松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆職員のための損害賠償保険(横浜市)

2012-05-31 | 1.研究活動
 横浜市の地方自治法研修も3回目になると、どんどんとマイペースになる。当初は、たんたんと地方自治法の条文を紹介しようと考えるが、当然のこととして、そうはならず、脇道、脱線が多くなる。今回もたくさんの脱線になったが、その一つが、「二度と声がかからなかった研修」という話しである。
 私は、たくさんの研修を頼まれ、一度頼まれると継続することが多いが、唯一、二度と声がかからなかった研修がある。それは、世上、いろいろなことが喧伝される某市で頼まれたコンプライアンス研修である。そこで、私は「法を破るのがコンプライアンスである」と言ってしまったためである。
 実際、これは正しいことだと思う。法を破るとは聞きづてならないが、要するに、法を地方自治の理念に適合するように、つまり、市民が抱える課題を解決できるように解釈することが、真のコンプライだからである。法の文言に拘泥していると、結局、市民にとって不幸になる場合がある。そうならないように、自治の立場で判断し、行動することも大事と言いたかったのであるが、この町では、それ以前の、ともかく法を守ることが急務ということで、私の話は、やや応用問題が過ぎたようだった。それが、「松下はコンプライアンスは不適当」という評判になったのだと思う。
 私が現役時代、ほとんど意識せずに済んだのが、住民訴訟である。形式的には、法の文言には触れているかもしれないが、実質的には法の趣旨に合致するのは何かを考えて仕事をしろと教わってきたからである。実際、だれも、法の文言に抵触しているなどと文句を言ってこなかった。仮に言われても、組織が守ってくれるという安心感があった。ところが最近の「コンプライアンス重視」の風潮の中で、思考停止した議論がまかり通り、職員一人ひとりが、損害賠償を意識せざるを得なくなってしまった。
 言葉尻をとらえて、訴訟を起こすというのは、市民自ら、首を絞めているようなもので、自滅行為のように思うが、それがあるのも現実であるので、それゆえ、きちんと防御することも必要になる。それが、法を学ぼうとする動機づけになり、また、職員向けの損害賠償保険が隆盛になる要因なのだろう。今思うと、何度か危ない橋をわたったことを思い出すと、ヒヤッとするが、クールビズの時代、ちょうど良いくらいのかもしれない。早くやめてよかったと思いながら、壇上で、地方自治法を講じている。
 ちなみに、大阪府には、職員の職務上の行為で損害賠償請求訴訟になった場合、勝訴すれば弁護士費用の一部または全部を役所が負担してくれる制度があるという(職員等の職務上の行為に係る損害賠償請求訴訟に係る弁護士費用の負担に関する規則、(平22規則54))
 これは、「弁護士費用の全部又は一部を府が負担することにより、職員等が職務に精励できる環境を整備し、もって府政の円滑な推進に資すること」が目的である。
 ともかく社会全体が、つまらぬことで、揚げ足を取り、職員が職務に精勤できないような状況をつくっているのが本当に不思議である。
 地方自治法は、あと1回、脱線をせずに頑張ろう。このままでは、「松下は地方自治法は不適当」という評判になるかもしれない。
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