松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆熟議の市長選挙59・常設化に向けて⑤立法事実をめぐって(新城市)

2018-01-08 | 1.研究活動

 ようやく時間ができて、途中になっている課題に取り組み始めた。

 隣のマンションの空き店舗にケーキ屋さんが引っ越してきた。若い人たちが、それまでは、お客さんが2人入ったら、もう満杯という店で営業を始めたが、1年強で人気店になり、いつも外に人が並んでいる店になった。店のなかでは、若いパテシエが4,5人、狭い調理場で、肩をぶつけるように、ケーキを作っていた。たくさんのお客さんが来るので、もうかって、今度の広いところに引っ越してきたのである。クリスマスイブは、新店舗を仮店舗に営業していたが、連れ合いがケーキを買いに行ったら、50人位が並んでいたとのことである。

 正式開店は、1月15日以降のようで、新しい店は、内装工事中であるが、マロンの散歩の途中で見ると、張り紙には、「8日から仕込みをするので、15日には営業できる」と書いてあった。ケーキ屋さんもそんなに準備期間がかかるのだと、初めて知った。

 何を言いたいのかというと、公開政策討論会条例の常設化に向けての議論は、たとえ、ブログであっても、少し考えて、かつ調べて書かないと、簡単には書けないということである。つまり、年末までの原稿の嵐のなか、すっかり、この問題にもご無沙汰してしまったため、こちらも「仕込みをしてから」また書きますということをいいたいのである。

 回りくどい話であるが、ともかく、若い人たちが、商売を始めて、それが受けいれられて、さらにお店を大きくすることは、とてもうれしいことなので、ここで書いたということである(マロンの散歩でお店の人に出会うと、気持ちの良い挨拶をする。気持ちの良い挨拶をするのは、こうした若い人たちと、おばちゃんで、地方自治で、一番、問題なのは、ろくに挨拶もせず、重箱の隅をつつくような、後ろ向きな議論ばかりする一部のおじさんたちではないか。正月、早々であるが、正直な実感)。

 閑話休題。

 条例づくりには、立法事実が重要である。立法事実とは、条例の目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民意識など)である。立法事実という用語のとらえ方は、広狭があり、自治体法務検定公式テキストには、「違憲ではないか、法律に矛盾抵触していないかについての裁判所の審査に耐えられる主張をするために、実務上、「立法事実の説明資料」が必要になります」(p46 平成23年度版)と書かれている。立法事実論は、もともと司法審査側からの言葉で、対司法審査を意識して使われている。

 この観点も大事であるが、条例づくりで大事なのは、書いたことがきちんと実行され、機能しているかどうかである。公開政策討論会条例で理想を示して、こうあるべきだと書くのは簡単であるが、やってみたら、ヤジと怒号の嵐で、討論会にはならなかったというのでは、条例を作ったことにならない。

 立法事実というと誤解されるといけないので、こうした裏付けを私は「政策事実」といっている。「ヤジと怒号にならないのか」といわれて、「そうならない」と自信を持って言えるのは、新城市だけである。告示前に3回、告示後1回の政策討論会を粛々とやったのだといわれると、誰も反論できないだろう。

 新城市だけ特別ではないかといわれるかもしれないが、この日本で、特別という自治体はなくて、しっかりした理念、ちょっとした知恵や工夫、仕組みを用意すれば、全国どこでもできるようになる。それを示すのが常設化とそのための議論である。

 私自身の反省としては、この公開政策討論会は、地方自治の活性化のために大事な仕組みで、ぜひともルール化したいと考え、2017年6月30日の白井さんの出馬表明から始まった、この問題には、積極的に発言し、前のめりの考え方を示してきた。山本さんの参加を待っていたら、時間ばかり過ぎてしまうので、「白井さんと穂積さんだけでも準備を始めたら」と書いてきた。それに対して、穂積さんは、一貫して、全員がそろってからという姿勢を崩さなかった。

 途中で気が付いたが、もし、私のように、見切り発車していたら、山本さんは入らず、「みんなが参加する公開政策討論会ができる。ちゃんとできることが、政策事実によって裏付けられてる。机上の空論ではない」と、自信をもって言える状況にはならなかったろう。念願の常設化の検討も、そこで沙汰闇になってしまったろう。穂積さんがそこまで考えて判断したのか、直感的にそう考えたのかは、今度会ったときに聞いてみたいが、言えることは、政治というのは、AかBかではなく、Bにも一理あり、そのよいところを取り入れていくことであるが(つまり簡単に切り捨てないということであるが)、それを現場でやっていることからできる判断だったということだろう。

 8日の日、マロンの散歩で、ケーキ屋さんの前を通ったら、真っ白のパテシエ服と白くて長いコック帽をかぶった若者たちが、にこやかに、楽しそうに作業をしていた。仕込みなのだろう。うれしくなった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇新年に(三浦半島) | トップ | ☆市外の人々を政策対象に(茅... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

1.研究活動」カテゴリの最新記事