松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆査読を頼まれる(三浦半島)

2016-12-26 | 1.研究活動

 私が所属する学会から査読を頼まれた。

 時々、学会誌掲載論文の査読を頼まれる。今回のキーワードは地域活動とフリーライダー。面白そうなので、喜んで引き受けた。

 公共財とは、①非競合性・・・ある人の消費によって別の人が消費できる量が減るわけではない、②非排除性・・・対価を支払わない人が消費する事を排除できない性質を持っているものをいう。街頭の灯などが、その例である。町内会で費用を出し合って、灯をつけたが、費用を出さなかった人が、利用しても、別に減るものではなく、費用を払わなかった人に、灯の利用を排除することも難しい。

 そこから、他人にただ乗り(フリーライダー)の問題が出てくる。費用を負担せずに、黙って利用しようとする人が出てくるからである。自治会・町内会などの地域活動も公共財の一種といえる。自治会・町内会は、地域の安全や福祉など、さまざまなサービスを提供しているが、その負担を役員や一部の人にやってもらって、自分は何もせずに、その恩恵だけを受けようとする人がいるからである。

 この地域活動とフリーライダーを論じた論文は、ほとんどなく、興味深いテーマである。

 査読に当たって、あらためてオルソン(Olson 集合行為論)を読み直している。オルソンは、一人だけ何もせずに、サボるのは、ある意味、理に適った合理的選択だという。なぜならば、みんながやってくれて、自分は何もせず、利益だけ得られるならばラッキーだからである。このオルソン自身も、この問いかけに対する答えを出しているが、さらに補強し、より実効性のある対応策を提示するのが、政策論を学ぶ者の仕事になる。

 最近では、もう少し質の悪いフリーライダーもいる。公共サービスを批判しながら、実はそのサービスを享受する人たちである。普通のフリーライダーは、ただ乗りをしている自覚があるので、こそこそするが、こちらは、自らが正義だと信じているので、自分がフリーライダーであることも忘れてしまっている。批判だけでなく、自分もまちのために活動したらどうですか、と突っ込みを入れるが、うまく理解できないようだ。

 ここまでの問題を深めると、いい論文がかけそうであるが、とりあえず、査読日限には、きちんと返さなければいけない(査読期間はいつも短い)。オルソンが提起した問題(オルソン問題という)を考えながら、忙しくも、ちょっと楽しい年の暮れになりそうだ。

 

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