松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆附属機関条例主義を考える②立法趣旨

2018-12-29 | 1.研究活動
 なぜ138条の4は、附属機関条例主義を採用したのか、なぜ条例(議会の関与)としたのか。今度は、立法趣旨から考えてみよう。

1.世上言われているのは、①濫説、②行政の隠れ蓑、③不透明等の防止である。

 裁判所は、「多様な附属機関が設置されていたものと推測されるところ、上記制度趣旨は、これらを整理し、首長による附属機関の濫設置を防止すること、又は、議会の民主統制を及ぼす必要があることを、以上をもって首長の組織編成権に制約を加える点にあるものと解される。」(松江地裁判決)

 学者は、「行政側の隠れみの的役割による行政責任の不透明化・濫設による行政運営の非能率化・委員人選の不公正や不透明性などの問題点も指摘されている。もっとも附属機関条例主義には、そのような問題の発生を防止するため議会が統制機能を果たすという点からは、一応、積極的な意義を認めることができるであろう」(稲葉馨)

2.立法者意思を見ると、
 昭和27年の地方自治法改正の際の国会審議では、1とは違う立法者意思である。「附属機関は条例でも附属機関を置くことができるということを明らかにいたしますために、「又は条例の定めるところにより」という規定を入れたのであります」(昭和27年5月14日第13回国会参議院地方行政委員会における長野地方自治庁行政課長答弁)。

 つまり、提案者は、附属機関は自治体が独自に設置することができるかどうか疑義があったものを「又は条例の定めるところにより」という規定を入れることで、立法的に解決したものと答弁している。この立法者意思から見ると、設置根拠を限定して、要綱ではだめで条例によるべきとしたものではない。

3.どのように考えるか
 ①濫説、②行政の隠れ蓑、③不透明等の対応策という意味は、立法者意思とは違うが、立法者意思に拘泥すべきではない。
 たしかに、実際、附属機関をうまく使って(要するに、専門家が検討した、市民が大勢で検討したという理由で)、議会や関係者を説明、説得するということは行われてきたし、私も体験がある。附属機関の設立を議会にかけないといけないとすると、確かに簡単には設立できなくなる。このように考えれば、附属機関条例主義も、積極的な意味があるといえる。

4.しかし、これら理由は、今日でも通用するのか。もう少し考えてみよう。
(1)濫説
 行政に任せておくと濫説されるということであるが、これは「いつの時代やねん」という突っ込みをいれたくなる。今の厳しい時代、行政と言えども、簡単に附属機関はつくれない。
 もう少しいうと、たくさんあると、なぜが悪いのかということでもある。たくさんあった方が、いい政策ができる。もし濫説と考えたら、議会が頑張って、予算審議で、どんどんやればいい。

(2)行政の隠れ蓑
 専門家等の権威をかさに着て、行政の意向を通すということであるが、内容がおかしかったら、どんどん批判すればよい。内容がよかったら、より良い行政になるわけで、隠れ蓑ではなく、ありがたいことではないか。
 専門家を頼らず、行政は自分たちで勉強しろという意見もあるが、私の両親は、「立ってるものは親でも使え」とよく言っていた。使えるものはどんどん使った方がいい。
 市民を巻くこむのも同じである。行政任せから、市民も公共の当事者になる時代において、どんどん巻き込んでいくべきである。

(3)不透明
 これも「いつの時代やねん」である。今では、資料も発言内容も公開される。傍聴も自由である。

 要するに、附属機関条例主義の実質的な根拠となっている事柄は、ひと時代前ならば当てはまるが、今日の状況では、大した問題点とは言えないというのが私の主張である。要するに、「いつの時代やねん」である。職員も削減され、他方、仕事は増えている時代にあっては、行政は、知恵や知識、経験を持っている人たちを巻き込み、どれだけ、そのパワーを活用できるかが勝負となる。附属機関の設立にブレーキをかける考え方は、時代とずれている。

5.このように立法趣旨が揺らいでいると考えると、附属機関条例主義は、限定的に考え、附属機関の設置は、条例でなくてもよい場合があると考える。
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