーが子若法の改正法としてつくられたのは、どうかと思っていたが、逆に考えると、子若法の強みを活かすという手もある。子若法は、課題解決の施策メニューが幅広なので、うまく使えば、前に進んでいく。
 ただ、ここでも、きれいな制度があるのから、それで大丈夫ということではなく、その制度を支える人や財政等の裏付けをきちんと用意できないと絵に描いた餅になる。「支える人を支える政策」がやはり重要である。


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